この記事の要約
- フリーターと正社員の大きな違いは手取りの給与
- 20代フリーターの手取りは約186~207万円、正社員は約218~252万円
- 一人暮らしに最低限必要な生活費は10~15万円
\給与を上げたいなら正社員を目指すのも選択肢の一つ/
非正規雇用(フリーター)と正規雇用(正社員)の違いは、雇用期間や労働時間など、さまざまな面で見受けられますが、年を重ねるにつれて次第にその差が大きくなるものとして「給与」が挙げられます。給与とは、事業主から従業員に対して、労働の対価として支払う報酬すべてのこと。基本給や手当、賞与などの金銭のほか、自社製品の贈り物や景品などお金以外の支給品も給与に含まれます。この記事では、給与のなかでも「お金」に焦点を当てて、フリーターと正社員がもらえる給与の違いや、支払うべき税金の種類などについて紹介します。
1.額面から手元に残る「手取り」はいくら?
額面とは、勤務先から労働者に対して支払われる給与の合計金額のことで、通常、求人募集や契約書などで記載される給与額も、この額面のことを指しています。しかし、実際には所得税や住民税、社会保険料(健康保険・厚生年金)が控除された金額が「手取り」として手元に残ります。すなわち、額面から手取りを計算するには、「額面−(税金+社会保険料)=手取り」になります。 例えば、東京都在住の25歳一人暮らしで、額面の月給が25万円(賞与なし・扶養家族なし)と仮定すると、控除額は約5.3万円になり、その場合の手取りは約19.7万円です。
ただし、額面の金額や扶養人数によって控除される金額が異なるため、一般的に手取りは額面の75%〜85%が目安とされています。
なお、手取りの計算方法は個人によって異なるうえに複雑なため、手取りを知りたい場合は額面の80%として「額面年収×0.8」で目安額を計算するのが簡単です。
【年収から計算!手取り早見表(額面年収の80%の場合)】
額面年収 (万円) |
手取りの目安 (万円) |
---|---|
200 | 160 |
250 | 200 |
300 | 240 |
350 | 280 |
400 | 320 |
450 | 360 |
500 | 400 |
550 | 440 |
600 | 480 |
650 | 520 |
700 | 560 |

2.フリーターと正社員における平均年収の差
年収とは、「年間収入」のことで1月1日から12月31日までの1年間で支給された給与の総支給額を指します。そのため、税金や保険料が差し引かれる前の金額です。ちなみに、年収を12カ月で割った金額が月収です。
フリーターと正社員における平均年収の違いとして、「昇進・昇給」の頻度や度合い、「賞与・退職金」の有無などが考えられます。通常フリーターは、正社員と比較して昇進の機会があまりありません。昇給はあっても時給10〜100円程度と少額で、かつ賞与や退職金の支給はないのが一般的です。そのため、「年俸制」や「月給制」を軸とした安定した収入に加え、成果による賞与の支給や定期的な昇給なども見込める正社員のほうが年収は自ずと高まる傾向にあります。
20代の年収はいくら?
厚生労働省の調査「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」では、フリーターや正社員の雇用形態別に月額賃金(※1)を発表しています。その月額賃金を参考に、20代のフリーター・正社員それぞれの月額賃金や年収、年間の手取り額を独自に概算すると下記のとおりです。
※1 賃金とは、事業主が労働者に対して労働の対価として支払うお金のこと。給料のほか、手当、賞与なども全て含まれます。ただし、厚生労働省の調査「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」で使用する「賃金」とは、調査実施年の6月分として支払われた所定内給与額の平均のことを言います。
〈フリーターと正社員における月額賃金、平均年収、平均年収の手取り額〉
年齢区分 (歳) |
フリーター | 正社員 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
平均月額 賃金 (万円) |
平均年収 (万円)※3 |
平均年収の 手取り額 (万円)※4 |
平均月額 賃金 (万円) |
平均年収 (万円)※3 |
平均年収の 手取り額 (万円)※4 |
|
20〜24 | 19.4 | 232.8 | 186.2 | 22.8 | 273.6 | 218.8 |
25〜29 | 21.6 | 259.2 | 207.3 | 26.3 | 315.6 | 252.4 |
20〜29※2 | 20.5 | 246 | 196.8 | 24.5 | 294.6 | 235.6 |
※2 20〜29歳の値={(20〜24歳の値)+(25〜29歳の値)}÷2
※3 平均年収=(平均月額賃金)×12
※4 平均年収の手取り額(平均年収の80%とする場合)=(平均年収)×0.8
参考:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況「(6)雇用形態別にみた賃金」
20代のフリーターの平均年収は約232〜259万円
20代のフリーターの平均年収は、約232〜259万円でした。ここから算出される平均値は246万円となります。 なお、年収から手取り額を算出すると、約186〜207万円となり、平均値は196.8万円です。ただし、雇用条件によって手取り額は多少前後する可能性があります。
20代の正社員の平均年収は約273〜315万円
20代の正社員の年収は、約273〜315万円で、平均値は294.6万円となります。これらの金額は、フリーターよりも高いことが分かります。
なお、年収から手取り額を算出すると、約218〜252万円で、平均値は235.6万円となります。ただし、一口に正社員の平均年収といっても、スキルや経験、賞与などによっては異なりますので、あくまでも参考程度として捉えておくのが無難です。
年齢が上がるほど賃金の差は開いていく
前述したとおり、正社員の年収はスキルや経験によって大きく異なりますが、たとえ20代前半の時点で、フリーターと正社員の年収自体にそこまで大きな違いが見受けられなかったとしても、30代や40代と年齢が上がるにつれて両者の年収に大きな差が生じることも決して珍しくはありません。 「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」を参考に、フリーターと正社員における賃金の年齢別推移を表にまとめると、以下のとおりです。
〈フリーターと正社員における賃金の年齢別推移表 〉
年齢区分 (歳) |
フリーターの 平均月額賃金 (万円) |
正社員の 平均月額賃金 (万円) |
平均月額賃金の 差額 (万円)※5 |
年間での差額 (万円)※6 |
---|---|---|---|---|
20〜24 | 19.4 | 22.8 | 3.4 | 40.8 |
25〜29 | 21.6 | 26.3 | 4.7 | 56.4 |
30〜34 | 22.1 | 29.4 | 7.3 | 87.6 |
35〜39 | 22.0 | 32.7 | 10.7 | 128.4 |
40〜44 | 22.0 | 35.4 | 13.4 | 160.8 |
45〜49 | 21.7 | 37.4 | 15.7 | 188.4 |
50〜54 | 22.2 | 39.4 | 17.2 | 206.4 |
55〜59 | 22.1 | 40.4 | 18.3 | 219.6 |
60〜64 | 25.6 | 34.9 | 9.3 | 111.6 |
65〜69 | 23.1 | 31.2 | 8.1 | 97.2 |
※5 平均月額賃金の差額=(正社員の平均月額賃金)-(フリーターの平均月額賃金)
※6 年間での差額=(平均月額賃金の差額)×12カ月
参考: 厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況「(6)雇用形態別にみた賃金」
フリーターの平均月額賃金は、生涯を通じてもらえる金額にそこまで大きな変化はなく、基本的に横ばいで推移していることが分かります。それに対して正社員の平均月額賃金は、20歳から年齢を経るにつれて順調に増加しており、55〜59歳の間に最高額を迎えます。このように、長期的な視点で見ると、20代のうちから正社員で働くことは賃金において大きなメリットがあると言えるでしょう。
3.アルバイトから正社員になった場合、給与はどのくらい変わる?
では、アルバイトから正社員になった場合、給与はどのくらい変わるのでしょうか。 自社調査(集計期間:2023年4月〜2024年3月)をもとに、飲食・フード業を実例に挙げると、アルバイトの全国平均月給が178,720円であるのに対し、正社員であれば246,103円でした。その差額は67,383円、年間で80万円以上も生じると考えられます。
〈飲食・フード業のアルバイトと正社員における給与の違い 〉
給与項目(円) | アルバイト | 正社員 |
---|---|---|
平均月収 | 178,720 | 246,103 |
月収の差額 | – | 67,383 |
年間の差額※7 | – | 808,596 |
※7 年間での差額=(月収の差額)×12
参考:自社調査(集計期間:2023年4月〜2024年3月)
業種や職種、雇用条件などによって給与は異なりますが、アルバイトよりも正社員のほうが給与が高い傾向にあります。
4.働く上で支払う必要がある税金とは?
フリーターも正社員同様、一定以上の収入がある場合は「所得税」「住民税」といった税金の支払い義務が生じ、「国民健康保険料」「国民年金保険」も支払わなくてはなりません。その際フリーターは、毎月の給料から諸々の支払い分が天引きされる正社員とは異なり、各種支払いの手続きを自身で行わなければならないこともあるので、注意しましょう。
所得税
所得税は、収入から経費を差し引いたお金(所得)に対してかかる税金のことを指します。国に納める国税で、鉄道整備や医療など、国に関わることに使われています。1月から12月までに得た1年間の収入から交通費などの必要経費を差し引いた額が103万円を超えたときに発生し、年間の所得額によって税率が変動します。
- 195万以下であれば税率5%
- 195万以上330万円以下であれば税率10%
例えば上記のように、年間の所得が増えれば増えるほど税率も上昇する仕組みとなっています。
住民税
住民税は、居住地域の自治体の運営に必要な経費を住民が負担するもので、教育や福祉、消防、ゴミ処理などに利用されています。 課税対象となるのは、基本的には年間の所得が100万円を超えている人です。ただし、規定の条件に該当する人は、住民税の納税が免除される場合もあります。住民税の税率は、居住している地域によって変わります。納税額の詳細は居住地域の自治体のホームページなどで確認しましょう。
健康保険・国民健康保険
日本ではすべての国民が原則として公的医療保険に加入する必要がある「国民皆保険制度」が法律で定められています。これにより、病気やケガ、出産などで治療が必要になったとき、保険医療機関などでの自己負担を一定の割合に抑えることができます。 代表的な公的医療保険としては、「健康保険」と「国民健康保険」の2種類です。通常、正社員は所属する企業を通じて「健康保険」に加入します。 フリーターであれば、「国民健康保険」に加入するのが一般的です。保険料は年収や自治体によって変動し、年収130万円を超えた時点で自ずと保険料の支払い義務が生じる仕組みとなっています。ただし、月給が88,000円以上、かつ雇用期間が1年以上の長期が見込まれるなど、規定の労働条件を満たせばフリーターも正社員同様に、勤務先の「健康保険」に加入できる場合があります。
国民年金・厚生年金
公的年金制度は、高齢者や本当に保障を必要としている人の暮らしを社会全体でサポートするための仕組みです。一定期間以上、「年金」と呼ばれる保険料を納めることで、65歳からお金を受け取る権利を得られます。年金には「老齢基礎年金(国民年金)」「老齢厚生年金(厚生年金)」の2種類があります。基本的に、「日本国内に住所を有している、20歳以上60歳未満のすべての人」に加入義務が発生するのが「国民年金」。フリーターの場合は国民年金に加入するのが一般的です。 一方、「厚生年金」は国民年金よりもより手厚いサポートが受けられる保険です。主に会社などに勤務している人は、「国民年金」に加えて「厚生年金」にも加入し、両方の保険料を支います。 なお、フリーターでも規定の労働条件を満たせば厚生年金に加入できるところもあります。厚生年金の加入を希望する場合は、勤務先に聞いてみましょう。
5.ついでに知っておこう!一人暮らしにかかる生活費はいくら?
フリーターや正社員を問わず、収入のほとんどを生活費に回す人も多いでしょう。特に、これから一人暮らしを始める人は、生活にかかる費用感を把握し、予算を立てることが大切です。
一人暮らしに最低限必要な生活費は10〜15万円
一人暮らしに最低限必要な生活費は、居住する地域や、生活スタイルなどによっても多少異なりますが、おおよそ10〜15万円と見積もっておきましょう。また、生活費とは別に、毎月の貯金にまわすお金も予算立てておくと安心です。以下、手取り15万円で一人暮らしをする場合の生活費のシミュレーションをしてみました。
〈手取り15万円で一人暮らしをする場合の生活費のシミュレーション〉
項目 | 金額(円) | ||
---|---|---|---|
MIN | MAX | ||
生活費 | 家賃 | 45,000 | 50,000 |
食費 | 20,000 | 35,000 | |
水道・光熱費 | 12,000 | 15,000 | |
通信費 | 5,000 | 12,000 | |
医療費 | 3,000 | 3,000 | |
雑費 | 5,000 | 10,000 | |
娯楽・交際費 | 10,000 | 20,000 | |
合計 | 100,000 | 145,000 | |
貯金 | 50,000 | 5,000 |
先に紹介したように、20代のフリーターの賃金が20.5万円(手取り16.4万円想定)、正社員の賃金が24.5万円(手取り19.6万円想定)だと考えると、特に、20代のフリーターの手取りは15〜16万円ギリギリのラインとなることも珍しくありません。安定した一人暮らしを送るためには、お金の使い方に工夫が必要です。例えば、家賃を抑える、スマートフォンやWi-Fiの契約をより低価格なプランに変更する、外食を減らして自炊の回数を増やすなどして、生活費を手取り額内に収めるよう心掛けると良いでしょう。交際費や趣味の費用を担保したい場合は、収入を増やすために副業や、雇用形態の見直しを検討しても良いかもしれません。
6.給与を上げたいなら正社員を目指すのも選択肢の一つ
フリーターとして働くなかで、特に収入面において漠然とした不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。フリーターとして生活費を稼ぐのは不可能ではありませんが、もし「着実に給与を上げたい」と思う気持ちが少しでもあるなら、正社員を目指す選択肢も視野に入れてみましょう。安定した収入が得られるうえ、スキルアップや実績に応じて収入アップが望める正社員として働くことで、安定した生活が送れるかもしれません。