「アルバイトの求人情報と実際の仕事内容が全然違う…」といった経験がある人もいるのではないでしょうか。本来の給料や仕事内容と異なる好条件を募集要項で示すことは「求人詐欺」に該当します。本記事では求人詐欺に当たるケースや求人詐欺に遭った場合の対処法を解説。「これって求人詐欺かも?」と感じている人はぜひ参考にしてみてください。
「これって求人詐欺?」と感じたら確認すべきこと
現在働いているアルバイト先で求人詐欺を疑った場合、以下2つのポイントを確認しましょう。
募集要項と違う=求人詐欺ではない
前提として、求人情報と実際の労働条件が異なっていてもすぐに法律違反とは言えません。アルバイトを含む労働者は、働く前に雇用主と労働契約を結びますが、この契約時に実際の労働条件が明示され、双方の合意を持って契約成立となります。そのため、求人票と全く同じ条件でなければならないという決まりはありません。
まずは、契約時に交わした雇用契約書を今一度確認し、現在の仕事内容がお互いの合意のもとに行われているものであるか否かを明確にしましょう。
求人詐欺に当たるケース
お互いの合意がなく、一方的に労働条件と異なる仕事をさせられている場合は、求人詐欺に当たる可能性が高いです。
【求人詐欺の例】
- 「時給1200円」と書いてあるのに1000円しか支給されない
- 「交通費支給」と書いてあるのに支給されない
- 「週2日以上」と書いてあるのに週4日以上の勤務を求められる
- 「月30万円以上」と書いてあったが月間80時間以上の残業を前提としていた
特にアルバイトの場合は「時給」「手当」「勤務条件」が関係するケースが多く、例えば上記のような例はすべて求人詐欺の可能性があるでしょう。
求人詐欺に遭った時の対処法
ここからは、実際に求人詐欺に遭った場合の対処法について解説します。
弁護士・労働局に相談
求人詐欺を疑った場合、弁護士や都道府県に設置された労働局に相談をしてみましょう。専門家が連絡するだけで、「条件の改善」「未払い金の支払い」「円満な労働契約の終了(退職)」などに結び付く可能性があります。
「募集要項の内容が違うくらいで…」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、時給が大幅に安ければ最低賃金法、暴力・暴行があれば刑法違反になります。場合によってはあなたがまだ把握していない問題点や改善方法が見つかるかもしれません。
相談するの際のポイント
証拠を提示すると実態と最初に示された条件が違うことが他の人から見て理解しやすくなります。証拠となるのは以下のとおりです。
- 面接時の録音
- 募集要項を印刷した紙
- 労働条件通知書など
また、募集要項を掲載していた運営者に連絡すれば、掲載の見直しなどを通じて、ほかの人が嫌な思いをすることを防げる可能性もあります。
求人詐欺に遭わないために注意すべきこと
続いて、求人詐欺に遭わないために注意すべきポイントを「応募前」「面接時」「契約前」に分けてそれぞれ解説します。
応募前
求人情報を見て応募する前に、応募先について以下ポイントを確認しましょう。
- 労働関係のトラブルになっていないかニュースを探す
- 評判をSNSや口コミサイトで検索する
ただし、インターネットやSNSで見かけた口コミの真偽を確かめるのは難しいため、あくまでも参考程度に。また、実際のお店の雰囲気を知るために、応募前にお客として訪れてみるのもおすすめです。
面接時
求人詐欺にはシフトや手当に関する内容も多いため、面接では以下の項目を質問しましょう。
- 希望シフト(週◯日~で大丈夫か)
- 研修期間
- 交通費・残業代の有無
「火曜と水曜のみの勤務で大丈夫ですか」「交通費はもらえますか」「残業代はどうなっていますか」と、趣旨が伝わるよう質問しましょう。その際、「単位を取得しないと大学卒業に影響する」「保育園の送迎がある」というような事情を伝えると、相手に質問の意図が伝わりやすくなります。
求人詐欺をするような会社は、募集要項の中に労働者の目を引く魅力的な部分をつくって応募を増やそうとするため、少しでも気になった部分は積極的に質問してください。いざという時のために、面接の様子を録音しておくのもおすすめです(録音は相手の了承を得る必要はありません)。
関連記事:面接時にブラックバイト」を見極める5つのチェックリスト
契約前
契約前には「労働条件通知書」をもらいましょう。企業が明示すべき労働条件は、賃金や就業時間をはじめ、業務内容、休憩時間などがあり、スペースの都合上書ききれない内容もすべて説明する必要があります。
- 労働条件通知書をもらう
- 労働条件通知書の内容を確認する
労働条件通知書を出さない会社は労働基準法違反であり、求人詐欺をはたらいている可能性が高いでしょう。また、労働条件通知書を受け取った場合でも、面接で聞いた内容と違い、会社側が曖昧な返事をした場合も同じです。労働条件通知書はトラブルに備えてしっかりと保存しましょう。
求人詐欺に関するよくある質問
最後に、求人詐欺に関するよくある質問について回答します。
Q.労働条件と違ったらすぐ辞めても良い?
労働条件通知書に記載された労働条件と異なる内容の業務をさせられている場合は、即座に「辞めます」と伝えてOKです。労働条件通知書に反した働き方は労働基準法違反となり、法律違反を理由に即日退職が可能になります。
Q.求人詐欺の見分け方は?
アルバイトの求人詐欺を見分けるためには、以下のポイントに注意しましょう。
要注意サイン | 具体例 |
時給が極端に高い | 「月収50万」「即日現金OK」 |
仕事内容が曖昧 | 「荷物を運ぶだけ」「楽に稼げる」 |
企業情報がない | 公式サイトがない、DMのみの連絡 |
契約書がない | 口約束だけ、書面がない |
事前にお金を請求される | 研修費・登録料・制服代など |
採用前に個人情報を求められる | 銀行口座、マイナンバーなど |
コミュニケーションが不自然 | 不自然な日本語、執拗な連絡 |
気になっている求人が少しでも怪しいと感じた場合は、応募を控えるようにしてください。
困ったときは労働相談窓口へ
求人内容と異なる条件で働かされていると感じたら、まずは契約内容を確認し、雇用主に相談することが大切です。納得できない場合は、すぐに辞める選択も可能ですが、トラブルを避けるためにも、労働契約や退職手続きは慎重に進めましょう。
困った時は労働基準監督署や総合労働相談コーナー、法テラスなど労働相談窓口の活用もおすすめです。
監修
笹山尚人氏
弁護士、東京法律事務所所属。労働事件全般(労働者側)、契約法一般などを取り扱う。単著に
「ブラック職場~過ちはなぜ繰り返されるのか」(光文社新書)
「パワハラに負けない!」(岩波ジュニア新書)
など多数。