この記事の要約
- アルバイトやパートも有給は取得可能
- アルバイト・パートの有給取得条件は、半年以上継続して働いている+所定労働日の8割以上出勤しているの2要件を満たすこと
- アルバイト・パートの有給でもらえる賃金の計算方法は3つある
- 有給取得の際に注意したい点は早めに申請すること
労働者は、労働基準法によって有給(正式名称:年次有給休暇)を使うことが認められています。
そのため、正社員だけでなく、アルバイト・パートでも一定の条件を満たせば有給を取得可能です。
本記事では、アルバイト・パートで有給が付与される条件や、取得できる有給日数、上手に取得するためのコツを紹介します。これから有給を使いたいという人はぜひ参考にしてみてください。
1. アルバイト・パートも有給休暇はもらえる|学生も可
有給とは「年次有給休暇」の略称で、労働者のリフレッシュを目的に労働基準法によって定められた休暇。労働者は雇用形態に関わらず、一定条件を満たせば有給を取得できます。
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のこと。「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇です。 引用:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
2. アルバイト・パートが有給休暇を取得する条件|いつから?週20時間未満でも取得できる?
アルバイト・パートで有給を取得するためには、2つの要件を満たす必要があります。有給取得の要件については、労働基準法第39条によって規定が定められています。
(1)雇用日から半年以上継続して働いている
アルバイト・パートのシフトが週1日だとしても、半年以上続ければ要件を満たすことになります。
(2)所定労働日の8割以上出勤している
ここで言う所定労働日とは、契約によって決められている労働日数のことを指します。
例えば、「週4日」のシフトで「月17日」出勤している場合、半年間(6カ月)の所定労働日は17日×6カ月=102日となり、約82日出勤すれば8割以上の出勤率となります。
上記の例では、体調不良などでアルバイトを休んだとしても、82日以上出勤していれば、有給取得のための2つ目の要件を満たしていると判断できます。
参考:労働基準法第39条
3. アルバイト・パートが取得できる有給休暇の日数
所定労働日数や勤続年数によって異なる
アルバイト・パートで有給が何日もらえるかは、所定労働日数や勤続年数によって変わってきます。
一般的には、勤続年数が長く、シフトが多く入っているほうが付与される有給が多い傾向があります。
勤務時間が週5日の場合
1週間の労働時間が30時間以上で週5日勤務の場合、付与される有給の目安は以下のとおりです。
- 雇用日からの継続期間が半年:10日
- 雇用日からの継続期間が1年半:11日
- 雇用日からの継続期間が2年半:12日
- 雇用日からの継続期間が3年半:14日
- 雇用日からの継続期間が4年半:16日
- 雇用日からの継続期間が5年半合:18日
- 雇用日からの継続期間が6年半以上:20日
週5日のフルタイムで勤務している場合は、半年以上経過した段階で有給が発生し、勤続年数に応じて最大で20日分有給が付与されます。
勤務時間が週1〜4日の場合
1週間の労働時間が30時間未満で週1~4日勤務の場合、付与される有給の目安は以下のとおりです。
アルバイト・パートなどで週4日以内の勤務の場合、労働日数と継続期間に応じて付与される有給の日数が異なります。
シフト | 週1 | 週2 | 週3 | 週4 |
半年 | 1日 | 3日 | 5日 | 7日 |
1年半 | 2日 | 4日 | 6日 | 8日 |
2年半 | 2日 | 4日 | 6日 | 9日 |
3年半 | 2日 | 5日 | 8日 | 10日 |
4年半 | 3日 | 6日 | 9日 | 12日 |
5年半 | 3日 | 6日 | 10日 | 13日 |
6年半以上 | 3日 | 7日 | 11日 | 15日 |
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
4. アルバイト・パートの有給でもらえる賃金の計算方法|いくらもらえる?
有給を取得する場合、有給手当がいくらもらえるのかはバイト先やパート先の規則によって異なります。有給でもらえる賃金は、以下の3つの中のどれかで計算されるケースが多いでしょう。
(1)通常賃金から計算するケース
1つ目は、通常賃金で計算するパターンです。アルバイトやパートの場合は、時給×所定労働時間で計算されます。
出勤する曜日によって所定労働時間が異なる場合は、労働時間が多い曜日で有給を申請するほうが、その分もらえる賃金も多くなります。
計算例(時給1,000円で6時間勤務の場合)
1,000円×6時間=6,000円
(2)平均賃金から計算するケース
2つ目は、平均賃金から計算するパターンです。仮に、直近3カ月で計算する場合は、3カ月分の賃金の総額から勤務日数を割って計算します。
計算例(3カ月の給料の総額が20万円、合計勤務日数が40日の場合)
20万円÷40日=5,000円
(3)標準報酬日額から計算するケース
3つ目は、標準報酬日額から計算するパターンです。標準報酬日額とは、社会保険料を計算するために設定されている金額のことで、この計算方法を採用するケースは少ないかもしれません。
標準報酬日額から計算するのは、バイト先やパート先で健康保険に加入している場合のみで、この方法で有給を計算する場合は、あらかじめ労使協定(労働者と会社との間での協定)を結ぶ必要があります。
5. 有給休暇を上手に取得するために注意したい点
有給は基本的にいつでも使えますが、バイト先への配慮も大切です。ここでは、有給を取るときに知っておきたいポイントを紹介します。
(1)早めにバイト先に申請する
「有給の申請は〇日前までに」など、バイト先によっては規定があるケースもあります。
しかし、有給を使うときは日程が決まった時点でなるべく早めにバイト先に申請するほうがいいでしょう。
シフトの調整も早ければ早いほどしやすく、同僚への負担も軽減できる可能性があります。
2日以上など、申請する有給の日数が多い場合は、有給の希望を出しても調整が難しい可能性があるため、特に複数の日程で有給を申請するときは早めに相談しましょう。
(2)繁忙期などは避ける
有給は基本的にいつでも使えますが、繁忙期などに有給を使うのはなるべく避けたほうがいいでしょう。職場に迷惑がかからないように配慮し、時期を見ながら計画的に有給を使うのがおすすめです。
有給の取得はできれば閑散期などにし、やむを得ない事情以外は繁忙期の有給取得は避けましょう。
会社側が有給の申請を断ることはできませんが、基本的には上司の承認が必要になります。有給を取得する日によっては日程変更の相談をされるケースもあるため、職場の状況を見て有給を取得する日を判断しましょう。
(3)有給取得の利用は「私用」などでOK
有給を申請するときは、職場に有給申請用の書類を提出するのが一般的です。
書類には有給を取得したい日や有給を取得する理由について記載しますが、休暇の理由は具体的に明記せずに「私用のため」と記載するだけで問題はありません。
(4)有給休暇の期限内に使う
有給の期限は付与された日から2年となっており、前年度に使わなかった分は翌年まで繰り越されます。
有給は古い分から消化されていき、仮に有給が残ったままバイト先を辞める場合は、残った有給の権利もそのまま失うことになります。
有給は期限内に計画的に使うようにし、できれば退職までに使い切りましょう。
6.アルバイト先で有給休暇がないと言われたら?
有給は要件を満たしていれば誰もが取得できるため、会社側が労働者からの申請を拒否することはできません。
しかし、繁忙期などで人手が足りないときは、会社側が有給希望日の変更を求めることは可能です。もしも、条件を満たしているのに「有給は使えない」と直属の上司に言われたら、バイト先やパート先の更に上の立場の人や人事担当者に相談してみましょう。
それでも拒否されてしまった場合は、管轄の労働基準監督署など、公的な窓口へ相談するという方法もあります。
7.アルバイト・パートの有給休暇に関するよくある質問
アルバイト・パートの有給に関するよくある質問について回答します。
Q.「週3・1日6時間」で半年以上勤務した場合有給はもらえますか?
もらえます。1週間の労働時間が30時間未満であり、週3日勤務で勤続年数が半年以上経過している場合は、5日分の有給が取得できます。
Q.アルバイトの有給手当はいくらもらえますか?
有給手当は、先に紹介した3つのパターンのいずれかで計算されるケースが多いでしょう。
「通常賃金」で計算する場合、時給1,200円で6時間勤務と仮定すると、「1,200円×6時間=7,200円」を有給手当としてもらえます。
有給手当の計算方法はバイト先の規則によって異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
Q.アルバイトの有給休暇の使い方に制限はある?
有給休暇を使うことは労働者の権利であるため、申告すればアルバイト・パートでも使えます。
有給申請用の書類に、有給休暇の具体的な理由は記載せず「私用のため」と記載すれば問題ありません。
8.アルバイト・パートの有給休暇は計画的に使おう
有給は、労働基準法によって定められた労働者の権利です。アルバイトやパートでも要件を満たせば有給を取得することができます。
ただし、有給を取得する際はシフトが決まる前など、早めに職場に申請することが大切です。
有給が付与されてから2年で有給の権利は消失してしまうので、計画的に有給を使っていきましょう。