アルバイトをしている人の中には「確定申告は関係ない」と思っている人も多いかもしれませんが、アルバイトでも確定申告が必要な人は存在します。手続きを怠ってしまうとペナルティーを科される可能性もあるので、どのような場合に確定申告義務があるのか、正しく理解しておきましょう。
1.年末調整と確定申告の違い
自身で行う「確定申告」とは別の手続きに「年末調整」があります。これらはどちらも1月1日から12月31日までの1年間の所得金額と、その所得に対する適正な税額(所得税)を確定させ、納税または還付を受ける手続きですが、手続きの対象となる所得の種類や手続きの方法が異なります。
年末調整
年末調整は、所得の中でも“給与所得”についての税額を確定(調整)させるために雇用主(会社や個人事業主)側が行う手続きです。実施時期は雇用主によって異なりますが、11月後半から12月下旬のケースが一般的。なお、年末調整は1人が複数社にまたがっては行えない決まりとなっています。
会社員や公務員、一定の収入(厳密には月88,000円以上)があるアルバイターは、毎月の給与からあらかじめ“源泉徴収”という名目で所得税の“見込み額”が天引きされています。しかし、正確な所得税額は1年間の所得金額に応じて決まるので、見込み額では足りなかったり、反対に払い過ぎてしまったりしている可能性が考えられます。そのため、年間の給与支払額が確定する年末に、雇用主へ扶養の有無や生命保険料を報告し、正確な所得金額を明らかにすることで、引かれすぎている分は還付され、不足している分が追加徴収されるという仕組みになっています。
確定申告
確定申告は、複数の雇用主から給与を受け取っている場合や、給与以外の所得がある場合、また、年末調整の対象となる年収を超えている場合などに必要な手続きです。
例えば、アルバイトを掛け持ちしている人や、フリーランスの人、賞金や株、退職金などの他の収入がある人は、確定申告が必要となります。確定申告の実施期間は、2月16日~3月15日の1カ月間(還付申告については2月中旬前も可能)で、手続きは各自が税務署やインターネット(e-Tax)で行わなくてはなりません。
2.アルバイトで確定申告をすべき人とは
続いて、確定申告が必要な人を具体的に紹介します。年末調整を済ませていても確定申告が必要なケースもあるので注意しましょう。
(1)年度の途中でアルバイトを辞め、年末の時点で無職だった人
年末調整は職場を通して行う手続きであるため、年末の時点でどこにも就職していない人は、一般的に以前にいた職場は年末調整を行っていません。したがって、年度の途中でアルバイトを辞め、年末を無職で迎えた人は、確定申告が必要になるケースもあります。この場合、辞めたアルバイト先から源泉徴収票が発行されるので、それをもとに自分で申告を行いましょう。
なお、年度の途中でアルバイトを辞めた場合でも、次の職場へ転職していれば、退職した会社の源泉徴収票を転職先に提出することでまとめて年末調整が行えるので、確定申告は不要です。
また、確定申告をしても税金が発生しない場合は、確定申告が義務にはなりません。
(2)アルバイトの掛け持ちをしている人
先述したように、年末調整は複数社にまたがっては行えないため、アルバイトを掛け持ちしている場合、掛け持ち分の手続きについては各自で確定申告を行う必要になるケースがあります。
その際、税務署には1年間の所得金額の合計を申告する決まりとなっているため、年末調整を行っていない勤め先の源泉徴収票だけでなく、すでに年末調整を済ませた勤め先の源泉徴収票も必要となります。ただし、掛け持ち分の給与収入(およびその他の所得)が20万円以下の場合は申告不要です。
(3)副業で20万円を超える収入がある人
フリマアプリなどを使った不要品やハンドメイド作品の販売、SNSを利用したアフィリエイト、データ入力をはじめとしたクラウドソーシングなどといった副業による所得はいわゆる所得税法上の雑所得と呼ばれます。雑所得(副業に係る収入-副業に係る経費)の合計が20万円を超えると、所得税の課税対象となるため、確定申告が必要です。
(4)医療費を多く払った人 または セルフメディケーション税制対象薬品を一定額以上購入した人
一年間に支払った医療費(自己負担額)が10万円を超える人や、薬局やドラッグストアで購入した薬のうちセルフメディケーション税制の対象となるものを、年間に12,000円以上買った人で、一年間に給与等について源泉徴収された所得税がある場合には、確定申告を行うことで、すでに源泉徴収された所得税が一部還付されることがあります。こちらは確定申告が必要というよりは、確定申告を行うことによって自身にメリットがあるというケースです。
3. 確定申告をしなかった場合のペナルティ
必要な確定申告の手続きを怠った場合、本来納めるべきであった所得税(本税)に加えて、「無申告加算税」や「延滞税」の支払いを求められる可能性があります。
無申告加算税
納付すべき税額があるにも関わらず、確定申告および納付を行わなかった場合に課される附帯税です。確定申告の期限後に自主的に申告した場合は所得税額の5%、税務署からの調査の事前通知を受けたあとに期限後申告をした場合は所得税額に応じて10~25%が加算されます。
延滞税
延滞した期間に応じて課される附帯税です。原則として、納期限の翌日から2カ月以内までは所得税額の年7.3%(当面は7.3%より一定割合だけ低い割合(令和7年中は2.4%)、2カ月を超えると所得税額の年14.6%(当面は14.6%より一定割合だけ低い割合(令和7年中は8.7% )が日割りで課されるため、延滞する期間が長いほど支払いが増えます。
4. アルバイトの確定申告に関する本記事のまとめ
確定申告を怠ると追加の税金が課される可能性があります。面倒に感じるかもしれませんが、対象の人は必ず手続きを行うようにしてくださいね。
監修者
尾関恵税理士事務所
税理士 尾関 真