目次
- アルバイトの給料は手渡しでも違法ではない?
- アルバイトの給料を手渡しで受け取るメリット
- 必要なときにお金がすぐに手に入る
- お金を引き出すときに手数料がかからない
- アルバイトを頑張った達成感が得られる
- アルバイトの給料を手渡しで受け取るデメリット
- 現金を持ち歩くため、紛失や盗難のリスクがある
- お金の使いすぎにつながる可能性も
- 銀行に入金する手間がかかる
- アルバイトの給料を手渡しで受け取る場合の注意点
- 手渡しされた現金を紛失しないように注意する
- 源泉徴収がされているか確認する
- 確定申告が必要となるケースも
- 給料を受け取ったら正確に記録する
- アルバイトで給料を手渡しで受け取るときのよくあるトラブル
- アルバイトの手渡しの給料が支払われなかったときの対処法
- 受け取った金額が本来支払われる金額と異なったときの対処法
- 給料明細書が発行されず、給料だけが支払われるときの対処法
- 監修者からのアドバイス(まとめ)
アルバイトを探しているとき、「給料手渡しOK」の募集を見かけたことはありませんか?一般的に、アルバイトの給料は銀行の振り込みで支給されることが多いのですが、中には手渡しで給料が支払われる場合もあります。しかし、給料を手渡しでもらうときには注意が必要なケースも。
この記事では、給料の手渡しのメリット、デメリット、注意点やトラブルになったときの対処法について解説します。
アルバイトの給料は手渡しでも違法ではない?
アルバイトの給料の手渡しは、違法ではありません。
企業が給料を手渡しで支払う理由には、銀行振込の手間や手数料のコストを削減したい、といった目的があります。銀行振込を選択した場合、口座情報の管理などで手間がかかりますし、小規模な企業では、振込のたびに銀行まで行くことがあるためです。
また、短期間の雇用や日雇いなどのアルバイトは、従業員の情報がすぐに変更になるため、銀行振込ではなく現金で渡すことがほとんどです。また、中には手渡しで直接給料を渡すことでコミュニケーションが生まれ、従業員と信頼関係を構築できるという考えから、給料を手渡しで行う企業もあります。
アルバイトの給料を手渡しで受け取るメリット
アルバイトの給料を手渡しで受け取ると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。
必要なときにお金がすぐに手に入る
一般的なアルバイトは働いた月の翌月に給料が振り込まれます。一方で、単発や短期バイトをはじめとした給料が手渡しされるバイトでは、給料日を待たずに即日お金を受け取れるケースが多くあります。お金がすぐに必要な人にとっては大きなメリットとなるでしょう。
お金を引き出すときに手数料がかからない
振り込まれた給料を現金で手元に置いておきたい場合は、銀行口座から引き出す手間、場合によってはATMの利用手数料もかかります。最初から給料を現金で受け取れることができれば、そうした手間や手数料の節約につながります。
アルバイトを頑張った達成感が得られる
給料が振り込まれた場合は通帳上の数字が変化するだけで、お金を得た実感が得にくいもの。一方で給料を手渡しされると、実際に現金を手にすることができるため、働いた実感や達成感を得やすくなります。「また来月も頑張ろう」などと、仕事へのモチベーションにもつながる可能性もあります。
アルバイトの給料を手渡しで受け取るデメリット
アルバイトの給料の手渡しには数多くのメリットもありますが、その一方でデメリットも存在します。以下では、3つのデメリットについて解説します。
現金を持ち歩くため、紛失や盗難のリスクがある
アルバイトの給料を手渡しで受け取ると現金を持ち歩くことになるため、移動中に現金を紛失したり、盗難に遭ったりする危険性があります。移動中は現金の取り扱いに十分に注意し、可能であれば、「休憩時間などに家に現金を置きに行く」「銀行口座に入金する」などの対策を取ってリスクを軽減すると良いでしょう。
お金の使いすぎにつながる可能性も
アルバイトの給料を現金で受け取ると、お金が手元にある安心感から浪費してしまうおそれがあります。特に給料日直後は「使っても大丈夫」という心理が働きやすくなる可能性もあるため、「1カ月あたりに使って良い金額を決めておく」「一定のお金を貯金する」など、お金を使いすぎてのちのち困らないように工夫することが大切です。
銀行に入金する手間がかかる
多くの人は現金を銀行口座に入金して管理しています。給料を現金で受け取ると、銀行への入金作業を自分で行う必要があるので、給料日のたびにATMで振込作業をしなければならず、銀行に行く手間や時間がかかります。
アルバイトの給料を手渡しで受け取る場合の注意点
アルバイトの給料を手渡しで受け取ることには、メリットとデメリットの両方があります。そのため、良し悪しは一概には言えませんが、勤務先によっては給料の手渡し以外に選択肢がない場合もあるでしょう。
そこで以下では、アルバイトの給料を手渡しで受け取る場合の注意点についてお伝えしていきます。
手渡しされた現金を紛失しないように注意する
給料を手渡しで受け取ると、紛失してしまうリスクがあります。そうした事態を未然に防ぐために細心の注意を払うことが大切です。
給料を受け取るときの注意点
具体的には、まず給料を受け取るときに、雇用主から手渡された金額が給料明細書の金額と合っているかどうかをしっかりと確認しましょう。
そのうえで、受け取った給料はすぐにバッグの内ポケットや、普段から貴重品を入れると決めている定位置にしまいます。移動中に盗難に遭う危険性もあるため、人目につきやすい場所や不用意な場所に置くことは避け、周囲の状況に注意を払うことも大切です。
給料を受け取った後の注意点
可能であれば、受け取った給料はできるだけ早く銀行口座に入金するようにしましょう。銀行口座に預けてしまえば、紛失のリスクは少なくなり、その後の管理も楽になります。
万が一、給料を紛失してしまったことに気づいた場合は、最寄りの警察署と勤務先の会社に速やかに連絡を取りましょう。
源泉徴収がされているか確認する
源泉徴収とは、給料を支払う事業者が、従業員に支払う前に所得税や復興特別所得税をあらかじめ差し引いて国に納付する制度です。所得税法第183条によれば、給与を支払う事業者は、原則として給与から所得税を源泉徴収し、国に納付する義務があると定められています。
アルバイトに支払われる給料もこの「給与」に含まれるため、給料を手渡しで受け取る場合も源泉徴収がされているかを確認する必要があります。源泉徴収がされているかは、給料明細を参照すれば確認できます。もしも給料明細も発行されない場合は、「源泉徴収はされていますか?」などと担当者に口頭で確認するようにしましょう。
確定申告が必要となるケースも
事業者側で源泉徴収がされておらず、年収が160万円※を超えた場合は確定申告が必要になります。また、年収が160万円以下でも、アルバイトの他に副業をしていて、その副業の所得が20万円を超えている場合は、アルバイトの年収や源泉徴収の有無に関わらず確定申告が必要です。
適切な申告を行わないと、のちに追徴課税や罰則の対象となる可能性があります。自分が確定申告をすべきかどうか分からない場合は、税務署や税理士に相談すると安心です。
※2025年の税制改正により、所得税の課税最低限が年収103万円から160万円に引き上げられました
給料を受け取ったら正確に記録する
手渡しで給料を受け取るという方法は、銀行振込のように自動的に記録が残るわけではありません。そのため、受け取る側が自ら積極的に記録を残し、注意深く管理することが必要です。
給料を受け取った際には、その正確な日付と金額を、手帳やノート、あるいはスマートフォンの記録アプリなどに必ず記録する習慣をつけましょう。こうした対策を行うことで、給料明細書と照らし合わせるときや、万が一のトラブル発生時に重要な証拠となります。
アルバイトで給料を手渡しで受け取るときのよくあるトラブル
アルバイトで給料を手渡しで受け取ると記録が残らないことなどから、のちにトラブルに発展することがあります。具体的なトラブル事例を知り、もしものときに備えておきましょう。
アルバイトの手渡しの給料が支払われなかったときの対処法
アルバイトの手渡しの給料が支払われなかった場合は、以下の流れで対処しましょう。
正確な記録を残す
通帳に記帳される情報などがないことから、まずは正確な記録を残すことが大切です。いつから、いくらの給料が支払われていないのかを明確にし、過去の給料明細や出勤記録など、関連書類を丁寧に集めましょう。もし口頭契約のみの場合でも、働いた日数や時間、時給などを詳細に記録することが重要です。
給料が支払われていない理由を確認する
次に、雇用主や担当者へ連絡を取り、給料が支払われていない理由を確認します。直接話すことが難しければ、電話、メールなど、状況に応じた手段を選び、「当月分の給料が未払いですが、いつ頃お支払いいただけますでしょうか」といったように、感情的にならず、具体的に問いかけることが大切です。
この際のやりとりは、日時、担当者名、内容を詳細に記録しておきましょう。メールで連絡する場合は、きちんと内容を保存しておきます。これらの記録は、その後の交渉や法的手続きを検討するうえで、重要な証拠となります。
働いた事実や給料の額を示す証拠を集める
未払い分の給料明細、出勤記録、雇用契約書、業務に関する記録など、働いた事実や給料の額を示す証拠を、可能な限り集めて保管します。雇用主に連絡しても誠意ある対応が見られない場合は、「内容証明郵便」による未払い給料の請求を検討しましょう。これは法的な証拠力を持つため、有効な手段だと言えます。
状況が改善しない場合は、労働基準監督署に相談する
それでも状況が改善しない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。これまでの経緯と集めた証拠を持参することで、適切なアドバイスや会社の指導・是正勧告をしてもらえる可能性もあります。
他にも弁護士に相談する方法などがありますが、手間や費用がかかるため、それ以前にできることをすべて試したうえでの最終手段として考えましょう。
受け取った金額が本来支払われる金額と異なったときの対処法
手渡しで給料をもらう場合、受け取った金額が本来支払われる金額と異なるというトラブルもあります。受け取るだけで中身を確認せずにいると、後日「支払った」「もらっていない」と双方の言い分が食い違うことにもなりかねません。こうした事態を避けるために、以下の対処法が考えられます。
受け取ったその場で給料の金額を確認する
給料を受け取ったその場で金額を確認することが重要です。その場で「金額を確認させていただいてもよろしいでしょうか」と遠慮せずに申し出て、一緒に中身を確認してもらいます。もし雇用主の勘違いや計算ミスであれば、その場で不足額を支払ってもらうように交渉しましょう。
もし、仕事中などでその場での確認が難しく、帰宅後や後日になって金額が違うことに気づいた場合は、できるだけ早く給料の支払い担当者に連絡を取りましょう。 電話、メール、または直接会って、給料明細書の金額と実際に受け取った金額が異なる旨を具体的に伝え、確認を求めてください。
担当者に金額が異なる原因を明らかにしてもらう
担当者に確認してもらったときは、なぜ金額が異なるのか、その原因を明らかにしてもらうようにしましょう。単なる計算ミスなのか、何らかの手違いがあったのか、あるいは意図的なものなのかによって、今後の対応が変わってきます。このとき、曖昧な説明ではなく、納得のいくまで詳細な説明を求めることが大切です。話し合いがうまくいかない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談してください。
給料明細書が発行されず、給料だけが支払われるときの対処法
給料を手渡しで受け取る場合、お金はもらえても給料明細書が発行されないケースや、給料明細書に詳しい内訳が明記されていないケースもあります。その場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
雇用主に対して給料明細書の発行を要求する
所得税法において、雇用主は労働者に対して賃金の支払明細書を交付することが義務付けられています。給料明細書が交付されていない場合は、雇用主に対してその発行を強く要求してください。 単に総支給額だけでなく、基本給、各種手当、残業代、そして社会保険料や税金などの控除額といった内訳が詳細に記載された給料明細書の交付を求めることが重要です。
給料明細書はもしものときの有力な証拠になる
給料明細書は、雇用主が実際に支払った金額、そして労働者が受け取ったはずの金額を証明する極めて重要な書類となります。万が一、支払われるべき金額と実際に支払われた金額の間に誤差があった場合も、この給料明細書が有力な証拠になります。
もし給料明細書の交付に応じてもらえなかったらどうする?
もし、給料明細書の交付を雇用主に要求しても、正当な理由もなくそれに応じてもらえない場合、その雇用主は法令を遵守する意識が低い、あるいは給料管理体制に問題がある可能性があるため、アルバイトを続けるべきかどうか検討してみてもいいかもしれません。
監修者からのアドバイス(まとめ)
手渡し給料を受け取るという方法は、決して時代遅れな慣習などではなく、むしろ現金を直接手にする温かみを通して、日々の仕事への頑張りが目に見えるといったメリットがあります。お金を直接受け取る感覚は、自身の労働が具体的な価値を生み出した証になり、更なるモチベーションややりがいへとつながります。
手渡しというアナログな方法だからこそ感じられる温かさを大切にしながら、受け取ったお金をしっかりと管理することで、より充実した毎日を送ることができるでしょう。
監修者
有限会社キャリアドメイン
代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
谷所 健一郎(やどころ けんいちろう)
東京大学教育学部付属高校在学中にニューヨーク州立高校へ留学、武蔵大学経済学部卒業。大学卒業後株式会社ヤナセに入社し、大型雪上車の営業職として日本全国のスキー場を飛び回る。30歳で株式会社ソシエワールドへ転職し、その後一貫して人事に携わり、株式会社綱八人事部長を経て2005年に独立。1万人以上の面接経験から、就職・転職・人事・婚活に関する書籍を多く執筆し、セミナー・講演・求職者支援の他、企業向け人事コンサルティングを行う。