
テレビや映画など関係なくこれからのエンターテイメント業界は、垣根がどんどんなくなっていくはず。
今後の作品作りについては?
昔と違って今は、テレビも映画も同じスタッフが作っていたりします。テレビ画面はどんどん大きくなっちゃったし、カメラは映画もドラマもフィルムじゃなくデジタルだし、その他、舞台や音楽業界もひっくるめて、垣根がなくなっているんです。だから、制作にはこだわるけれど、固定概念にとらわれないで、いろんな方向から取り組んでいかないと生き残ってはいけないと思っています。

小道具を扱う会社で
3年ぐらいバイトしました。
大学時代はどんなバイトをしていましたか?
もともと僕は理系なので、工場で扇風機の首にコードを入れるバイトとか、自動車のブレーキ部分になる鋳物の歪みチェックなんかのバイトをしましたが、どれも眠くなってサボっちゃって続かなくて(笑)。ブライダルのムービーカメラマンの仕事もしたけど、一番続いたのは、小道具のバイト。緑山スタジオに行って、大道具さんが作った大きなセットの中に、机、電話、小物なんかを飾りこむ仕事です。最初は倉庫から小道具を運ぶだけなんだけど、青図(図面)を見ながらどこにどれを置くかを覚えて一人でできるようになったり、そのうち役者さんがご飯を食べるシーンになると直接食事を渡したりして…色々経験させてもらいました。
イコールにはならないけれど、
現場の空気感を味わえたのは大きかった。
学生時代のアルバイト経験は、今の自分にどのような影響を与えていますか?
当時はバブル絶頂期だったのに1日¥5,000ぐらいしかもらえないうえ、体力的にもキツいバイトだったけど、その頃“テレビの裏側全部見せます”みたいな番組を見て、「裏方はかっこいい!」「自分の目で見てみたい」という強い気持ちがあったから、続けられましたね。当時はまさか自分がプロデューサーをやるなんて思っていなかったから、何かの影響を直接受けているとは思えないかも…。でも、少なからず作品を作る現場の空気を知っていたことは、大きかったのかなあと今では思います。

仕事がキツくて、
しょっちゅう怒られたこと。
アルバイトで辛かったことは?
ドラマって昼間に撮影するから、小道具は基本的に撮影をしていない夜中にセットするんです。慣れてくると、昼間の撮影中に小道具を出し入れする仕事も増えて、結局24時間体制で。それでセット裏で寝て、よく怒られてました。とくに当時チーフADだった人からは、ケーブルを台車でまたごうとしたら、「ケーブルを持ち上げて、ケーブルの下からくぐれ!」だとか、「そもそもお前寝てただろ!」とか、よく怒られてましたよ。今思えば、たかがバイトにもそんなに真剣に怒ってくれる方々がいたっていうのはなかなかいい環境だったなって思います。働く厳しさを体で知ることができました。わざわざイヤな思いをする必要はないと思うけど、体で体験しないとわからないことってたくさんある、イヤな思いを通して気づくこともあるんですよ。僕も今、現場で働いてもらっているバイトさんにビシっと怒ったほうがいいと本当は思ってるけど、最近はパワハラだとか言われちゃうから、なかなか気を遣っちゃいますよね(笑)。
とりあえず寝て、
気持ちを切り替えます。
失敗をした時や怒られた時の解決法は?
まず15分ぐらい寝て、現実逃避(笑)。そのあと、ひとつひとつに丁寧に向き合って、責任を持って対応します。そうすれば何らかの道が開けてくるものです。ミスってイヤだけど、でも自分ひとりで考えつくことには限界があって、いろんな人と壁に当たりながら試行錯誤していくうちに新しい発見があって、日々それの繰り返し。それが成長に繋がっているんだろうと思います。
どんなジャンルでもいいけど、長く続くものを見つけること。
もう一度アルバイトをするならどんなバイトをしますか?
長く続くってことは何らかの興味があるってことだし、向いているとかいないとか、やっていくうちに見えてくることもあります。昔は「石の上にも三年」って言ったもんで、なるべく長く続けて、その意義を感じた方がいい。一日¥5,000しかもらえなかったバイトでも、3年続けたことで僕はそれ以上の経験を得られたと思っています。続けることで何か発見があるはずです。