募集要項と違う労働条件でアルバイトをさせられたら? | マイナビバイトTIMES
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    募集要項と違う労働条件でアルバイトをさせられたら?

実際の給料や勤務日数、仕事内容と違う好条件をインターネットや雑誌などの募集要項で示すことを「求人詐欺」といいます。アルバイトの場合、時給や手当、勤務条件が関係するケースが多くあり、例えば、以下のような例はすべて求人詐欺の可能性があるでしょう。

  • 「時給1200円」と書いてあるのに1000円しか支給されない
  • 「交通費支給」と書いてあるのに支給されない
  • 「週2日以上」と書いてあるのに週4日以上の勤務を求められる
  • 「月30万円以上」と書いてあったが月間80時間以上の残業を前提としていた

この記事では、求人詐欺に巻き込まれないためのポイントや、万が一求人詐欺に遭ってしまった場合の対処法を解説します。


1.募集要項と違う=求人詐欺ではない

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まず注意が必要なのは、募集要項の条件と実際の労働条件が違った場合、すぐに法律違反とはいえない点です。

アルバイトを含めた労働者は、雇用主と労働契約を結びます。労働契約締結時に実際の労働条件が確定しますが、しっかりとした説明とお互いの合意があれば、募集要項とまるで同じ条件でないといけないというルールにはなっていません。
また、求人詐欺は「詐欺」という言葉が用いられていますが、人から金銭などだまし取る刑法上の「詐欺罪」が適用されることは、まずないといって良いでしょう。


2.求人詐欺に遭わないために注意すべきことと

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思っていたのと違う労働条件で働いて嫌な思いをするのは、あなた自身です。求人詐欺に遭わないために、「応募前」「面接時」「契約前」にそれぞれ注意すべきことを紹介します。

応募前

応募前に希望勤務先について確認しておきたいポイントは以下のとおりです。

  • 労働関係のトラブルになっていないかニュースを探す
  • 評判をSNSや口コミサイトで検索する
  • 「週2日以上」と書いてあるのに週4日以上の勤務を求められる
  • 「月30万円以上」と書いてあったが月間80時間以上の残業を前提としていた

ただし、インターネットやSNSで見かけた口コミの真偽を確かめるのは難しいため、あくまでも参考程度にしておきましょう。

面接時

面接では、以下を参考に募集要項で気になるポイントを聞くようにしましょう。

「火曜と水曜のみの勤務で大丈夫ですか」「交通費がもらえない場合はありませんか」「残業代はどうなっていますか」と、趣旨が伝わるよう質問しましょう。「単位を取得しないと大学卒業に影響する」「保育園の送迎がある」というような事情を伝えると、相手に質問の意図が伝わりやすくなります。会社側から「なぜそんなことを聞くのか」と聞き返されたり、曖昧な返事をされたりした場合は、黄色信号です。

求人詐欺をするような会社は、募集要項の中に労働者の目を引く魅力的な部分をつくって応募を増やそうとするため、少しでも気になった部分は積極的に質問してください。いざという時のために、面接の様子を録音しておくのもおすすめです(録音は、相手の了承を得ないといけないわけではありません)。

▼合わせてチェック!
面接時にブラックバイト」を見極める5つのチェックリスト

契約前

契約前に「労働条件通知書」をもらうようにしましょう。明示すべき労働条件は、賃金や就業時間をはじめ、業務内容、休憩時間など。また、スペースの都合上書ききれない場合も説明する必要があります。

  • 労働条件通知書をもらう
  • 労働条件通知書の内容を確認する

労働条件通知書を出さない会社は黄色信号、労働条件通知書を受け取った場合でも、面接で聞いた内容と違い、会社側が曖昧な返事をした場合も同じです。労働条件通知書はトラブルに備えてしっかりと保存しましょう。もらえないまま働き始める場合は、説明を受けた内容をメモとして残しておきましょう。

※注意※
厚生労働省が企業向けにつくった説明資料によると
「初回の面接など、求人者と求職者が最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示すべき」とされています。
また、労働基準法(労基法)でも「労働条件通知書を出さないといけない」ルールとなっています。
労働条件通知書の条件に反している場合は、労基法に基づいて契約を解除することができます(労基法15条2項)。

3.求人詐欺に遭ったら労働局・弁護士に相談を

バイト 求人詐欺 相談

求人詐欺を疑った場合、弁護士や都道府県に設置された労働局に相談をしてみましょう。専門家が連絡するだけで、「条件の改善」「未払い金の支払い」「円満な労働契約の終了(退職)」などに結び付く可能性があります。

「募集要項の内容が違うくらいで」と思うかもしれませんが、時給が大幅に安ければ最低賃金法、暴力・暴行があれば刑法違反になります。パワハラ・セクハラを含めて労働者を守る法律は多様ですので、専門家があなたも意識していない問題点や改善方法を見つけてくれることも大いに期待ができます。

相談の際のポイント

証拠を提示すると実態と最初に示された条件が違うことが他の人から見て理解しやすくなります。証拠となるのは以下のとおりです。

  • 面接時の録音
  • 募集要項を印刷した紙
  • 労働条件通知書など

また、募集要項を掲載していたサイトや雑誌の運営者に連絡すれば、掲載の見直しなどを通じて、ほかの人が嫌な思いをすることを防げる可能性もあります。

メモ
職業安定法と労働基準法の違いは、職安法は「応募者一般に適用される条件」を示すのに対し、
労基法は「具体的な労働契約をする人(例えばあなた)を想定して適用される条件」を示す必要を要求しているといえます。
職安法に基づく指針が禁じているのは、「明示する労働条件は、虚偽または誇大な内容としてはならない」ということです。
噓の場合は分かりやすいですが、どこからが「誇大」といえるかは、判断が難しいのが実態です。
例えば、募集要項で「時給2000円」となっていたのに1000円しか出ない場合は「誇大」といえるかもしれませんが、
時給が10円、20円違う場合、「誇大」とは必ずしも言い切れないのは、感覚的に理解できるのでないでしょうか。
不明な点があれば、近くの労働局や弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

監修

笹山尚人氏
弁護士、東京法律事務所所属。労働事件全般(労働者側)、契約法一般などを取り扱う。単著に
「ブラック職場~過ちはなぜ繰り返されるのか」(光文社新書)
「パワハラに負けない!」(岩波ジュニア新書)
など多数。


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