アルバイトやパートで働く時、「『年収の壁』を意識したほうがいい」と聞いたことありませんか?でも、「どの金額で何が変わるのか」は意外と分かりにくいもの。ここでは、106万・130万・150万といった金額ごとに、何が変わるのかを一覧で整理。手取りや働き方にどう影響するのか、そのポイントを分かりやすく解説します。
【2026年版】年収の壁一覧表

【弁護士・税理士からのアドバイス】
年収の壁とは、税金や社会保険の制度で「収入がある一定額を超えると負担や条件が大きく変わるライン」のことです。特にパートやアルバイト、配偶者の収入に関してよく使われます。
例えば、106万円や130万円といった金額は、社会保険料の負担が発生する基準であり、加入によって手取りが減る可能性があります。
そのため、シフトを調整して「壁を超えないように働く」ことを意識する人もいます。大切なのは、「どの制度でどの金額が壁になるのか」を正しく理解すること。
税金や社会保険はそれぞれルールが違うので、家族の状況や将来の働き方をふまえて、自分に合った年収の目安を考えることが重要です。
配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除などの適用要件も年収によって変動し、控除額が減少したり、受けられなくなったりすることがあります。
企業によっては、年収の壁を超えても手取りが減らないように助成金制度を設けている場合もあるため、勤務先の制度や自治体のサービス内容も確認しておくことが大切です。
7つの年収の壁について解説
アルバイトやパートで働く時、関わってくる代表的な「年収の壁」は7つあります。それぞれを超えると税金や社会保険のルールが変わるため、手取りや家計に影響します。大まかな内容を押さえておきましょう。
106万円の壁(社会保険上)
週20時間以上勤務、大企業(従業員51人以上)など一定条件を満たすと、年収106万円を超えた時点で、健康保険や厚生年金保険といった「社会保険」に加入する必要があります。
保険料の負担が生じることでことで手取り額が減り、手取り額の逆転(壁を越える前より手取りが減る)可能性があります。一方で、将来の年金や医療保障が手厚くなるメリットもあります。
なお、この課題に対応するため、後述の通り厚生労働省を中心に支援が用意されており、例えば、手取りが減少しないよう保険料負担や時給増等の取り組みをした企業への助成金が支給されるようになっています。
なお、2026年10月を目処に、これまで加入要件の一つだった「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件は撤廃される予定です。以降は、賃金額に関わらず「週の所定労働時間が20時間以上」であることが社会保険加入の主な判断基準となります。
関連記事:106万円の壁とは?年収の壁をわかりやすく解説【バイト用語集】
110万円の壁(税制上)
年収が110万円を超えると、「住民税」がかかり、優遇措置等の要件として住民税非課税を基準としている保育園、公営住宅の優先入所、医療費助成など自治体サービスの一部で負担や制限が発生する場合があります。
アルバイトやパートでも、ここを超えると「税金が引かれる」実感を持ちやすいラインでしょう。
関連記事:「110万円の壁」とは?年収の壁をわかりやすく解説【バイト用語集】
123万円の壁(税制上)
所得税法上の「扶養の範囲内の就労」を越えるライン。令和7年度の税制改正により、従来の「103万円の壁」が「123万円の壁」へと引き上げられました。年収123万円を超えると、親や配偶者の扶養控除が受けられなくなります。学生や主婦(夫)が「扶養内で働きたい」と考える時によく意識する金額です。
ただし、学生本人に所得税がかからないラインは2025年分は「160万円」、2026年分からは「178万円」までとなります。(勤労学生控除適用時)
参考:国税庁「勤労学生控除」
関連記事:123万円の壁は意味ない?手取りや社会保険に関わる影響を解説!
130万円の壁(社会保険上)
勤務先の規模にかかわらず、年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れるため、週の所定労働時間が20時間未満であれば「国民健康保険」「国民年金」に、20時間以上であれば勤務先の「健康保険」「厚生年金」に加入する必要があります。パートで働く主婦(夫)が最も意識する壁といえるでしょう。
関連記事:130万円の壁とは?年収の壁をわかりやすく解説【バイト用語集】
150万円の壁(税制上)
年収150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が減り始めます。ただし、一気になくなるわけではなく、徐々に控除が減っていく仕組みです。
なお、令和7年以降は「160万円」までは控除が満額受けられます。また、その一定額を超えても控除額が段階的に減少する仕組みとなっており、配偶者の収入が増えても世帯の手取りが逆転しないようになっています。
関連記事:【社労士監修】年収150万円の壁とは?社会保険や手取り・配偶者控除との関係を解説
160万円の壁/178万円の壁(税制上)
令和7年度の税制改正により、所得税の非課税ライン(いわゆる103万円の壁)は2025年分より「160万円」に引き上げられました。年収が160万円を超えると、世帯全体の所得税や住民税の負担が増える可能性があります。特に夫婦のどちらかが会社員で扶養控除を受けている場合、この壁を超えるかどうかで手取り額に差が出やすくなります。
また、2026年(令和8年)分からは「160万円」から「178万円」へとさらに拡大されることが予定されています。
参考:令和8年度税制改正の大綱
関連記事:160万円の壁とは?社会保険や住民税、学生や配偶者控除への影響を解説!
関連記事:178万円の壁をわかりやすく解説!いつから実施?手取りシミュレーションやメリット・デメリットも
201万円の壁(税制上)
年収201万円を超えると、配偶者特別控除の対象外となります。結果として、配偶者の税負担が大きくなります。
関連記事:201万の壁とは?年収の壁をわかりやすく解説【バイト用語集】
年収の壁に関するよくある勘違いと注意点
年収の壁という言葉を聞くと、「少しでも超えたら損をする」とのイメージを持つ方も多いかもしれません。ですが、実際には「働いた分が全部消える」といった単純な話ではありません。
制度によって負担が増えるポイントは違い、超えることで得られるメリットもあります。ここでは、アルバイトやパートが知っておきたい、よくある勘違いと注意点をご紹介します。
年収の壁を超えると全部無駄になるというのは誤解
「壁を超えたら働いた分がすべて消えてしまう」と思っていませんか?実際には、年収が壁を超えると税金や社会保険料の負担が増える仕組みになっているだけで、働いた分の収入がゼロになるわけではありません。
超えた分がそのまま収入に加わることは変わらないため、「全部無駄になる」という考え方は誤解です。年収の壁を越えても、収入が丸ごと失われることはありません。
増えるのは税金や社会保険料の負担部分であり、残りは確実に手取りとして残ります。「壁を超える=損をする」と考えて働き方を制限するのではなく、仕組みを理解したうえで判断することが大切です。
短期的な手取りと長期的なメリットを考える
目の前の手取り額だけを見ると、壁を超えないほうが得だと感じることがあります。しかし、社会保険に加入すると、将来の年金が増えたり、医療や失業時の保障が受けられたりするなど、長期的な安心につながるメリットがあります。
【弁護士・税理士からのアドバイス】
社会保険に加入することで、医療・年金・失業・労災など幅広いリスクに対して公的保障を受けられるようになります。更に、保険料の一部は事業主が負担する仕組みなので、個人で保険に加入するより有利な面もあります。
扶養家族も含めて保障が広がるため、「手取りが減る」という短期的な視点だけで判断するのはおすすめできません。
立場によって影響が違ってくる
年収の壁の影響は、人によって違います。例えば学生なら「特定扶養親族控除」、主婦(夫)なら「配偶者控除」や「社会保険の扶養認定」、副業をしている人なら「収入合算による課税」など、それぞれの立場ごとに注意すべきポイントがあります。
【弁護士・税理士からのアドバイス】
年収の壁は、税金や社会保険料の負担、扶養認定の可否、各種控除の有無などに関わります。
- 主婦(夫):配偶者控除や社会保険の扶養から外れる影響が大きい
- 学生:特定扶養親族としての控除の有無に影響
- 副業者:本業と副業の収入が合算され、壁を超えるケースがある
自分の立場を踏まえて、どの壁に注意すべきかを理解し、働き方を考えることが重要です。社会保険の代表的な壁である「130万円」を超えてしまった場合でも、必ずしもすぐに扶養から外れるとは限りません。
例えば人手不足を補うために一時的に収入が増えたケースなどでは、事業主が証明書を健康保険組合に提出することで、扶養にとどめることができる措置が認められる場合があります。
年収の壁は「一度超えたら終わり」ではなく、状況に応じた対応策もあることを覚えておくと安心です。
厚労省「年収の壁 支援強化パッケージ」とは
「年収の壁があるから、シフトを増やせない」「働きたいのに扶養から外れるのが不安」といった声に対応するために、厚生労働省は「年収の壁 支援強化パッケージ」といった取り組みを進めています。
これは、パートやアルバイトが働き損にならないようにするための支援策で、企業にも助成金制度を設け、安心して働ける環境を整えようとするものです。ここでは、その概要と仕組みについて解説します。
年収の壁 支援強化パッケージの背景とは
パートやアルバイトの方の中には、「年収の壁を超えると損をするのでは」と心配して、シフトを減らしたり、労働時間を調整したりする人が少なくありません。このように働き控えが広がると、人手不足に悩む企業にとって大きな問題となります。
そこで、国が安心して働き続けられるように制度面で支援する必要があると判断して打ち出したのが、「年収の壁 支援強化パッケージ」です。
年収の壁 支援強化パッケージの主な内容
支援強化パッケージの中心となるのがキャリアアップ助成金です。これは、社会保険に加入したパートやアルバイトに対して企業が保険料の負担を調整したり、収入増を後押ししたりする取り組みを行った場合に、企業へ助成金が支給される制度です。
これにより、働く人が「壁を超えると損をする」との不安を抱かずに、安心してシフトに入れるように支援しています。
最新の動きをチェックしておこう
年収の壁に関する制度は、税制改正や支援策の拡充など、今まさに見直しが進んでいるテーマです。今後は扶養控除や社会保険の基準に変更が予定されているため、働き方を考える際には最新情報を確認することがとても重要です。
ニュースや厚労省の発表をチェックしながら、自分の収入計画やシフト調整に役立てましょう。
監修者からのアドバイス
令和7年度の税制改正により、パートタイマーや配偶者の収入に関する「年収の壁」は大きく見直され、所得税・住民税の負担が始まるラインが引き上げられます。
今回の改正は、働き控えを減らし、手取り収入を維持できるようにすることを目的としているのです。
今後も段階的な制度変更が予定されているため、収入調整や、働き方を考える際には、必ず最新の基準を確認することが大切です。
控除の金額や社会保険の加入条件は制度改正の影響を受けやすいため、「以前はこうだった」との思い込みで判断せず、最新情報を踏まえて計画するようにしましょう。
監修者

鈴木・五嶋法律事務所 代表弁護士(第二東京弁護士会)、税理士(東京税理士会)
鈴木謙太(すずきけんた)
明治大学法科大学院修了。元最高裁判事 山浦善樹弁護士に師事し、約6年半の指導を受けて独立。労働問題委員会所属。「労働事件ハンドブック」共著。労働者の法律や税金の問題を中心に扱っている。













