バイトの採用が決まったら労働条件を確認!トラブルを防ぐポイント | マイナビバイトTIMES
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    バイトの採用が決まったら労働条件を確認!トラブルを防ぐポイント

バイトの採用が決まったら、労働条件を書面で確認するようにしましょう。賃金や休日の日数などの労働条件の確認を怠ると、認識の違いから思わぬトラブルに発展する可能性があります。この記事では、入社前に労働条件を確認すべき理由や注意すべきポイント、入社前のよくある質問について解説します。


1.トラブル回避のために労働条件を確認

バイト 労働条件 確認

バイトの採用が決まったら、労働条件を念入りに確認しておきましょう。労働条件とは、時給や労働時間、休日の日数などの働くうえでの条件のことです。これらの条件の認識に違いがあると、「思っていたよりも時給が安かった」「想像以上にシフトに入らなくてはいけなくなった」といったトラブルになりかねません。 こうしたトラブルを避け、お互いに気持ちよく働くためにも、労働条件を適切な方法で確認しておくことが大切です。

労働条件について「最低限確認しておきたい5項目」はこちら!


2.労働条件の確認方法

バイト 労働条件 確認方法

それでは、労働条件を確認するにはどうすれば良いのでしょうか。労働条件を確認するときに重要なのは、口頭ではなく、書面上で確認すること。口頭で確認すると手元に証拠が残らないため、のちに「言った」「言わない」のトラブルが起きる可能性があります。

労働条件通知書 or 雇用契約書を見せてもらう

労働条件を確認する際には、「労働条件通知書」もしくは「雇用契約書」を交付してもらいましょう。

「労働条件通知書」には、労働契約の期間をはじめ、労働する場所、業務内容、労働時間、有給、休日、休憩時間などを記載することが、正社員、アルバイトなどの雇用形態に関わらず法令で定められています。 一方で、「雇用契約書」の記載内容は法令では定められていませんが、労働条件通知書を兼ねることも多く、その場合は労働条件通知書と同じ内容が記載されることになります。 つまり、上記いずれかの書類を見せてもらうことで、主要な労働条件を把握できるのです。

なお、労働条件通知書と雇用契約書は、交付のタイミングも異なります。労働条件通知書は、雇用契約の締結時に交付されることが義務付けられています。一方で、雇用契約書は、雇い入れよりも前に締結するのが一般的です。具体的には「内定を出した後に入社手続きを行うとき」または、「実際に入社するとき」を目安に渡されるケースが多くなっています。 ただし、雇い入れの前に雇用契約書を締結する場合は、労働条件通知書も同じタイミングで交付されなければいけません。

労働条件通知書について

労働条件通知書は、雇用契約を結ぶときに、事業主(雇用主)側から労働者に通知する義務のある事項が記載されている書類です。労働条件通知書の発行は法律で定められた義務であり、記載する項目の内容も、労働基準法および同法施行規則によって厳格に定められています。 なお、労働条件通知書は、雇用主(事業主)側が労働者に向けて交付するものであるため、労働者側の記名・捺印等は必要ありません。

雇用契約書について

雇用契約書は、雇用主と労働者の間で交わされる契約内容を明らかにするための書類です。雇用契約書は、労働条件通知書のように交付の義務はなく、記載内容についての規定もありません。 なお、雇用契約書は、雇用主と労働者の間で交わされる「契約」であるため、労働者側の記名・捺印も必要になります。

採用時に労働条件が書面で明示されなかった場合

労働条件通知書は労働契約の締結時に、雇用契約書は雇い入れの際に発行されることになっています。労働条件通知書の発行は、労働基準法によって定められた義務であるため、書面で明示されなかった場合は、書類を発行してもらえるよう依頼してみましょう。 以下は、依頼メールの例文です。

【件名】
アルバイトの労働条件について(氏名)

【本文】
株式会社 ○○ 〇〇店 店長XX様
お世話になっております。
先日、面接していただいた〇〇と申します。

このたびは内定をいただき、誠にありがとうございました。
貴社で働かせていただけますことを、大変うれしく思っております。

お忙しいところ恐れ入りますが、 労働条件通知書もしくは雇用契約書を送っていただくことは可能でしょうか。
就労後に、条件に関してご迷惑をおかけしないよう、 事前に確認させていただけますと幸いです。
ご確認のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

―――――――――――――
〇〇 〇〇(氏名)
電話番号:090-0000-0000
メールアドレス:000000@0000.jp
―――――――――――――


3.書面には明示されるべき記載項目がある

バイト 書面 記載項目

先ほどお伝えしたように、雇用契約書は労働条件通知書を兼ねることができます。ただし、労働条件通知書は法令に基づいて作成しなければいけないため、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合は、法令によって定められた項目を記載する必要があります。

労働条件通知書に記載される項目は、主に2つあります。1つ目は必ず記載しなければいけない「絶対的明示事項」。これに対し、記載しても記載しなくてもどちらでも良いのが「相対的明示事項」です。ただし、会社が制度として定めている場合には「相対的明示事項」も記載しなければいけません。

<絶対的明示事項>

絶対的明示事項とは、雇用契約や就業規則に必ず記載しなければいけない事項のことで、5つの項目に分かれています。それぞれの具体的な内容について、以下で解説していきます。

1. 労働契約の期間

労働契約の期間には、契約が有期・無期なのかどうか、有期の場合は契約期間の満了時期がいつなのか、契約の更新はどのように行われるのか、といった内容が記載されます。

2. 就業の場所、従事する業務の内容

就業の場所

実際に労働者が就業する場所なので、会社や配属先の事業所の名称、住所などが記載されます。将来的に転勤や異動の可能性がある場合、その旨も明記されます。

従事する業務の内容

入社後に配属が予定されている業務内容が記載され、複数の業務に携わる場合は、2項目以上が書かれていることもあります。また、今後の業務内容が変わる可能性がある場合、その内容も明示されます。 2024年4月1日以降からルールが改正され、「就業の場所」「従事する業務の変更の範囲」の明示が必須となりました。これにより、入社後に想定していなかった就業場所へ配属されたり、業務を与えられたりすることは避けられるでしょう。ただし、2024年4月1日以降に締結される労働契約からルールが適用されるため、2024年3月31日以前に労働契約を締結する場合は、明示されていない可能性があります。書面を確認する際は注意しましょう。

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項

始業・終業時刻

労働者の始業・終業時刻が指定されている場合は、その時間が明示されます。変形労働時間制やフレックスタイム制などの制度を採用している場合、それに関する詳細も記載されます。

所定労働時間を超える労働の有無

雇用主によって、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を引いた「所定労働時間」が定められています。その所定労働時間を超えて労働する可能性があるかどうか、簡単に言うと、残業の有無について記載があります。なお、所定労働時間を超える労働がある場合は、割増賃金率などについても明記されます。

休憩時間

勤務先の所定労働時間に応じて休憩時間が決まります。労働基準法によって、労働者は、1 日の労働時間が 6 時間以上の場合は 45 分以上、8 時間を超える場合には 1 時間以上の休憩時間を勤務の途中で取ることができます。

休日

年間休日数や週の休日数、祝日の扱いなどについて記載されています。曜日が固定されている場合もあれば、固定されていない「シフト制」の休日もあります。

休暇

年次有給休暇の日数、育児・介護休暇の有無のほか、年末年始休暇や夏季休暇など会社が任意に与える休暇も含まれます。

交替制勤務をさせる場合、就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)

工場や警察、病院、コンビニなど24時間稼働している仕事や、24時間ではなくとも長時間営業の勤務先などでは、時間帯を区切って従業員を交代で勤務させる「交代制勤務(シフト制)」を取り入れています。その場合、日勤・夜勤などの交代の仕方や、勤務時間などが記載されます。

4. 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項

賃金の決定・計算・支払方法

時間給制・日給制・月給制・出来高払制などの賃金の決定方法があり、それぞれの基本給や計算方法が明示されます。この項目で記載される賃金とは、基本的に月ごとに定期的に支払われる賃金のことです。賞与などの臨時で支払われる賃金は、相対的必要記載事項に該当するため、ここには書かれません。

賃金の締め切り・支払い時期

賃金は、「毎月 25 日締め」など月 1 回以上、一定の期日を定めて計算されます。支払い時期も一定の時期が決められており、月払い・週払い・日払いなどがあります。振り込み日は土日・祝日を除いた平日で設定されることも多いです。

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

退職に関する事項としては、定年制度や再雇用制度の有無、退職する際に必要な手続き方法などが記載されます。また、パートタイム労働者(アルバイト)に対しては、これらに加え、以下の4つの事項についても明示しなくてはならないと定められています。 なお、パートタイム労働者とアルバイトの法的な違いはなく、パートタイム労働法では「1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。すなわち、パートもアルバイトもいずれも「パートタイム労働者」と言えます。

<パートタイム労働者に対しての4つの明示事項>

昇給の有無

昇給とは、契約期間内で賃金が増えることを指します。賃金の増額があるかないかを、はっきり明示しなければいけません。

退職手当の有無

退職手当とは、退職時に給与とは別に支払われるお金のことです。退職手当が支払われるどうかについても記載する必要があります。

賞与の有無

賞与とは、給与とは別に臨時で支払われる賃金ことです。賞与は「ボーナス」と呼ばれることもあります。

相談窓口の担当者の部署、役職、氏名

相談窓口とは、バイトをはじめとしたパートタイム労働者の雇用管理の改善などに関する事項に関わる相談窓口です。明示すべき具体的な事項としては、担当者の部署や役職、氏名などが挙げられます。

<相対的明示事項>

相対的明示事項とは、会社が制度として定めている場合に記載しなければいけない項目のことです。多くの会社では就業規則に定められている項目のため、書面上に記載があるか、確認しておきましょう。

1. 昇給に関する事項

昇給に関する事項には、「昇給時期」「昇給率」「昇給の判断基準」などを記載します。

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項

退職金規定のように、退職した場合にいくら支給するか定めてある場合に記載します。

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

賃金とは別に、臨時に支払われる賃金がある場合に記載します。退職手当を除く各種手当や、賞与が該当します。

4. 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項

労働者の食費や各自の作業用品をはじめとした、労働者が負担するお金がある場合に記載します。

5. 安全・衛生に関する事項

安全・衛生に関する規定があれば、記載します。

6. 職業訓練に関する事項

新入社員研修や管理者研修をはじめとした、研修についての規定があれば記載します。

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

労災や傷病手当金など、法律で規定されているもの以外に補償を行う場合の事項について記載します。

8. 表彰、制裁に関する事項

長期勤続を表彰したり、一定の条件に抵触した際に減給したりすることがある場合は記載します。

9. 休職に関する事項

休職に関して、会社独自のルールとして全社員に適用したい事柄がある場合は記載します。


4.最低限確認しておきたい5項目

バイト 書面 確認 5項目

労働条件を書面上で確認することは大切ですが、項目があまりに多く、何をチェックすれば良いかわからない人もいるかもしれません。厚生労働省のホームページの情報をもとに、最低限確認しておきたい5項目を解説していきます。

アルバイトをする期間

アルバイトをする期間は「契約期間」に当たります。自分が想定していた期間よりも長かったり、短かったりしないかをよく確認してください。契約期間が無期なのか有期なのかも大事なポイントです。 また、トラブルになりやすいのが「入社日」です。新しいバイト先からの入社日の要望が自身にとってあまり好ましい日程ではない場合は、理由を説明して断り、スケジュールを交渉しましょう。特に、在籍中の職場があり副業が難しい状態で、新しいアルバイト先への転職が決まった場合は、双方の職場で退職日と入社日の調整が必要になります。2つの職場の就業期間が重なると、さまざま問題が発生しやすいため、注意が必要です。

仕事の内容や働く場所

仕事の内容や働く場所は、絶対的明示事項の「就業の場所・従事する業務の内容」として書かれています。しかし、なかには勤務先の都合で、入社後の実際の仕事内容や働く場所に変更があり、労働条件が悪くなるケースもあります。例えば、勤務店舗が変更になると、自宅や学校から通いづらくなる、希望の店舗に配属されずモチベーションが下がるというような、働く側へのデメリットが発生する場合もあります。 2024年4月からは改正ルールによって、いずれも変更の可能性がある場合は書面に明記されることになりましたが、事前に確認しておくことが大切です。

働く時間や休日

働く時間に関して注意すべきは、残業時間です。労働条件通知書に記載が義務付けられているのは「残業の有無」のみのため、残業時間の目安については事前に確認しておきましょう。 休日に関してチェックしておきたいのは、「週休2日制」と「完全週休2日制」の違いです。週休2日制は「2日休める週が月に1回以上ある」という意味なのに対し、完全週休2日制は「週に2日の休みを取ることが約束される」という意味なので、間違えないように注意してください。

時給

時給の金額はもちろん、歩合や手当、インセンティブなど、基本給とは別に支払われるお金についても確認しておきましょう。アルバイトの場合は、手当てが満額支給されない場合もあるためです。また、賞与の有無について説明はあっても、支給条件の記載がない場合は確認しておくと、のちのトラブルが防ぎやすくなります。

退職時のルール

雇用主の都合で、一方的に職場を辞めさせることを「解雇」と呼びます。雇用主が労働者を解雇する場合は、原則として30日前に通知しなければいけません。もしも、事前に予告せずに解雇する場合は、労働者に30日以上の平均給与(解雇予告手当)を支払う義務があります。例えば、解雇する20日前に通知した場合は、10日分の平均給与を支払う必要があります。ただし、日雇いの人、2カ月以内の期間を決めて雇用される人、季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される人、試用期間中の人(14日以内)は、解雇予告手当の対象外になります。 労働者側が自己都合で退職する場合は、退職の申入れをして2週間経てば辞めることができると法律で定められています。ただし、人員の補充や業務の引き継ぎの観点から「30日前までの届出」などを就業規則で定めているところもあるため、申請のタイミングを確認しておきましょう。

参考:確かめよう アルバイトの労働条件|厚生労働省


5.よくある質問

バイト 書面 よくある質問

有給は基本的にいつでも使えますが、バイト先への配慮も大切です。ここでは、有給を取るときに知っておきたいポイントを紹介します。

Q1. 労働条件通知書と雇用契約書の違いについて教えてください。

A. 労働条件通知書と雇用契約書の主な違いは、法的な義務の有無」と「労働者による記名・捺印の有無」です。労働条件通知書は、発行の義務と記載する内容が法令で定められているのに対し、雇用契約書は発行する義務はなく、記載する内容も法令で規定されていません。また、労働条件通知書は、雇用主が労働者に一方的に通達するため、労働者による記名・捺印が必要ありませんが、雇用契約書は両者の「契約」であるため、労働者による記名・捺印も必要になります。

Q2. 雇用契約書が発行されない場合は、どうすれば良いですか?

A. 雇用契約書の発行は法律で義務付けられていないため、企業によっては発行していないケースもあります。ただし、企業は労働条件通知書を発行する義務があるため、雇用契約書がないと言われた場合は、労働条件通知書を交付してもらうようにしてください。

Q3. 労働条件通知書や雇用契約書をなくしてしまいました。どうすれば良いでしょうか?

A.  内定通知書に雇用条件が記載されているケースがあるため、確認してみましょう。記載がない場合は、企業に正直に打ち明けて再発行してもらうことも選択肢の一つです。

Q4. 雇用契約書と就業規則の内容が異なる部分があります。どちらのほうが強い効力を発揮しますか?

A. 労働契約法12条では「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」となっており、労働者に有利な内容が優先されます。雇用契約書と就業規則の内容が異なり、就業規則が有利であれば、就業規則の条件が採用されます。一方、雇用契約書が有利であれば、雇用契約書の内容が優先されます。気になる場合は全国の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働相談コーナー」などに相談してみましょう。


6.まとめ

労働条件を書面で確認することは、自身と雇用主の間で認識の齟齬がないか確かめる上で重要な作業です。確認を怠ったことでトラブルが生じると、働くのを楽しみに入社したアルバイト先での勤務が難しくなってしまうかもしれません。そうならないためにも、事前に不明点をクリアにし、お互いに快く働けるといいですね。


監修者

有限会社キャリアドメイン 
代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
谷所 健一郎(やどころ けんいちろう)氏
https://www.careerdomain.net/


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