「自分に向いてる仕事」の探し方(寄稿:もぐもぐ) | マイナビバイトTIMES

過去のアルバイト経験は、現在の「私」にどのような影響を与えているだろうか? 今、社会人として活躍されている方に、過去のアルバイト時代を振り返っていただき、現在とのつながりをつづってもらう本企画。今回ご執筆いただいたのは、記者として働く傍ら、ライブ鑑賞や観劇など多彩な趣味を持ち、Twitterやブログで発信を続けるもぐもぐさん。現在、20代後半のもぐもぐさんは、学生時代にどのようなアルバイトをされていたのでしょうか。

今の仕事が好きだ。自分で言うのもなんだけど、結構向いていると思う。得意かどうかはともかく、常に新しくやりたいことがあるし、常に悔しいし、飽きない。自分はラッキーだな、という思いと共に、学生時代にいろんなアルバイトをしたのは、この選択にたどり着く上で大きかったと今振り返ると思う。


1.“一瞬一瞬に意味を持たせる”ことを学んだ、デパ地下バイト

大学2年ごろに始めて、わりと長く続いたアルバイトの一つ、デパ地下のお菓子屋さん。ここでバイトした理由は、デパ地下が好きだから。お客さんとしてよく行く場所を内側から見てみたいと思ってバイトを始めた。

始める前は、「自分には接客業は向いてなさそう」という先入観もあってそんなに続かない気がしていたけど、案外そんなことなかった。単純作業のようで思ったより工夫のしがいがあって面白い。やってみて初めて知ったこと、学ぶことがたくさんあった。

仕事帰りのサラリーマン、休日午前中にきれいな服を着たお姉さん、スーツケースを引いた学生。それぞれにここにやってきた背景があることを想像する。家族へのお土産だったら、見栄えがするきれいなケーキ。友達の家に持っていくお茶菓子だったら、個包装で日持ちがするもの。帰省のお供なら、地域や期間限定のもの。数分の中で話を聞いて提案するのは、ほぼコンサルテーションだ。

その人の今のニーズを見極めて、よさそうなものをおすすめして、ものを買ってくれると素直にうれしい。目の前の人がお金を出してものを買ってくれるのは原始的な喜びがある。まぁ、本当はそこまでしなくてもいいのかもしれないけど、決められた売り文句を機械的に放つより、一瞬一瞬に意味をもたせる方が労働は楽しい。多分どんな仕事でも同じだ。

カウンターの内側にいて分かったんだけど、対面販売でうまく買い物するコツは上手に相談することだ。「週末友人が家に来るのでお菓子買いに来たんです」とか「夕ご飯のあとにちょっと甘いものをつまみたくて」とか、状況や用途を教えてくれるとすすめやすい。店員は思ったより嘘がつけない(これは本当)ので、せっかくお金を払ってくださるならちゃんとおいしいものを食べて満足してほしい。「自分だったら何を買うかな?」を想像しやすい条件をもらえると考えがいがある。

デパ地下でバイトしたことで、副次的に服屋で話しかけられるのが怖くなくなった。予想外の効果。店員さんのことを「なんかプレッシャーを与えてくる人」じゃなくて、「欲しいものを一緒に探してくれる人」として捉えられるようになった。

「とりあえず1シーズンがんがん着倒せるトップスを探してる」「今年はやってるこの形のスカートに興味があるんですけど、どんなのと合わせるといいんですかね?」なんて質問すると、ほとんどの場合は複数提案してくれて勉強になる。すでに持っている服の中でも特に出番の多いものを着ていって、「これに合わせやすいのが欲しいです」もよくやる。“服屋で話しかけられるの苦手問題”はよく話題になるし、気持ちはとても分かるけど、うまく使うと強い味方だよ!とも思う。

最終的に買わなくてもいいんです。買ってくれたらうれしいけど買わなくても特別嫌な気持ちにならない、というのも実際接客する側になって知ったこと。それは客としてふるまうときにも役に立っている。

「なんか違うのでごめんなさい」「やっぱりいいです」にことさら罪悪感を感じることはない。当たり前だけど、店員から見たら買わないお客さんはあなた以外にもたくさんいるのだ。今日は縁がなくても、また今度、違うときに思い出してくれますように。それで終わり。

今の仕事に直接つながる何かがあったわけじゃないけど、消費者として買い物はほぼ毎日するわけだ。レジの向こう側に立ったことは社会の成り立ちを知って、想像力を広げる上ですごくよかったなって思う。


2.直談判から始めたアルバイトが過剰な期待を消してくれた

もうひとつ、印象に残っているのはWeb系のコンサルティング企業のアルバイトだ。こちらはデパ地下とは全然違って、オフィスで1日パソコンに向かう仕事。

きっかけは1冊の本だった。社長が書いたWeb業界の動向的な本がすごく面白くて、興奮して、どんな仕事なのかのぞいてみたいと思った。でも、Webサイトを見てもアルバイトの募集はしていなかった。残念。

でもまぁせっかくだからダメ元で……と本の感想と共に「もしチャンスがあれば働きたいのですが」と代表アドレスにメールした。そうしたら予想外に好意的なお返事が来て、とんとん拍子でバイトさせてもらえることになった。

教訓、とりあえず聞いてみるが吉。社会人になってから分かったけど、求人情報を出すのも手間はかかるので、「わざわざ募集はしてないけど来てくれるなら欲しい」というパターンはそれなりにある。

本の中では国内外の業界動向が紹介されていたのだけど、まぁそういう最新事例に直接関わる仕事を大学生にやらせるわけはない。実際私がお手伝いしたのはほぼWebサイト制作の現場で、誤解を恐れずに言うと地味だった。上司の手書きのラフをパワーポイントの資料に起こしたり、指定された通りサイトの挙動のスクリーンショットを撮りまくったり。なんというか、「なるほど~、仕事ってこういうもんなのか」と思った。外から見た印象や最終的な成果物は華やかでも、それを支える過程って案外地味で泥臭い作業の積み重ねなんだな!

バイトの私に振られる似たような作業の中でも、要素分解すると得意なものや好きなものと、そうでないものがあった。資料の束を読んで必要そうなところを抜粋したり、ある挙動を説明する取扱説明書のような文章を書いたりするのは飽きずに楽しかった。そうか、私が興味があるのはインターネットの中でもこの部分かもしれないな? 次のアルバイトは文章に関わる会社にしたし、その判断は更に就職活動につながった。

思い返すとめちゃくちゃ楽しかった思い出があるわけではないんだけど、いい意味で働くことへの変な憧れや過剰な期待が消えたのがとてもよかった。楽しいだけの仕事はない。いつもキラキラしてるように見える人にも、立ち止まったり、迷ったり、鬼の形相で悩んでいる時間がある。結局、地味な時間をどれだけ愛せるかなのだ。ゴールの瞬間でなく、そこまでの長い道中にどんな自分でいられるか。


3.天職という正解は降ってこない

一度就職してしまうと転職はそこそこ大変なので、いろんな仕事をつまみ食いできるアルバイトって貴重なチャンスだったと思う。結局、仕事の向き不向きって、相対評価だ。どこからともなく「あなたの天職はこれです」と正解が降ってくるわけじゃない。

得意なことも苦手なことも、やってみて初めて気づく。そうやって自分の身体で、「自分はこれを人より面白く思えるみたいだ」「こういうタイプの作業は楽しくできるみたいだ」と比較対象を増やしていくしかないんだと思う。だから、失敗しても大丈夫。「こりゃ向いてなかったな」だって大事なデータだ。

楽しかったな、バイト。いろいろやったなぁ。学生の本分が学業であるのはもちろんだけど、興味の赴くままにつまみ食いしてみてよかった。確実に世界が広がったし、自分でも知らない自分のことを知れた。今もし学生時代に戻ったら、私は何を選ぶだろう?


執筆者 プロフィール

著者:もぐもぐ
平成元年生まれ、インターネット育ち。アイドル、2.5次元舞台、エンタメ全般が大好き。だいたい毎日幸せです。平成元年生まれのオタク女4人組「劇団雌猫」で同人誌「悪友」シリーズを刊行。同人誌を元にした書籍『浪費図鑑』『シン・浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)が発売中。
ブログ:インターネットもぐもぐ
Twitter:@mgmgnet

公開日:2018年10月26日

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