この記事の要約
- 高年齢求職者給付金は65歳以上の雇用保険加入者が離職した際にもらえる
- 高年齢求職者給付金の受給条件は3つ
- 高年齢求職者給付金の給付制限期間以降はアルバイトをしてもOK
目次
- 1. 高年齢求職者給付金とは?
- 2. 高年齢求職者給付金の受給条件は?
- (1)65歳以上である
- (2)6カ月以上雇用保険に加入している
- (3)失業状態である
- 3. 高年齢求職者給付金の受給までの流れ
- 4. 高年齢求職者給付金の受給額の計算方法
- 5. 高年齢求職者給付金の申請中の注意点
- 6. 高年齢求職者給付金のよくある質問
- Q.高年齢求職者給付金をもらったら確定申告は必要?
- Q.高年齢求職者給付金をもらった後にバイトしても良い?
- Q.高年齢求職者給付金は何回でももらえる?
- Q.高年齢求職者給付金の受給期限は?
- Q.同じ会社に再就職する場合、高年齢求職者給付金を受け取れる?
- Q.高年齢求職者給付金と年金の両方を受給できる?
- Q.高年齢求職者給付金の上限額は?
- 7. キャリアアドバイザーからのアドバイス
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方であればアルバイトやパートの人でも一定の条件を満たせば受給できます。 この記事では高年齢求職者給付金の内容や受給条件、申請手続きの流れ、申請時の注意点などを解説するので、自分が対象となるかどうかを確認してみてください。
1. 高年齢求職者給付金とは?
「高年齢求職者給付金」とは、65以上の雇用保険加入者が離職したときにもらえる給付金です。通常、失業保険は20歳以上65歳未満の雇用保険加入者(被保険者)を対象に給付されますが、65歳以上の被保険者は「高年齢被保険者」という扱いになり、失業時の保障については高年齢求職者給付金が一時金として支給されます。
2. 高年齢求職者給付金の受給条件は?
高年齢求職者給付金をもらうための条件は大きく3つあります。
(1)65歳以上である
高年齢求職者給付金をもらうためには、高年齢被保険者(雇用保険に加入している65歳以上の人)であることが大前提です。自分が該当するかどうかは、雇用契約書で確認できます。
(2)6カ月以上雇用保険に加入している
具体的には、離職した日からさかのぼった1年の間に、通算6カ月以上の加入期間があることが条件です。あくまで通算なので、期間は断続的でも合算6カ月以上であれば問題ありません。
(3)失業状態である
ここで言う失業状態とは、「就職しようとする積極的な意思と働く能力があり、積極的に求職活動を行なっているにもかかわらず、就職できない状況にあること」を指します。つまり、仕事を辞めたからといって高年齢求職者給付金が必ず支給されるというわけではなく、再就職するための仕事探しをしている場合のみ支給されます。
受給できないケースは?
以下に該当する場合、先の条件を満たしても高年齢求職者給付金は受け取れない場合が多いでしょう。
- 家事に専念する方
- 昼間学生または昼間学生と同様の状態と認められる方
- 家業に従事し就職できない方
- 自営を開始または準備に専念する方(※1)
- 次の就職が決まっている方
- 雇用保険の被保険者とならない短時間就労を希望する方
- 自分の名義で事業を営んでいる方
- 会社の役員などに就任している方(※2)
- 就職・就労中の方(※3)
- アルバイト・パート中の方(※4)
- 同一事業所で就職、離職を繰り返し、再び同一事業所に就職予定の方
※1.求職活動中に創業の準備を行う方は支給可能な場合あり
※2.就任予定や名義だけの役員も含む
※3.試用期間を含む
※4.労働時間が週20時間未満であれば支給可能な場合あり
3. 高年齢求職者給付金の受給までの流れ
次に、高年齢求職者給付金を受け取るまでにはどのような手続きや手順が必要か、おおまかな流れを説明しましょう。
(1)離職した会社から離職票を受け取る
高年齢求職者給付金の申請手続きをするには「離職票」が必要です。勤めていた会社が発行する書類で、退職後2週間ほどで郵送などしてもらい、入手します。届かない場合は、退職した会社に問い合わせて発行してもらいましょう。
(2)ハローワークへ離職票を提出し、求職を申し込む
ハローワークへ離職票を提出し求職を申し込みましょう。高年齢求職者給付金の受給期限は1年間ですが、申し込みが遅れてしまうと支給額が減る恐れもあります。離職票を受け取ったらすぐにハローワークへ申し込みましょう。
申し込みに必要な書類・持ち物
申し込みに必要な書類や持ち物は下記のとおりです。必要な提出物をすべて提出することで受給資格や退職理由が確認されます。それにより、支給額や受給期間が決められます。
雇用保険被保険者離職票 | 勤務していた会社から離職後2週間ほどで交付される。自筆の署名と押印が必要 |
マイナンバーカード | マイナンバーカードがない場合、下の①個人番号確認書類および②身元(実在)確認書類が必要 |
①個人番号確認書類 | 通知カードや個人番号が記載されている住民票(住民票記載事項証明書)のうちいずれか1種類 |
②身元(実在)確認書類 | Aのうちいずれか1種類もしくはBのうち異なる2種類 A:運転免許証、官公署発行の写真付き身分証明書・資格証明書 B:公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など |
顔写真 | 縦3cm×横2.4cm、正面・上三分身の直近3カ月以内に撮った写真が必要 |
印鑑 | シャチハタは避ける |
預金通帳 キャッシュカード |
必ず本人名義のものを用意 |
(3)失業の認定が下りるのを待つ
ハローワークに申し込んだ後の7日間を「待期(たいき)期間」といいます。この期間を経て失業の認定が下りるまで待ちます。自己都合で退職した人などは、更に2〜3カ月間の「制限期間」が設けられており、この期間は給付金を受け取れません。
制限期間 | 対象者 |
2カ月となる場合 | 正当な理由がなく自己都合で退職した方 |
3カ月となる場合 | 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された方。また、過去5年間に自己都合の退職が3回以上ある方(令和2年9月30日以前の自己都合の退職を除く)。 |
(4)口座へ給付金が支給される
その後、指定された日にハローワークへ出向きます。そこで、失業の状態であることの認定を受けた場合に、高年齢求職者給付金が一括で支給されます。通常は、失業認定日の5〜7日後に指定した銀行口座へ振り込まれます。
4. 高年齢求職者給付金の受給額の計算方法
ここからは、高年齢求職者給付金の受給額の計算方法を解説します。受給額は退職以前の賃金や雇用保険に加入していた期間によって異なるため、いくらもらえるのかシミュレーションしてみましょう。
高年齢求職者給付金の計算方法
高年齢求職者給付金は、以下の計算方法で算出されます。
基本手当日額×支給日数=受給額
基本手当日額の算出方法
「基本手当日額」は、退職前の賃金日額(①)に給付率(②)を掛けて計算されます。賃金日額は、退職以前の6カ月間の賃金の合計を180で割った金額のこと。給付率は、この賃金日額の50%~80%の範囲で決まります。なお、基本手当日額の下限額は2,295円、上限額は7,065 円と設定されています。
基本手当日額=①賃金日額×②給付率(50%~80%)
賃金日額 | 給付率 |
2,869円以上 5,200円未満 | 80% |
5,200 円以上 12,790 円以下 | 50~80% |
12,790 円超 14,130 円以下 | 50% |
支給日数の算出方法
支給日数は、被保険者であった期間が1年未満か1年以上かで異なります。
被保険者期間が1年未満 | 30日分 |
被保険者期間が1年以上 | 50日分 |
実際の受給額シミュレーション
以下の条件の場合、高年齢求職者給付金の受給額はいくらになるのか実際に計算してみましょう。
【例】
- 離職以前6カ月の賃金の合計が90万円
- 被保険者期間が1年以上
【計算方法】
賃金日額は「離職以前6カ月の賃金の合計÷180」なので「90万円÷180=5,000円」です。
次に給付率は、賃金日額が「2,869 円以上 5,200 円未満は80%」なので80%となります。よって、基本手当日額は「5,000×80%=4,000円」です。被保険者期間は1年以上なので、支給日数は「基本手当日額の50日分」になります。したがって、「4,000円×50日」で「20万円」が一時金として支給されます。
5. 高年齢求職者給付金の申請中の注意点
高年齢求職者給付金の申請をしてから実際に給付金を受け取れるまで、一定の時間がかかります。その間、ルールを守らなければ給付金を不正に受け取ったとして「不正受給」と判断され、ペナルティを科されることがあるので注意しましょう。申請中の主な注意点としては以下のとおりです。
待期期間や失業の認定日に働いてはいけない
待期期間の7日間は、失業状態でなければいけないので、高年齢求職者給付金を受給するためには、働くことはできません。もし、少しでも収入があった場合、待期期間が延長され、高年齢求職者給付金の給付開始が遅れるので注意が必要です。また、失業の認定日は、ハローワークへ足を運び、失業状態にあると認定を受ける必要があります。
就職すると高年齢求職者給付金がもらえなくなる
失業の認定が下りるまでの期間に、新たな雇用先に正社員として就職するのはもちろん、基本的にパートやアルバイトなどの雇用形態でも就職・就労していれば給付金は支給されません。しかし、週当たりの労働時間が20時間未満の場合は、再就職と判断されず、支給を受けられる場合もあります。その場合でも、待期期間と失業の認定日当日に働くのは避けましょう。
収入を正直に申告しないと厳しい罰則も
アルバイトやパート、内職、手伝いなどで得た収入をハローワークに報告しなかった場合、不正受給とみなされる可能性があります。そのような場合、まず「支給停止」によってすべての支給が打ち切られます。更に、「返還命令」によって不正受給した額をすべて返済したうえで、「納付命令」により不正受給額の最高2倍額を支払うことになります。これらの命令を無視すると、延滞金を請求されたり、財産を差し押さえられたり、詐欺罪の対象になったりする可能性が考えられます。
6. 高年齢求職者給付金のよくある質問
最後に、高年齢求職者給付金について、よくある質問に回答していきます。
Q.高年齢求職者給付金をもらったら確定申告は必要?
高年齢求職者給付金は「非課税所得」といって所得税の課税対象となりません。そのため、確定申告を行う必要はありません。
Q.高年齢求職者給付金をもらった後にアルバイトしても良い?
失業の認定日の翌日以降であれば、アルバイトをしても問題ありません。認定日に失業している状態であれば高年齢求職者給付金は支給されるため、もし認定日の翌日に就職したとしても給付金を受け取ることはできます。しかし、前述したように高年齢求職者給付金をもらうまでの7日間の待期期間や認定日当日に働くことは禁止されています。ただし、自己都合で退職した人などは給付制限期間があるため、働かなければ金銭面で困る可能性も考えられます。そのような事態を避けるため、週当たりの労働時間が20時間未満であれば、アルバイトをすることが認められる場合もあります。
Q.高年齢求職者給付金は何回でももらえる?
高年齢求職者給付金は受給する回数や年齢に上限はありません。そのため、65歳以上で受給要件を満たせば、何度でももらうことが可能です。ただし、前回の受給から一定期間が経過していること、再度離職していることなど規定の条件を満たす必要があります。詳細条件については、ハローワークや関連機関で確認しましょう。
Q.高年齢求職者給付金の受給期限は?
高年齢求職者給付金の受給期限は、離職の日の翌日から1年間となります。申請が遅れると受給額の満額を受け取れないこともあるため、離職したらなるべく早く手続きしましょう。
Q.同じ会社に再就職する場合、高年齢求職者給付金を受け取れる?
7日間の待期期間を経て失業認定を受けた後、以前勤めていた会社と同じ会社に再就職する場合、原則としては高年齢求職者給付金を受け取ることができます。ただし、同じ事業所で離職・就職を繰り返し、再びその事業所に就職したり、次の就職先が決まっていたりなど、条件によっては受給できない可能性があります。
Q.高年齢求職者給付金と年金の両方を受給できる?
高年齢求職者給付金と年金の両方を受け取ることは可能です。その場合でも、年金は減額されません。
Q.高年齢求職者給付金の上限額は?
離職時の年齢が65歳以上の場合、賃金日額で14,130円、基本手当日額で7,065円が上限です。
7. キャリアアドバイザーからのアドバイス
高年齢求職者給付金は、65歳以上の求職者を対象にした失業保険であり、再就職を支援するために支給されます。このため就労を希望しない人、短時間労働の仕事のみ希望している人、自営業を始める人などは、支給対象にならないので注意が必要です。 受給期限は、給付制限を含めた離職日の翌日から1年です。のんびり手続きすればいいと考えていると受給できなくなることがあるため、早めに手続きをしてください。給付金を有効に活用して、新たな仕事にチャレンジしてみましょう。
取材協力・監修
あすか社会保険労務士法人
特定社会保険労務士 大東 恵子(おおひがしけいこ)氏
https://www.all-smiles.jp/