マンガアプリの編集長
仕事で大切にしている「想像力」の育て方
株式会社講談社助宗 佑美
人気マンガや書籍、雑誌を刊行し、コンテンツの配信アプリなども展開している講談社は、出版業界を目指す学生にとって憧れの企業のひとつ。実際に働いている「社員」は、どんな人で、どんな仕事をしているのでしょうか?
今回は、大ヒットマンガ「東京タラレバ娘」などを手がけた後、女子向けマンガアプリ「Palcy(パルシィ)」の編集長となった助宗佑美さんにインタビュー。1児の母であり、家族との時間も大事にしながら仕事を楽しむ助宗さんに密着取材し、仕事の面白さからワーキングママとしてのライフスタイル、学生時代のアルバイト経験や就活スタンスまで明らかにしていきます!
Schedule1日の流れ
「妻は仕事に集中し、夫が家事・育児を中心に担当」。そんな新しい夫婦のスタイルを実践する助宗さんの1日はこんな感じ!
家族3人での朝食から始まり、夫と談話後、カフェで仕事に役立つ勉強をしてから出社。退社後は子どもとアニメを観たり、読書や趣味仲間とSNSでの交流を楽しんだりするそう。
Interview朝起きてからどんなことをしてるの?
〜ワークライフバランス、意外とイイかも!〜
- 編集部
- 出版社の編集さんって、夜が遅いイメージがありますが、朝は何時に起きるんですか?
- 助宗
-
7時です。夜が遅い日もあるので、必ず家族3人そろって朝食を食べ、息子が学校に向かうまでは一緒に過ごしています。
朝は家事も分担してやりますが、うちは「妻が稼ぎ、夫が家事・育児を中心に担当する」という家庭なんです。
- 編集部
- そうなんですね! 新しいスタイルでとても素敵です!
- 助宗
-
子どもができた時、仕事は絶対続けたいと思っていたら、夫から「専業主夫になる」という提案があったんです。
それぞれの働くことへの思いや、収入面や働き方の自由度も考えた結果、このスタイルになりました(笑)。
夫も今は時間が自由に使える働き方をしているので、基本、家のことは任せてます。
助宗佑美(すけむね・ゆみ)。1983年生まれ。明治学院大学芸術学科卒。2006年入社。少女マンガの編集者として、『東京タラレバ娘』『海月姫』(東村アキコ作)をはじめとする数々の人気作品を担当。「Kiss」編集部を経て、2019年より、マンガアプリ「Palcy」編集長に就任。
- 編集部
- 出版社ってハードワークそうですが、家事と育児の両立はできていますか?
- 助宗
-
今、私の編集部では、社員の半分以上は子育て中なんですよ。
新型コロナウィルスにもすぐ対応してテレワーク化しました。私も最近は19時くらいに退社するように意識してますね。
テレワーク中、勉強する小学2年生の息子さんと一緒に仕事をする助宗さん。
- 編集部
- ええっ、19時に退社!?昔からですか?
- 助宗
-
この仕事って、やろうと思えばいくらでもやることが出てきちゃうから、24時間働き続けることにもなりかねない(笑)。
昔は納得するまで目一杯働いていましたが、今は部員たちのためにも、「編集長の助宗さんが帰らないから、帰れない」という環境にはできないなと。
だから、「今日はこれだけのことを、ここまでにやる。そしたらOK」という目標を設定して、終わるようにやっていくんです。
- 編集部
- 実際、19時までに終わるものですか?
- 助宗
-
だいたい終わりますね。効率を考えてスピードを上げていくよう意識しています。
メリハリをつけてやることで、精神的にも体力的にも続けていくことができると思うんですよね。
子どもを産んだ後、自分のためだけに時間を100%使えなくなったことに気付き、効率を上げるよう意識した結果、「あれ?できるや〜ん!」と(笑)。
- 編集部
- 「できるや〜ん」で、できちゃうものなんですか(笑)。
- 助宗
- 環境に適応しようとするとできちゃうんです。テレワークも出版業界では難しいと思っていましたが、コロナによって環境が変化したことで、無駄な業務や手順に気付くことができました。その日にやることに対し、優先順位をつけることが上手になりましたね。
助宗さん、満面の笑顔で「できるや〜ん!」ポーズ(笑)。
- 編集部
- 出版業界を目指したい学生にとっては、まさに朗報です!
- 助宗
-
ワークライフバランスに不安を持つ学生さんは多いですよね。
う〜ん。そもそも、編集者の仕事って、「この時間に出社して、この時間まで働け」っていうものとは違うんですよね。
入社直後、「そんな早く出社しなくていいから、映画でも観てきたら?」と先輩に言われて私も驚いたんですけど(笑)。
- 編集部
-
そんなことが許されるんですか!一体、ナゼ!?
- 助宗
-
出版業界って、自分がどういう価値観を持っていて、どんな知識があるかという「中身」の部分がすごく大事なんです。
そういうものを持ち続けていないと、作家さんから作品について投げかけられても、何も返すことができなくなっちゃう。
物語をつくるためには、新しいアイデアのストックが常に必要だし、その時代の流行を知ることも大事。だから、映画を観たり美術館に行ったりすることも大事なんです。
- 編集部
- なるほど〜! コンテンツの中身をつくるためには、自分の中身が大事なんですね。
- 助宗
-
出版業界には、「中身をつくる時間が大切」という価値観があるからこそ、個々の時間の過ごし方を尊重するところもあると思うんですよね。
自分の仕事を効率的にしっかりとやっていれば、「私は家族との時間を大事にすることで自分の中身をつくっている」とか、「夜は趣味の活動に使うことが大事なんです」とかいうのもOK。そういう姿勢を批判するような人はいないと思っています。
- 編集部
- 講談社に限らず、出版業界全体がそうなんでしょうか?
- 助宗
-
もしハードワークを強いる環境があるなら、仕事の総量が間違っていると思います。
「私は趣味の時間を大切にしたいから帰りたい」じゃなくて、「この仕事量に対して、人手が足りないから残業しなければならない。改善してほしい。」という提案をすれば、修正されていくと思います。今は出版業界にも子育てをしている人が多いし、ワークもライフも大事にする世代が編集長になっていますからね。
「夫は自分と全く趣味が合わないし、性格も違う。
自分と違う反応をしたり、理解できなかったりすることが興味深くて結婚した」と助宗さん。
- 編集部
- 家族と一緒に朝食をとった後は、何をしているんですか?
- 助宗
- 息子を小学校に送り出したら、夫と二人でゆっくりお茶するか、カフェで「朝勉」をしますね。
「甘いものをたべてファイトを出している」という助宗さん。
左は甘味処のあんみつ、右はファミレスのホットケーキ。
- 編集部
- 朝勉? 出社前に勉強しているってことですか?
- 助宗
-
会社に行くと仕事に追われちゃうから、自分のために勉強する時間をつくっています。
私はマンガアプリの編集長を務めているので、マーケティングの記事を読んだり、人気アプリをチェックしたりして、「こうしたらいいかも」という考えをノートにまとめています。あと、英語の勉強もしてますよ。
- 編集部
- それも自分の中にアイデアをストックしてるってことなんですね!
- 助宗
- そうなんです。私、メモ魔なんで、すぐメモするんですよ。思いついたことも、考えたことも、やるべきことも、全部メモ! なので、ノート3冊と手帳は常に持ち歩いています。
助宗さんの3つのメモアイテムを大公開〜!学んだことや考えたことをまとめる「朝勉ノート」、仕事のアイデアをまとめる「業務ノート」、作家さんに関するメモをまとめた「作家ノート」、その日にやるべきことを書き込む「手帳」だそう
びっしり書き込んであるメモに驚愕・・・!
編集者さんの頭の中をのぞいてみたら、きっとこんな感じなのかも?
10:00
業務スタート!〜編集長の仕事って、どんなことをするの?〜
- 編集部
- 編集長の仕事って、何をやるのか想像がつかないです。
- 助宗
-
ものすごいたくさんありますよ〜(笑)。
私が担当しているのはマンガアプリ「Palcy」なので、出社後にまず、閲覧数やダウンロード数、ユーザー動向などのデータをチェックします。
それを参考に、ユーザー獲得の方法や、アプリの機能の改善、作品を販売するための広告戦略なども考えていきます。
- 編集部
-
データに機能に広告戦略…?
何だか難しそう(汗)。
編集長って、編集者とはやることが違うんですか?
- 助宗
-
違いますね。
編集だけやっていた時代は、自分の感覚や感性をもとに、作家さんと一緒に「これが面白いよね!」を実現していくことがすごく楽しかった!
自分と同世代の女性が読むマンガ雑誌の編集をしていたので、感性のままに作品に関わることができたし、それがヒットした時には大きな達成感がありました。
- 編集部
-
助宗さんは、ドラマ化もされた大ヒット作品、『東京タラレバ娘』の担当でしたよね。
私、大好きでした!
- 助宗
-
それは嬉しいですね。
ですが、編集長になると、ひとつの作品だけではなく、いくつもの作品が集まって成り立つメディア、つまり、担当する雑誌や私の場合はアプリ全体のことを考える必要があります。
Palcyは幅広い女性読者に向けたアプリなので、小学生の女の子からおばあちゃん世代まで対象になるんですよ。
- 編集部
- めちゃくちゃ幅広い!どんな作品を載せているんですか?
- 助宗
-
新しい作品も載せていますが、『なかよし』から『BE・LOVE』まで、女性コミックの全ての編集部から過去の作品を集めて載せてもいます。
私、もともとマンガ好きでしたけど、編集長になってから講談社のマンガを読みまくってます(笑)。
- 編集部
- ところで、Palcyに載せる作品はどうやって選ぶんですか?
- 助宗
-
アプリを利用する人たちのデータを見て、「どんなものを求めているのか」を考えます。
ただ求められているものだけじゃなく、まだ出会えていない面白いものや、人生や恋愛など、いろんなことに対してためになるものを提案したくて。
だから、テーマを持ってマンガを紹介する企画ページもつくっています。
- 編集部
- どんな企画があるんですか?
- 助宗
-
例えば、「家族って何だろう?」という企画ページでは、両親とうまくいっていない女子学生が主人公の作品や、子育てや夫との関係に悩むお母さんが主人公の作品などを集めています。
みんな人生の中でいろんな悩みを抱えているものですが、マンガを読むことで、「こういう考え方もあるのか」と思ったりしますよね。
- 編集部
- たしかに!それで気持ちが救われたりすることもありますもんね。
- 助宗
-
私自身、マンガからいろんな価値観や考え方を教えてもらったと思うし、それがマンガの素晴らしいところだと思うんです。
人気のものを読んでもらうことも大切ですが、講談社が掲げている「面白くてためになる」という、そんなマンガと出会える機会を提供していきたいんですよ!
- 編集部
- 企画のテーマは、どうやって考えるんですか?
- 助宗
- データだけじゃなく、コメントもチェックして、「どんな人たちが、どんな気持ちでPalcyを利用しているのかな」と想像します(笑)。
- 編集部
- そ、想像…ですか!?
- 助宗
-
はい(笑)。コメントで好きな作家さんへの思いを伝えたい方もいれば、世の中への愚痴を言いたいという方もいます。
どんな状況の中、どんな感情でPalcyを読んでくれているのかを想像するんですよ。
「地方の女子高生は、通学で電車に乗る時間が長いから読んでいるのかな」とか、「40代は子育てが大変で、自分の時間があまりなくて大変なのかな」とか。
Palcyに掲載されている作品、『シェアファミ!』。
シングルファーザー3人がシェア生活をしながら子育てをしていく物語で、それぞれの事情や思いが描かれている。子育て世代に超オススメのマンガだそう
- 編集部
- あらゆる世代の女性にとって、どんなマンガが必要なのかを考えるってことですか?
- 助宗
-
想像の中で、みんなの気持ちをギューって抱きしめて、「きっと心の中では、こんな作品を求めてるよね」という感じでしょうか(笑)。
編集者時代のやりがいは、作品づくりでしたが、今はユーザー像を考えた上で、マンガの楽しみ方を提案することが面白いです。
時代の感覚をキャッチしながら、Palcyを通じて新作から旧作までオススメし、「わかる!」「こういう感覚、いいよね」という空気をつくっていけたらと思っています。
ここがポイント
「毎日、20件くらいのタスクが同時に進行している」という助宗さん。
自分の作業だけじゃなく、社内外の人たちとの打ち合わせもたくさん!
例えば、Palcyのアプリを一緒につくっている開発会社のエンジニアさんとの打ち合わせでは、アプリ機能の改善や作品をどう配置するかも考えているのだそう。
その他にも、社内の営業部署やアプリ配信部署とアプリの戦略や配信設定について会議したり、Palcyで新作を描いている作家さんとの打ち合わせをしたり…。
アプリを快適に楽しんでもらう細かい仕組みづくりも、編集長の仕事なんですね!
12時30分
ランチタイム〜誰と何を食べてるの?〜
- 編集部
- ランチって、いつもどこで誰と食べてるんですか?
- 助宗
-
基本的には、社食で食べてますね。
ひとりの時もあれば、部員と一緒に食べることもあります。
時間も特に決まっていないです。
- 編集部
- 講談社って、社食もあるんですか!
- 助宗
-
カレーやうどんもありますし、A定食、B定食があって、毎日おかずの内容が違うんで、好きなものを選んでいます。
400円〜500円くらいで食べられるし、白米だけじゃなく、玄米も選べるから糖質制限もできてイイです!
これが講談社の定食!栄養バランスも良さそうで羨ましい!
13時30分
再び業務スタート! 〜編集部の部員から見た助宗さんってどんな人?〜
- 編集部
- ところで、作家さんと関わる仕事については、どんなことをするんですか?
- 助宗
-
編集部の部員それぞれが作家さんを担当しているので、私は作品のネーム(コマ割りや台詞などのストーリー原案)や原稿を確認して、作品づくりについてのアドバイスをしています。
担当編集から作家さんの考え方も聞きつつ、登場人物やテーマなど、いろんな部分に対するフィードバックをしています。
あ、今から部員と打ち合わせに入りますね!
- 部員
- 次回の◯◯先生の原稿なんですけど、どうですか?
- 助宗
-
うん、見せて見せて。おお〜、いいね!
このキャラ、すごい魅力的だよね。次回はどう展開していくの?
- 部員
-
◯◯先生は、新しいライバルを登場させる展開を考えてるそうです。
そこにどういう要素を入れていくかを私も今、考えてる最中で…。
- 編集部
-
わー、生の原稿、初めて見ました!感激です!・・・
ん?お腹が大きいですけど、もしかして妊婦さんですか?
- 部員
- はい。数カ月後には産休に入る予定です。
- 編集部
-
おめでとうございます!
出産後も仕事を続けていく予定ですか?
- 部員
-
その予定です。
編集長も他の部員も子育てしているので、不安は全くないです。
- 助宗
-
うちの編集部は小さい子どもがいる部員も多いし、テレワークするか出社するかもそれぞれに任せているんです。
今日も部員の半分くらいは自宅で働いています。
原稿を入稿する最終校了も、自宅でできる体制をつくりましたよ!
出勤している人、半分以下なんですね。
たしかに、少ない!!
ここがポイント
Palcy編集部には、9名の編集部員が在籍し、各自が連載作家や新人作家の担当をしているそう。
「マンガ作品は、作家と編集のタッグが大事」とのことで、助宗さんは編集長として作品について要所要所でアドバイスを行っています。
とはいえ、若手部員や新人作家の場合には、自ら打ち合わせに同席し、作品づくりを進めていくための道筋を一緒につくっていくことも。
ちなみに、入社から現在までに作品づくりへのアドバイスをした作家さんは、なんと150名!すごすぎる・・・!!
16:00
ネームチェック 〜助宗さんが考える「編集者に向いている人」って?〜
- 編集部
- 助宗さん、ものすごい勢いで赤ペンを走らせていますけど、それってもしかして、「ネーム」ってやつですか?
- 助宗
-
そうですよ〜。作家さんが送ってくれたネームのコピーに、「ここをこうしたら、もっと面白くなる」と思うポイントを書き込んでいます。
これをベースに担当編集に伝え、作家さんとやりとりしてもらいます。
- 編集部
- 助宗さんが出版業界を目指そうと思ったきっかけは?
- 助宗
-
本やマンガが好きだったから、好きな分野に携われたらいいな、と。
小学生の頃には『なかよし』を愛読していましたし、学生時代もマンガを読むことで恋愛観から人生観まで、いろんなことを学べました。実生活では知ることのできない価値観を少女マンガが教えてくれたので、私もそういうものを提供できたらいいなあ、と思ったんですよ。
- 編集部
-
でも、出版業界ってものすごい競争率ですよね。
就活の時、どんな準備をしたんですか?
- 助宗
-
正直、めちゃくちゃボヤッとしていて何もしてなかったですよ。
当時はwebエントリーではなく、出版社までエントリーシートを取りに行かなきゃならなかったんですけど、いつの間にか配り終わった出版社もあったくらい(笑)。
- 編集部
- 面接担当者さんが、助宗さんのものすごい資質を感じ取ったのかも?
- 助宗
-
いえいえ、グループ面接でも、他の学生の話を「すごいな〜」と思ってメモ取ってましたもん(笑)。
で、入社後に上司から「道を聞きやすそうだったから採用した」と言われて、「何言ってんだ、この人」と(笑)。
- 編集部
- 「道を聞きやすそう」って…??
- 助宗
-
相手の話をちゃんと聞けそう、ってことでしたね。今となればわかりますが、編集者って、「作家の個性を生かすこと」と「読者に必要なものは何かを想像すること」がすごく大事なんですよ。
自分がどうしたいかより、相手がどうしたいか、世の中にどんなものがあるかを知ろうとする姿勢が重要です。
- 編集部
- 助宗さんが「編集に向いている」と思うタイプは?
- 助宗
-
今の時代、「SNSで自己主張することが得意」という人は多いですが、「他人の話を聞いて、それを受け止めた上で、自分の意見を返せる」という人は少ないですよね。
世間的には、SNSで人気者になれる人が素晴らしいと考えがちですが、むしろ、そうじゃない人の方が編集には向いていると思います。
- 編集部
- え〜っ!?出版を含むマスコミ業界って、自分の主張があることが大事だと思ってました…。
- 助宗
-
経験上、相手の反応を柔らかく受け止めて、自分自身も変容していけることが大事だなと。
例えば私の場合、作家さんによって「お母さんみたい」と思っている人もいれば、「妹キャラ」と思っている人もいます。
その作家さんの求めに応じた接し方をしていますから、「え?助宗さんってそんなキャラだっけ?」と思う人もいるでしょうね(笑)。
- 編集部
- 相手に合わせていけることが大事ということでしょうか?
- 助宗
-
もちろんそれだけじゃダメです。
何が好きかという価値観や、世の中をどう見ているのかという視点をちゃんと持っていることが大事。
最初に話した「中身」の部分ですね。相手が投げてくれたことを自分なりに捉えた上で、応えていくこと。
自己主張とは違う何かを返していけることが、編集者に求められる資質なんじゃないかな。
- 編集部
- 学生時代のバイト経験で、編集の仕事に役立っていることってありますか?
- 助宗
-
大学1〜2年生の頃は、朝だけコンビニでバイトをしていました。
高校生の通学路だったので、「今はこういうジュースが流行ってるのか」とか、買うモノを観察してましたね。
それに、出勤する会社員もいれば、帰宅するバンドマンもいて、いろんな人の事情が見えるのが面白かった。世の中の動向を観察するクセがその頃から身に付いていたんだと思います(笑)。
思い出し笑いをする助宗さん。いろんな変わった人がいたのかも(笑)。
- 編集部
- 大学3〜4年生では他のバイトをしたんですか?
- 助宗
-
スープ専門の飲食店で接客と調理をしていました。
閉店時の片付けが素早いことで「片付けの助宗」と呼ばれていたんですが、これには工夫がありまして。お客さんや通行人の流れを見て、「どのスープを追加で調理すべきか。このまま閉店までいけるのか」という判断を下し、片付けやすいギリギリの線を狙っていました。
天気や気温、給料日の前後など、いろんな要素から予測を立てましたね。
- 編集部
- それって、まさに「マーケティング」ですね!
- 助宗
-
ですね。
「今日はやたらサムゲタンが出るな…。
さては、給料日後で飲み過ぎて二日酔い気味か!」とか(笑)。
コンビニもスープ店も、誰が来るのかわからないし、想定外のことが起きたりします。
その裏側を読むこと自体が面白かったし、想像する力が身に付いたと感じますね。
- 編集部
-
コンビニでも飲食店でも、自分次第ですごく面白くなるものなんですね!
バイト探しをしている学生に、ぜひアドバイスをお願いします!
- 助宗
-
自分にどの仕事が合っているのか判断するのって、難しいものだと思うんです。
でも、バイトなら、嫌なら次の仕事に切り替えることができる。
だから、軽い気持ちで、誘われたものや目に付いた仕事をどんどんやってみたらいいんじゃないかな。
私も、休みの日には、自分が全く興味ないことを誘われるままにやってみてますよ。
- 編集部
- どういうことですか?
- 助宗
-
自分で考えて選択すると、想定内のことしか起きないんですよね。
だけど、夫の趣味の山登りに誘われるまま行ってみたり、息子の野球の試合を見に行ったりすると、全く興味がないからこそ、「へ〜!」と思うことがあるんですよ。
意外な発見があるし、新しい楽しさを味わうことができるんですよね。
- 編集部
- なるほど〜!
- 助宗
-
私の場合、日々、自分で選択することが多過ぎるから、休みの日はそこから離れたいっていう気持ちもあるんです。
でもその結果、自分の都合に関係なく、出てきたものに乗っかると、新しい世界が見えて面白いなと思っています。
たまたま見つけたバイトでも、とりあえずやってみると自分の世界が広がっていくと思いますね。
密着の最後にヒトコト
私が仕事で大事にしていることは「シンパシーも大切だけど、エンパシーはもっと大切」です。
シンパシーは自分が共感できるっていうこと。
エンパシーは相手が何でそうなのかを考えるってことなんです。
エンパシーには、自分が理解できない人も含まれます。
例えば、SNSでひどいことを書く人がいて、理解できないと思った場合でも、「ひどいよね」だけだと、それで終わりになっちゃいます。
その人が「なぜそれを書くのか」を考え、そして、「どんな言葉ならその人に届くのか」を考えることって、すごく大事だなと。
理解し合える心地よい相手だけと接するんじゃなく、目の前で起きている嫌なことまでちゃんと考える。
これって、編集の仕事には不可欠な、「社会全体を見て、そこにどういう問題があるのか」
「何が必要とされているのか」を考えるための第一歩だと思うんですよね。
多くの人たちが読んでくれるマンガを生み出すために、私はエンパシーをいつも意識しています。
皆さんも、社会に出たら気の合う人ばかりと一緒にいられるわけじゃない。
つらいことがあっても、そういう人を理解したり、その理由を考えたりすることで、もっと自分の視野が広がり、同じ出来事にも違う意味を見つけることができると思います。
SNSでは、たった140文字の言葉で誰かを断罪し、傷つけてしまう人もいますけど、それって考えることを放棄している可能性もあるんですよね。
逆に、小説やマンガなどの物語では、結論を出すまでに何百ページもかけて言葉を費やしますし、それだけやっても結論が出なかったりすることもあり、そこにまた意味がある。
ネット上では、短くセンスよく伝えるコミュニケーションが良しとされていますが、コンテンツを世の中に羽ばたかせていくこの仕事には、エンパシーによる想像力はなくてはならないものだと思います。
それに、編集の仕事じゃなくても、人と人との関係性では、「相手ならどう思うのか」を考える想像力が大事。
そこから広がっていく世界がきっとあると思います。
HAMIDEL編集部より
最後までご覧いただきありがとうございます。
今回は、マンガアプリ「Palcy」編集長、助宗さんの1日に密着しました!
あらゆる場面で「想像」を積み重ねることが、より自身の「想像力」を育て、そしてその「想像力」が自身の人生を豊かにしてくれるんだなと感じました!
助宗さんは仕事やプライベート、どんな環境下においても、常に楽しく過ごされているのが印象的でしたね!
自分次第で何事も面白く出来るという事が分かりました!
読者のみなさんも今日から早速想像を積み重ね、アルバイト選択やこれからの働き方、目の前の事を楽しむ力にしてみてはいかがでしょうか。
助宗さんへの一問一答など、本編にて取り上げられなかった未公開内容はHAMIDEL編集部の記事にて近日公開いたします!
お楽しみに!
More…もっと助宗さんを知りたい!
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カバンの中身はこんな感じ!沢山メモするため、ノートや手帳が多め。
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スマホは1日平均6時間。起きたらまずはPalcyをチェック。
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打ち合わせ室の脇には、マンガがびっしり!マンガ好きにはたまらない…。
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テレワーク中、畳のお部屋で集中モードの助宗さん