アルバイトやパートで採用されている「シフト制」。そもそもシフト制とはどのようなものなのでしょうか?本記事では、シフト制の概要や種類、特徴、それぞれのメリット&デメリットを分かりやすく解説します。シフト制について正しく理解したうえで自分にあった職種を選びましょう。
1. シフト制とは?どういう意味かわかりやすく解説
シフト制とは、労働の契約を締結した時点では勤務日や勤務時間を予め確定しない働き方のことを指します。一定期間(1週間や1カ月)ごとにシフト(表)が組まれ、それにより初めて具体的な勤務日や勤務時間が決定します。
ちなみに、あらかじめ24時間勤務を8時間ごとに3つのシフトに分け、ローテーションで働く「三交替勤務」のような勤務は含まれません。シフト制は、朝から晩まで長時間営業している店舗や、曜日や時間帯によって忙しさが変動する職場でよく採用されています。
2. シフト制の種類は大きく分けて3種
バイトやパートのシフト制には大きく分けて「自由シフト制」「完全シフト制」「固定シフト制」の3種類があります。それぞれの特徴と共に、具体的な職種例を紹介していきます。
自由シフト制(希望シフト制)
自由シフト制とは、働く曜日や時間が固定されておらず、シフトを決める際に自分の働きたい日時を申告する形式です。1カ月ごとにシフトを決める所が多く、なかには2週間ごとに決める場合も。自身のライフスタイルや都合に合わせて、シフトを選択できるので、学生にとっては学業と両立しながら勤務しやすいでしょう。
しかし、職場によっては「週何回、何時間以上の勤務はマスト」というケースもあるので、面接時に詳細を確認しておくと安心です。
【自由シフト制の職種例】
- 飲食系(居酒屋、レストランなど)
- 販売系(コンビニ、スーパーなど)
- サービス系(警備員、引越しなど)
完全シフト制
完全シフト制とは、予め複数の勤務が決められており、その中からどのシフトに入るか決める働き方です。「早朝」「昼間」「夜間」など時間帯で区切られている場合が多いでしょう。勤務のシフトは一定期間ごとに決められるほか、勤務時間自体も多様なため、比較的どの時間帯に入っても柔軟に働ける人に向いています。
【完全シフト制の職種例】
- 病院の看護師や医師
- 24時間稼働する工場
- ホテルのフロントスタッフなど
固定シフト制
固定シフト制とは、勤務する曜日や時間が固定されている働き方になります。
塾講師や家庭教師などで採用されているケースが多く、固定シフト制は勤務日時が固定されているため、ある程度生活リズムが決まってる人は働きやすいでしょう。ただし、急なシフト変更は難しい職場が多いため、事前に相談することが大切です。
【固定シフト制の職種例】
- 事務職
- 塾講師や家庭教師
- 24時間稼働する工場など
3. 自由シフト制のメリット&デメリット
ここからは、自由シフト制で働くメリット&デメリットについて解説します。
【自由シフト制のメリット】
自由シフト制のメリットは以下のとおりです。
働きたい日や時間帯を選べる
自由シフト制では、自分のライフスタイルに合わせて働く日や時間を選べます。例えば、テスト期間はシフトを少なくしたり、長期休みはシフトをたくさん入れたりと、学生は学業とバイトの両立がしやすいでしょう。
他の予定との両立ができる
自分の都合に合わせてシフトを組むことができるため、バイトとプライベートのバランスを保ちやすいです。例えば、子育てや介護と両立しながら働きたい人とって、すでに決まっている時間の合間で働けるのはうれしいポイントといえます。
まとまった休みを取得できる
自由シフト制で働く場合は、長期休暇を取ることも可能です。学業や家庭との兼ね合いで、一定期間休みを取りたい人にとって大きなメリットとなります。しかし、急な長期休みの申し出は快く了承できない場合もあるので、前もって相談することが重要です。
【自由シフト制のデメリット】
反対に、自由シフト制のデメリットとして考えられるのは以下の3つです。
希望どおりのシフトで働けない場合がある
自由シフト制では、自分の希望するシフトが必ずしも組まれるわけではありません。他のスタッフとの調整が必要になったり、店舗の営業時間や混雑具合によっては希望するシフトに就けなかったりする場合もあります。
収入にバラつきがある
自由シフト制は勤務日数が毎月変動する可能性があるため、収入にバラつきが出ることがあります。毎月安定してシフトに入りたい人は、面接時に平均でどのくらい出勤できるのか、事前に確認すると良いでしょう。
次のシフトが出るまで予定が立てづらい
次のシフトが決まるまで自分の予定を立てることが難しい場合があります。自由シフト制は1カ月、もしくは2週間ごとにシフトを決めるので、確定するのが直前になる場合もあるでしょう。
4. 完全シフト制のメリット&デメリット
続いて、完全シフト制の主に考えられるメリット&デメリットを紹介します。
【完全シフト制のメリット】
まず、完全シフト制の主に考えられるメリットは以下のとおりです。
勤務時間によっては深夜手当が発生する
営業時間の長い店舗では予め深夜帯のシフトが設けられています。深夜(22時~翌朝5時)に働くと深夜手当が発生し、25%増しで給料が支払われるため、収入アップが期待できるでしょう。
多様な業務内容に携われる場合がある
完全シフト制では、勤務する時間帯によって業務内容が異なる場合があります。例えばレストランの場合、昼間は接客や調理補助、夜間は清掃や在庫管理など、時間帯によって異なる業務を経験できるかもしれません。異なる業務を経験することで、自分の得意分野や興味を見つけるきっかけにもつながるでしょう。
【完全シフト制のデメリット】
反対に、完全シフト制のデメリットとして考えられるのは以下の2つです。
生活が不規則になりやすい
完全シフト制は、睡眠時間や食事時間などが不規則になるため、健康に影響を及ぼす可能性があります。特に日勤と夜勤が混在する場合、生活リズムが乱れやすくなるでしょう。
また、不規則な生活によってストレスを感じやすくなることも。完全シフト制のアルバイトを選ぶ際には、自分の体調や生活リズムを考慮しましょう。
シフトが出るまで他の予定が立てづらい
自由シフト制と同様に、一定期間ごとにシフトを決めます。したがってシフトが確定するまで、他の予定を立てることが難しくなるでしょう。
また、完全シフト制で日勤と夜勤が混在する場合、家族や友人との予定が合わせづらい場合もあります。
5. 固定シフト制のメリット&デメリット
固定シフト制のメリット&デメリットについても見ていきましょう。
【固定シフト制のメリット】
固定シフト制で働くメリットは大きく3つ考えられます。
収入が安定する
固定シフト制で働くと、毎月の勤務日数や時間が一定であるため、ある程度まとまった収入を確保できるでしょう。働きたいのにシフトに入れないことも起こりにくいため、収入のめども立てやすいです。
先の予定が立てやすい
固定シフト制では、勤務日や時間が固定されているため、先の予定を立てやすいでしょう。家庭と両立して働きたい主婦(夫)や、趣味や出かける予定などを前もって決めたい学生にとっては大きなメリットになります。
生活リズムが安定する
勤務日時が固定であると毎日の生活リズムが一定になるため、学業や趣味、家事や育児との両立が忙しい人にとっても生活リズムを整えやすいでしょう。
【固定シフト制のデメリット】
一方、固定シフト制で働く場合のデメリットとしては以下が考えられます。
土日や祝日が必ず休みになるとは限らない
固定シフト制は勤務日が平日で、土日や祝日が必ず休みになるとは限りません。職場によっては、土日や祝日も勤務日となる場合があります。したがって、週末や祝日に予定を立てたい人にとってはデメリットと感じることもあるでしょう。
急な休みが取りにくい場合がある
急な休みを取ることが難しい点も、固定シフト制のデメリットとして考えられます。勤務日が固定なので、出勤する日に休みをもらいたい場合は、前もって相談しなくてはなりません。固定シフトで働くと絶対に休みを変更できないわけではないので、早い段階で相談することをおすすめします。
6. シフト制で働く際に確認すべき2点
ここからは、シフト制で働く際に確認しておくべき2項目について紹介します。自身の状況に照らし合わせて確認してみてください。
(1)自分の生活スタイルに合うか確認
まず、働き方が自分の生活リズムや予定に合うか確認することが重要です。シフト制といっても、「自由シフト制」「完全シフト制」「固定シフト制」とタイプがさまざまあります。自分にとってどのシフト制が最も適しているかを理解し、選択することで長く働くことにつながります。
(2)勤務先とのシフトに関するルールを確認
アルバイト先には、シフトに関する独自のルールがある場合があります。例えばシフトの提出方法や提出日、シフトの確定日などは勤務先によって異なるでしょう。変則的に予定がありバイトとの両立に不安がある人は、面接時にどのタイミングでシフトを組んでいるのか聞くと安心です。
7. シフト制で働く際に知っておくべき4点
シフト制で働くにあたって、特に注意して頂きたい4項目について解説します。
(1)労働時間の上限(原則1日8時間、1週40時間以内)がある
労働時間は労働基準法により、原則として1日8時間、1週40時間以内と定められています。もしこの上限を超えて働かせるには、36協定の締結が必要になります。36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1カ月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
参照:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針 | 厚生労働省
また18歳未満の高校生は働ける時間帯が決まっております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
【専門家監修】高校生はバイトで何時まで働ける?労働時間に関するルールと注意点を解説
(2)1日6時間以上勤務する際は休憩をとる
労働基準法では、1日6時間以上働く場合は45分以上の休憩を取ることが義務付けられています。また、8時間以上働く場合は1時間以上の休憩を取ることが必要です。1日に長時間働く場合も考えられるので、留意しておきましょう。
参照:「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項 | 厚生労働省
アルバイトの休憩発生のタイミングについての詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
バイトの休憩は何時間から?6時間ぴったりの場合や休憩中に給料は入るのかも解説
(3)シフト制のアルバイトやパートでも正社員と同様に年次有給休暇の取得ができる
シフト制のアルバイトやパートでも、一定の条件を満たすと年次有給休暇を取得することが可能です。取得条件は労働基準法第39条により定められており、以下2つの要件を満たす必要があります。
- 雇用日~半年以上継続して働いている
- 所定労働日の8割以上出勤している
参照:労働基準法第39条
より詳しい有給取得の条件や賃金の計算については、次の記事で確認ができます。
アルバイト・パートも有給はもらえる!取得条件・賃金の計算方法も解説
(4)社会保険の加入について知っておく
シフト制のアルバイトやパートに限った話ではないですが、一定の条件を満たすと社会保険に加入することが必要です。
加入条件として、フルタイム勤務の場合、もしくは「週の所定労働時間」と「月の所定労働日数」がフルタイムの4分の3以上の場合は対象となります。こちらに当てはまらなくとも、次の5つの項目をすべて満たす場合も加入の該当にあたります。
- アルバイト先が従業員数101人以上 (※2024年10月からは51人以上)
- 1週間に平均して20時間以上30時間未満働く場合
- 月額の賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
このように週の労働時間や賃金、雇用期間などの条件を満たせば加入の対象となるので留意しておきましょう。
社会保険の加入のメリット・デメリットについては次の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。
アルバイトの社会保険の加入条件は?要件やメリット・デメリットを解説
8. シフト制の勤務でよくある質問
最後に、シフト制の勤務でよくある質問について回答します。
Q.シフト制は休みにくい?
シフト制の休みの取りやすさは、勤務先やシフトの種類によります。例えば自由シフト制では、自分の都合に合わせてシフトを組むことができるため、基本的には休みやすいと言えます。
しかし、他のスタッフとの調整や店舗の営業時間、混雑具合により、希望する日に休むことができない場合もあるでしょう。休みを取りたい日が決まったら、早めに相談することが大切です。
Q.週休2日(シフト制)とは?
週休2日とは、原則1週間に2日間の休みが取得可能なことを指します。シフト制の場合、休日は固定ではなく、勤務スケジュールによって変動します。したがって必ずしも休みが土日や祝日ではないので注意しましょう。
Q.シフト制が向いている人は?
シフト制は「自由シフト制」「完全シフト制」「固定シフト制」によって、それぞれ向いている人は異なってきます。例えば自由シフト制は、自分の都合に合わせて働く日や時間を選べるため、家庭や学業、趣味など、他の予定との調整が必要な人にとって働きやすいです。
一方、固定シフト制は安定した収入と規則正しい生活リズムを保てるため、安定志向の人に向いているかもしれません。
Q.シフト制はやめとけと言われる理由は?
シフト制はやめておいた方がいいと言われる理由として、以下が挙げられます。
- 生活リズムが不規則になりがちで、体調管理が難しくなる
- プライベートの予定が立てづらく、友人や家族との時間調整が困難になる
- シフトの組み方によっては収入が安定しない
ただし、これらのデメリットは業種や職場によって大きく異なるため、一概に「やめておけ」と言えない側面もあります。
Q.シフト制の正社員はきつい?
シフト制の正社員は、職種や勤務先によって負担感が異なりますが、一般的にはいくつかの点で大変さがあります。
まず、不規則な勤務時間による生活リズムの乱れは、長期間続くと身体的・精神的な疲労につながりやすいでしょう。特に小売業や飲食業、医療現場などでは、休日出勤や深夜勤務が頻繁にあり、体力的な負担が大きくなります。
また正社員の場合、アルバイトと異なり責任ある立場で業務を行うため、シフト管理や売上管理など、勤務時間外の業務や持ち帰り仕事が発生することもあります。ただし、福利厚生が充実していたり、昇給・昇進の機会があったりと、アルバイトにはないメリットがあるのも事実です。また、一定期間働くことでシフト調整の優先権が得られるなど、キャリアを積むほどに働きやすくなる環境もあります。
個人の価値観や体質、そして職場環境によって「きつさ」の感じ方は大きく変わってくるでしょう。
Q.シフト制と土日休みはどちらが良い?
シフト制と土日休みのどちらが良いかは、個人のライフスタイルや優先事項によって異なります。
土日休みの大きなメリットは、社会の大多数の人々と同じ休日パターンを持つことで、友人や家族との予定が立てやすく、イベントや行事に参加しやすい点です。また、生活リズムが安定するため健康管理もしやすくなります。
一方、シフト制のメリットは、平日に休みを取れる点です。平日に休みを取れることで、銀行や役所などの公共サービスを利用しやすく、観光地やレジャー施設も比較的空いている時に楽しめるでしょう。
また、自分の都合に合わせてシフトを調整できる場合は、プライベートとの両立もしやすくなります。社会的な交流や安定したリズムを重視するなら土日休み、個人の予定を優先したい場合や多様な生活スタイルを持つならシフト制が向いているでしょう。
9. 自分に合った職場を選ぼう
比較的柔軟に働ける「自由シフト制」や、決められた勤務パターンのなかから選択する「完全シフト制」、勤務する曜日や時間が固定されている「固定シフト制」というように、「シフト制」には種類があります。希望するアルバイト先がどのようなスタイルを採用しているのか、自分のライフワークや給料面と相談しながら、メリハリのきいたアルバイト・パート生活をおくりましょう。