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特殊バイト潜入調査FILE No.7 ローディーの仕事の実態に迫る!!

我々にMNB(マイナビバイト)編集部から
「世の中にある気になる仕事の実態を調査せよ」という極秘指令が発令された。

社会にある数多の職業の中で一風変わった職種の現場に潜入し、仕事内容を調べて報告すべしという特命である。むろん我々に拒否権はない。

今回の調査ターゲットは「ローディー」。
調査隊の読者からリクエストがあった職種だ!

ライヴ会場にて楽器のセッティングや音作り、アーティストのサポートなどを行う仕事である。

そこで今回は、東京都目黒区のとある会社に勤める社員を調査しにやって来た。

名前:上田亜矢子(うえだあやこ)
生年月日:1992年4月13日(25歳)
職歴:ローディー歴約5年
給与:月給13万円+ライヴ現場ごとの歩合(昇給あり)
備考:社長にパソコンスキルを買われ、楽器の写真を使ったオリジナルカレンダー作りを任されたこともあるそう。

ライヴの現場では朝から夜まで臨機応変にフル稼働!?

一通り調査をしたところで、休憩に入ろうとしているターゲットを追跡!そこで我々はローディーの実態をさらに究明すべく突撃取材を試みた!

ギターのチューニングに集中する上田さん。他にもベースやドラム、ピアノといった一通りの楽器を扱えるらしいが、上田さんは「何でも広く浅くというタイプだから、人に勝てるところがない」と謙遜する。


――突然すみません。MNB特命調査員です!今、ローディーのお仕事について調査しているんですが、少しお話よろしいでしょうか!?
上田「はい、私でよかったら何でもお答えしますが…」
――ありがとうございます!では早速…ローディーは主にどんな仕事をするんですか?
上田「ステージの上に楽器を組み、アーティストが理想とする音を作り出すのがローディーの仕事です。私がローディーとして、現場となるライヴ会場に行くのはライヴが開催される土日が多いですね。また、うちの会社は楽器や練習スタジオのレンタルもしているので、音楽フェスに自前のドラムセットを持ってこられないバンドに対して貸し出しをするなど、現地でイベントを仕切ることもあります。今日はたまたま現場の予定がなく、会社に出勤する日だったので、楽器のメンテナンスをしたり、機材倉庫の整理をしたり、新しく届いた機材はどんな音が鳴るのかを試したりしていました」
――では、ライヴの日のスケジュールをもうちょっと具体的に教えてください!
上田「早いときで朝の7~8時くらいから、機材を積んだ車を運転してライヴ会場に向かいます。トラックを運転することもあるので、ローディー志望ならマニュアル免許は絶対持っていた方が有利ですね。そのあと会場に着いたら機材を搬入して、セッティングして、チューニングして、実際に音を出してみて…。『今日の会場は床が鳴るからローを減らそうかな』みたいな感じで、いろいろと微調整するんです」
――なるほど…。失礼ながら音楽に携わるお仕事の割には、あまり華やかな業務内容ではないような…。
上田「基本はそうですね(笑)。でも、出演アーティストが会場入りしたら音をチェックしてもらいつつリハーサルをしますし、ライヴ本番中も、楽器の持ち替えやエフェクターの切り替えなどを手伝います。『何かケーブルが絡まった!』とか『マイクスタンドが倒れた!』とかハプニングが発生したら、ステージへ助けに行くこともありますね。で、ライヴが終わったら機材を撤収し、車に積み込んで帰るか、打ち上げに行くか…というのが1日の流れです」

機材倉庫にてケーブルを巻き取っている1コマ。機材のいくつかには、使用する日付やアーティスト名などをマジック書きしたガムテープが貼られている。上田さんいわく、ポケットの中にガムテープがたくさん入っているのが“ローディーあるある”なのだとか?(上田さん提供写真)


――ローディーはライヴの下準備をして終わりではなく、本番中に何が起こっても対応できるよう、終始ステージ袖でスタンバイしているということですか…。常に気を抜けないお仕事だと思いますが、ローディーのやりがいとは?
上田「ステージ袖にいると、アーティストが気持ちよさそうに演奏している姿や、お客さんが楽しそうにしている顔がよく見えるんですよ。ライヴ会場が1つになって盛り上がる瞬間の歓声を聞くと『あー、ヤバい!ここにいてよかった!』って、ゾワッとします。あとはやっぱり、いい音を作れたときですかね。私が『いい!』と思ってチューニングした音をアーティストや音響さんが褒めてくれたり、お客さんが『今日のスネアの音、かっこよかった!』などとSNSに書いてくれたり…。私の自己満足じゃなくて、みんなが思う“いい音”を突き詰めるのが腕の見せどころにもなってきます。私はまだペーペーなので難しいですが(笑)」

音楽を仕事にすることへの覚悟と向上心

上田さんが手早く操っているのはPA(音響)ミキサーだ。本来、ローディーの専門分野ではないようだが、上田さんはマルチな才能を発揮している。


――逆に、ローディーのお仕事でツラい部分には何が挙げられるのでしょうか?
上田「精神的な負担という部分で言うと、1回だけ国内最大級のライヴ会場で仕事をしたことがあるんですけど、お客さんが7万人くらい入っていたので、とてつもないプレッシャーを感じたことですかね。それと私の場合、働き始めて3年くらい経ってから一人で現場に行く機会も増えていったんですが、小さいライヴハウスにローディーが私一人だけだったりすると責任の重圧を感じますね。それだけじゃなく、重い機材を一人で積み下ろししなきゃならなかったりすると、体力的にもツラいです」
――でも、その分だけ上田さんには大きな信頼が寄せられてもいるんですよね。そもそも上田さんがローディーになったきっかけは?
上田「学生時代は軽音楽部でギターを弾いていたんですよ。その後、イベントスタッフ系の専門学校に進んだんですけど、課外研修で今の会社の社長に出会い、そのまま社長の現場を手伝うことになったんです。社長はローディーというよりも“楽器テクニシャン”と呼んだ方がしっくりくる人で、ただ楽器をセッティングして『はい、終わり!』ではなく、メンバーと『今日はこういう環境だからこんな音にしよう』と話し合う、職人気質な姿勢が見て取れました」
――元から音楽が好きで、社長さんの理念にも惹かれたんですね。音楽への愛は絶対条件だと思いますが、ローディーのお仕事に求められるものとは何ですか?
上田「やっぱり、音感やセンスがある方が有利だと思いますね。私は邦楽が好きだったので、洋楽や昔のヴィンテージロックは正直あんまり…だったんですけど、今は教養として聴くこともあります。『あのバンドのあのギターの音が好き!』みたいなことを話してくれるアーティストもいますからね。あと、ローディーは多くの関係者の方々と接する仕事ですし、コミュニケーション能力が必要です。人見知りしないとか、笑顔で話すとか、愛想よく返事するとか。『この人は嫌だな』という第一印象は与えない方がいいですからね」
――コミュニケーション能力については、他の職種にも当てはまりそうです!上田さんには、ローディーとして働く上でのポリシーをお持ちですか?
上田「“アーティストを不安にさせないこと”ですかね。私も仕事中は『本当にこの音や機材でいいのか?』とか『トラブルがあったらどうしよう』とか不安でいっぱいなんですけど、それがアーティストに伝わってしまったら、安心して演奏することができなくなってしまいます。だから『大丈夫!』って見栄を張るというか、まわりにも自分にも言い聞かせている感じです」
――上田さんの、今後の目標は?
上田「今はまだ人に仕事を振られてばかりなので、自分がメインで仕切れる現場を増やし、そのアーティストと一緒にステップアップしていきたいです。言うなれば、日本武道館さえも通過点(笑)。最近は若いアーティストが日本武道館でライヴをすると『すごーい!』って評価されますが、そこで落ち着いてしまっているような気もするんですよ。でも、日本武道館を通過点とし、さらにその上を目指したっていい。日本武道館でライヴできるのは確かに立派ですけど、ちっちゃいライヴハウスで演奏できることだって嬉しかったはずですし、そういう気持ちのまま働いていきたいなと」
――まさに「初心忘れるべからず」ということでしょうか。では最後に、上田さんの座右の銘を聞かせてください!
上田「上司の受け売りですが、『やるかやらないかだったら、やる』。できるかどうかわからなかったとしても、とにかくやってみるんです。できなかったらできなかったで『またがんばろう』って仕切り直せますけど、やらなかったら何の成長にもつながりませんからね。誰だっていつかは死んでしまいますが、『私、音楽に関わった人生だったな』と、最後まで後悔のないようにしたいんです」
――さすが、熱いロックンロール精神を感じる一言です…!今日はどうもありがとうございました!

「ローディーという職種はなかなか長続きする人がいないし、女の子も少ない」と上田さんは漏らしていた。もしかすると、ミーハー気分で飛び込んでしまったがゆえに「こんなはずじゃなかった」と早々にあきらめてしまう人がほとんどなのかもしれない。
だが上田さんは、「働き始めのうちはお給料が高くないけれど、好きなことをしてお金がもらえて幸せ」だとも語ってくれた。他の人にはできない経験を積めるし、仕事で全国各地を訪れ、地方のおいしいグルメを味わうのも楽しいという。
音楽や楽器に触れるのが好きならば、それだけでローディーの素質があると言えるのではないだろうか。あとは、着実な努力によって道を切り拓こう。