従業員への対応と配慮すべき事
採用コスト削減の為にも、従業員の定着に対する重要性や定着をしてもらう為の工夫や対策を紹介。
スタッフを1人を採用するだけでも、求人広告費や面接時の交通費・採用担当者の人件費など様々なコストがかかっています。採用コストを削減するためにもスタッフ一人ひとりに長く定着してもらうことは重要です。今回、千葉県松戸市を中心にガソリンスタンドを運営する株式会社湯浅にて、所長等現場での勤務経験を活かし、現場の課題に寄り添った採用活動を行なっている。採用担当者様へのインタビューを通して、スタッフ定着のための工夫についてご紹介します。
――お仕事内容について教えてください
石井氏「元はSS(サービスステーション)で所長を14年間していました。6年前に管理部へ転属となり、現在は総務で採用の仕事に携わるようになりました。採用チームは私を含めて2名で、新卒・中途・アルバイト採用や規定・研修等の全てを担当しています。」
――業務目標はありますか?
石井氏「採用ご担当者様:社内で掲げている目標は「SS(サービスステーション)部門の正社員を年間で10名純増させること」です。
退職者数が多い年はかなり厳しい数字になりますが、年間で5〜6名ほどアルバイトから正社員に登用した実績もあります。今後は高校の卒業後の就職先に考えてもらえるよう、学校訪問や説明会などに力を入れていく予定です。」
――定着に関して課題に感じていたことはありましたか?
石井氏「以前は店舗によって新人スタッフの受け入れ体制が異なっておりました。中には研修と言えるようなものがないまま先輩を見て覚えるというスタイルだったため、新人スタッフが仕事に慣れる前に挫折して辞めてしまったというケースもありました。
「店舗での業務が忙しくてなかなか教育に時間が取れていない」「入社3ヶ月以内に辞めてしまう人が6割程度」という状況もあり、教育に力を入れていかなければならないと感じました。」
――課題解決のためにどのような行動を取りましたか?
石井氏「大きく分けると以下の3つになります。
現場では、新人スタッフにOJTで教えていましたが、内容が抽象的になってしまっているのかなと感じました。また、若年層のスタッフからは特に「何をやればいいのかわからない」「どうしてこの仕事をするのかがわからない」と言われることが多いため、仕事の目的やお願いする仕事がなぜ必要なのかという理由付けが必要だと感じました。
そこで研修で「この仕事をお願いする理由」を伝えたり、マイナビバイト側からの提案で漫画形式のマニュアルを作成し、店舗へ利用を促したりなどしています。あくまでマニュアルはツールの1つで、私の方では研修やオンラインミーティングも始めました。」
――研修やオンラインミーティングはどのように行っているのですか?
石井氏「月に1回、新規で入社したスタッフ向けの研修を行っています。「やれ」と言っても意味がわからないと人は出来ないと思うのですが、意味を理解すると人は動けるのではないかと思います。なのでこの研修では業務内容を伝えるのではなく、働く側の目的や評価について理由付けをするようにしています。
具体的には、「当社で働く意味」や「何の為にお客様に声をかけ、その結果どうなるのか」という話、当社で働くメリット・デメリットを伝えています。またアルバイトにもインセンティブがあるので、入社のタイミングで具体的に話をしています。
やる意味や頑張った先に結果として何があるのかを説明をすることで、スタッフのモチベーションが変わったように感じています。また、所長ではない第三者の私からアドバイス等をすることで、悩みを相談できる環境を作れたことも大きいと思っています。
また、20〜25歳の社員には「若手勉強会」を毎月行っています。主に対話力、聞く力、コミュニケーション力を身に付けることを目的としています。特に店舗は縦割り社会なので、横のつながりを持ってほしいと思っています。今後は26〜30歳の社員に対しても「中堅勉強会」を行う予定です。
他店舗とのオンラインミーティングは店舗が主導で月に1回行っています。店舗の中での閉塞的な環境ではどうしても縦割り社会になりがちなので、別店舗のスタッフ間で横のつながりを持てるようにするとともに、他店舗からの刺激を受けられるようにしています。
他にも、現在はマニュアルの第2弾を考えております。より具体的なトークスクリプトを現場で作成中です。お客様への声掛けマニュアルがあればロールプレイング形式で練習ができますし、商品のことをしっかりと提案してお客様から信頼されるようになり、納得されるお客様は購入に至ると思っています。」
――取り組みを行った結果どう変わりましたか?
石井氏「今まで店舗内で留まっていた情報が会社で共有されるようになるとともに、連絡先を交換するようになるなど、若手社員間で仲間意識が生まれました。また、「自分はこうなりたい」と考えるきっかけが生まれて、モチベーションの向上に繋がっています。 」
――今後の採用計画について教えてください。
石井氏「この業界は中途で入社される方が9割です。現在社員の平均年齢は約38歳ですが、10年後を見据えてより一層、新卒・若手社員を採用していく必要があると思っています。
これから会社全体で新卒を入れていく仕組みの構築・ルーティン化をしていくために、まずは社内の意識改革からスタートする予定です。そして10年後どのようになっていくのかを考えて行動し、中途採用と並行して新卒採用活動もしていく。2〜3年後の採用も見据えて、学校訪問も行っていきます。」
インタビューにお答えいただいた株式会社湯浅様では、仕事の意味を伝えることや横のつながりを持たせることが必要だと考え、研修やオンラインミーティングなど、新たな施策を取り入れ続けていました。
定着率を上げるために、下記のポイントをおさえておきましょう。
・マニュアルを作成し、新人スタッフの業務理解を促進
・スタッフ間での交流機会を設ける など
特に漫画形式やロールプレイングができるマニュアルを作成すると、未経験の新人スタッフは業務内容をイメージしやすくなります。また、店舗内の縦のつながりだけでなく「横のつながり」が持てる機会を設けることでスタッフ間で仲間意識が生まれるとともに、モチベーション向上に繋がります。
・研修内容を全社で統一し、新人教育の質を一定に
・入社年次や年代など、段階を踏まえた研修を実施する など
店舗ごとで研修を行う場合、内容にばらつきが生じやすくなるとともに店舗業務との兼ね合いで十分な教育が行えないこともあります。内容を統一し、教育の質が一定になるような研修を行うようにしましょう。また、スキルアップを目的とする研修はスタッフのモチベーション向上と定着に繋がります。
上記のように「新人スタッフがついていけない状況にしない」「モチベーションを与える」ことが、スタッフの離職防止と定着において大切です。スタッフの定着にお悩みの企業様は、今回ご紹介した事例をぜひ参考にして頂ければと思います。