この記事の要約
- 医療・介護・保育業界は感謝されることが好きで、誰かの役に立ちたい、笑顔が見たいと思う人が向いている
- 職種は多岐にわたり、それぞれの仕事内容は専門性が高く、資格を取得する必要がある場合もある
- 利用者の生活や成長をサポートすることで「人の役に立っている」ことがダイレクトに感じることができる
- 人々に必要とされ続ける職業であり、安定した業界
人の生命に関わる医療・介護や、子どもの安全を守る保育。人の役に立っていることを実感しやすい仕事であり、正社員になるか悩んでいる人も多いのではないでしょうか? この記事では、医療・介護・保育関連に向いている人の特徴や、仕事内容、アルバイトとの違いなど、正社員の仕事についての基本的な情報を解説します。
1.医療・介護・保育関連の正社員に向いている人の特徴
正社員として働くうえで、仕事の特性と自身の性格や得意なことが合っていると、前向きに働きやすくなるでしょう。そんな医療・介護・保育関連にはどのような人が向いているのか、その特徴を紹介します。
『感謝されること』が好き
医療職や介護職は、「健康を管理する」「高齢者・被介護者の介助をする」など人を助けることが主な仕事です。元気になった患者さんが笑顔を見せてくれたり、「ありがとう」と感謝を伝えてくれたりすることにやりがいを感じられる人は、この仕事に向いていると言えるでしょう。また、保育職は子どもの安全を守ることはもちろん、保護者の生活を助ける仕事でもあります。人が生き生きと働く姿を応援できる人もまた、この仕事に適しています。
誰かの役に立ちたい
「誰かの役に立ちたい」と思い、相手の気持ちに寄り添い細やかな気配りができる人は、医療・介護・保育関連の仕事に向いています。人の生命を預かる仕事であることから、ミスをしないよう、真剣に取り組む責任感も求められます。「人の人生を応援したい」「より良い明日を生きてほしい」という他者を思いやる気持ちが強い人ほど、熱意を持って仕事に向き合っていけるでしょう。
誰かの笑顔が見たい
重い病気の患者や要介護者の中には、治療によって、これまでできなかったことができるようになり、意欲が増して元気を取り戻す人も少なくありません。このように、人が笑顔になる瞬間や自立する姿に共感し、仕事へのやりがいを感じられる人にとって、医療・介護・保育関連の仕事はぴったりです。また、子どもが好きで保育士を目指す人は、弾けるような子どもの笑顔を見るだけでやりがいを感じられ、仕事へのモチベーションもアップするでしょう。
2.医療・介護・保育関連の職種と仕事内容
医療・介護・保育関連にはさまざまな職種があり、それぞれ仕事内容が異なります。ここでは、「医療専門職」「看護師・准看護師」「薬剤師・登録販売者」「保育士」「ヘルパー・介護」の5つの職種を取り上げ、その仕事内容について解説します。
医療専門職の仕事内容
医療専門職とは、医師や歯科医師、看護師、助産師、歯科衛生士、医療事務、理学療法士、臨床検査技師など、患者を治療したり、サポートしたりする職業を総称する言葉です。患者と接する職業以外に、医療技術の開発をするような研究医もまた医療専門職に含まれます。
いずれの職業も専門性が高く、資格を取得するには国家試験に合格しなければなりません。医療専門職は社会貢献度が高く、比較的安定した待遇で長期的に働くことが可能です。担当した患者がケガや病気を克服した時は、大きな達成感や充実感を覚えることでしょう。
看護師・准看護師の仕事内容
医師の診療補助や、体温や血圧の測定、手術の補助、カルテの作成、患者の心のケアなどを行うことが、看護師・准看護師の主な仕事内容です。
看護師が、患者の状態を確認し自らの判断で処置をするのに対して、准看護師は看護師や医師の指示のもと業務を行います。また、准看護師は、他の看護師への指示や、看護計画の立案などは行うことができません。
看護師になるには国家資格、准看護師になるには各都道府県知事が発行する免許を取得する必要があります。勤務先は配属によって異なり、病院やクリニックのような医療機関以外にも、有料老人ホームなどの福祉施設で働く看護師・准看護師もいます。
薬剤師・登録販売者の仕事内容
薬剤師も登録販売者も、医薬品の専門的な知識を持つスペシャリストです。
・薬剤師
薬剤師の主な仕事内容は、薬局や病院、介護施設などで調剤や服薬指導をしたり、薬歴管理をしたりすること。また、企業で医薬品の開発や流通に携わったり、行政機関で薬事衛生に関する業務に携わったりする薬剤師もいます。薬剤師になるには国家試験に合格して免許を取得する必要があり、この試験を受験するには、大学で6年制の薬剤師養成課程を修了する必要があります。
・登録販売者
登録販売者が薬剤師と異なる点には、取り扱うことのできる医薬品の種類や資格試験の違いが挙げられます。従来、風邪薬や鎮痛剤などの一般医薬品(第2類・第3類)は薬剤師しか販売できませんでしたが、登録販売者がいれば、ドラッグストアやスーパーなどでもそれらの医薬品を購入することができるようになりました。ただし、第1類の一般医薬品販売は薬剤師のみ可能です。登録販売者になるには、各都道府県で年1回行われる「登録販売者試験」に合格する必要があり、実務経験や学歴を問わず誰でも受験できます。
保育士の仕事内容
保育士の主な仕事内容は、乳児から小学校就学までの子どもを預かり、保育・教育を行うこと。食事や衣類の着脱など、子どもが基本的な生活習慣を身につけられるようにサポートするほか、行事やイベントの企画をしたり、子どもの体調や様子を連絡帳などで保護者に知らせたりすることも保育士の大事な仕事です。
保育士になるには厚生労働省が発行する国家資格を取得する必要があり、試験に合格した後は、保育士登録手続きをして保育士証を取得する手続きも必要です。保育士は、保育所のほか、児童養護施設や知的障害児施設、盲ろうあ児施設、重症心身障害児施設、母子生活支援施設、児童厚生施設などで働くことができます。
ヘルパー・介護の仕事内容
介護福祉士やホームヘルパー(訪問介護員)、生活介護の主な仕事内容は、日常生活に支障がある高齢者や障害者・障害児の生活支援を行うことです。
・介護福祉士
介護福祉士は、介護関連の仕事の中で唯一の国家資格であり、取得することで高度な専門知識と技術を有していることの証明になります。勤務先は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、身体障害者療護施設、グループホーム、訪問介護事業所、医療機関など多岐にわたります。
・ホームヘルパー
ホームヘルパーは在宅介護のスペシャリストであり、サービス利用者の自宅を訪問し、食事や排せつ、入浴、家事などの介助を行います。また、通院の付き添いをしたり、利用者の家族に対して介護に関するアドバイスを行ったりすることもあります。ホームヘルパーは「介護保険法」や「障害者総合支援法」に基づいて介護サービスを提供しているため、介護福祉士等の資格保有者や、規定の研修を修了した人しか従事できません。
・生活介護、支援
生活介護・支援は、障害者福祉施設などで障がいのある方の身の回りのお世話をする仕事です。具体的には食事・入浴・排泄などの介護、洗濯、掃除など幅広く行います。生活介護・支援に特別な資格は必要なく、未経験者も働くことができ、日中に業務時間が限られているため、ほとんど残業がありません。

3.医療・介護・保育関連の正社員とアルバイトの違い
正社員とアルバイトの雇用形態の違いは勤務形態や給与体系などにも影響します。ここからは、給与体系や勤務形態を軸に、正社員とアルバイトの違いについて詳しく見ていきましょう。
正社員とアルバイトの勤務形態
アルバイトの場合はシフト制がほとんどであり、自分の予定に応じて勤務日・勤務時間の選択が可能です。一方、医療・介護職の正社員は、勤務時間8時間のフルタイム制が一般的。現場の状況によっては残業もやむないため、拘束時間が長くなる場合もあります。24時間稼働している職場では、日勤・夜勤の「二交代制」、または日勤・準夜勤・夜勤の「三交代制」などシフトを組んで勤務します。
保育職のアルバイトは契約した時間内でのシフト制がほとんどであり、行事前でも残業は基本的にありません。正社員は、早番・遅番のシフト制が多く、運動会や発表会などの行事前は準備のための残業が発生する可能性があります。
正社員とアルバイトの給与体系
医療・介護関連のアルバイトの場合は時給制がほとんどであり、業績に応じて賞与が支給される医院や施設もあります。正社員は、月給制で固定給に加え賞与がもらえることが一般的です。昇格によって収入アップが期待できます。
保育関連のアルバイトは時給制で、手当がつかないケースがほとんどです。一方、正社員は、基本給に加えて資格手当や役職手当などが加算され、勤め先によって賞与の有無は異なります。
正社員とアルバイトの仕事内容
医療・介護・保育関連のアルバイトは正社員の指示のもと、業務サポートの立ち位置で仕事を行います。受付や会計、書類作成、清掃などスキルや資格を必要としないものが主な業務です。
職種にもよりますが未経験で医療や看護の正社員になった場合、基礎的な看護技術や知識(清潔ケア、採血、与薬、点滴作成など)の確認を受けます。次に、医療や看護の現場でよく行われる「シャドーイング」という学習方法で、先輩に同行して仕事の流れを学んでいきます。
介護の正社員の場合、領域に応じて研修の受講が義務付けられています。現場に出たら初めのステップとして利用者とのコミュニケーションを取りながら顔と名前を覚えていきます。そうして利用者との信頼関係を築きつつ、シーツの交換や施設の清掃、料理の配膳といった簡単な業務から取り組むことが一般的です。
保育の正社員の場合、初めのうちは、先輩の指導を受けながら日々の仕事の流れ、日誌の書き方、保育の仕方、保護者の対応の仕方など幅広く学んでいきます。勤務先によって異なりますが、新人教育に丁寧に時間をかけるケースがほとんどなので、安心して保育現場に出られるはずです。
4.医療・介護・保育関連の正社員になるメリット・デメリット
安定性がある一方で、ハードなイメージもある医療・介護・保育関連ですが、正社員になるとどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。それぞれ詳しく解説していきます。
医療・介護・保育関連の正社員のメリット
少子高齢化が進む日本において、エッセンシャルワーカーの代表格でもある医療・介護・保育関連は、社会生活維持に必要不可欠な職業です。その中でも専門知識を基に質の高いサービスを提供できる人材は貴重であり、長期的に安定して働くことができる点はメリットの一つです。雇用の安定性から、毎月決まった給与、規定によっては賞与がもらえるなど、金銭面の安定性も得られます。 日々の生活や将来の見通しが立てやすくなるでしょう。
病院や高齢者施設、保育施設はどの地域にもあるため、これらの仕事は、住まいやライフステージが変わっても転職先が探しやすい仕事とも言われています。また、医療・介護・保育関連は、患者や利用者、子どもの笑顔を見られる機会が多く、生活や成長をサポートすることで「人の役に立っている」ことがダイレクトに感じられる点もメリットでしょう。
医療・介護・保育関連の正社員のデメリット
夜勤がある医療施設や介護施設の仕事は、生活が不規則になる傾向にあります。週末に勤務が入ることもあり、人と予定を合わせにくい点はデメリットと言えます。職場によっても条件は異なるため、「子どもがいるため夜勤は避けたい」「家族のために週末は休みたい」といった希望がある場合は、条件の合う職場を探しましょう。
また、医療・介護・保育関連は人の命を守る仕事であり、ミスが許されない場面も多くあります。人によってはそのプレッシャーから、ストレスが溜まりやすい点はデメリットと言えるかもしれません。ただし、業務を一人で行えるようになるまでは、上司や先輩社員によるサポートを受けられるため、心配しすぎる必要はないでしょう。
5.医療・介護・保育関連の正社員についてよくある質問
専門的なスキルも必要とされる医療・介護・保育関連は、未経験やアルバイトから正社員になれるかなど、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。ここでは、正社員を目指す方から寄せられる「よくある質問」にキャリアコンサルタントがお答えします。
Q1. 看護職の正社員になるメリットを教えてください。
経験を重ねることでスキルアップでき、昇格を目指すなどキャリア形成が図りやすいことが看護職のメリットです。専門領域の資格取得も可能なため、経済的な安定性も高く、ライフプランが立てやすい仕事でもあります。夜勤もありますが、あらかじめ上司に相談したり、体調管理をしたりするなどリスクヘッジを怠らなければ、無理なく働くことが可能です。
Q2. 保育士の正社員採用を目指していますが、業務量の多さや給与の低さが悩ましいです。
勤務先にもよりますが、行事などが重なるタイミングは繁忙期となり、業務に慣れるまではハードに感じることもあるかもしれません。ただし、何事も慣れるまでが大変な時期であり、そこを乗り越えると少しずつ心に余裕が生まれてくるでしょう。
給与に関しては経験年数に応じた昇給や、キャリアアップに伴い給与・賞与が上がるケースも多く、「中・長期的なキャリア形成」という観点からも検討してみてください。幼稚園や保育園などの園で働くほか、共働きが多い昨今は、訪問保育やシッターなどの需要も高く、そういったサービスを提供している企業やフリーランスとして活躍される方も多い業界です。将来的に幅広いキャリアの選択肢や待遇の良い労働条件を得るためにも、正社員として働いた経験や実績は、自身の強みとなります。
Q3. 介護職を志望しています。まったくの未経験からでも正社員になれますか?
介護業界は人手不足が非常に深刻であり、未経験者でも比較的採用されやすい傾向にあります。採用面接では、この仕事を選ぶ理由や、自身が働く意義、目指す姿を話せるように準備しておきましょう。利用者を看取る場合があるため、仕事に就く前に、心身のケアなどの情報も収集しておくことをおすすめします。
また、最近は基礎知識の習得や先輩による業務サポートを受けられる勤務先も見かけるようになり、徐々に学びながら業務経験を積むことができる傾向にあります。もしも困ったことがあれば先輩達に相談する癖をつけておきましょう。そうすることで周囲の人もあなたに対してサポートしやすく、協力関係を築きやすくなるでしょう。
6.キャリアコンサルタントからのアドバイス
医療・看護師関連は、自分の仕事に誇りを持っている方が多い職業です。患者さんの笑顔を見るたび、「この仕事に就いて良かった」と思える時が必ず来ると思います。先輩方のフォローも手厚い業界なので、「人の役に立ちたい」という思いを実現してほしいと願っています。
介護関連は、経験値が増えることで選択肢が広がり、相談員やケアマネージャーなど将来的な進路の選択肢も多い職業です。正社員になれば昇給や賞与があり、モチベーションにもつながるため、長期的な就業も考えやすいでしょう。
保育関連は子どもの成長をサポートし、未来につながる仕事です。正社員として働くうえで、子どもを預かる責任は伴いますが、新人教育やフォロー体制に力を入れ、以前よりも働きやすい環境が整っているケースが増えつつあります。
どの仕事も、人々に必要とされ続ける職業であり、安定した業界と言われている点は大きな魅力の一つ。勉強や実習、仕事探しなど大変なことがあると思いますが、負けずに頑張っていただきたいです。興味のある方はぜひ、正社員への一歩を踏み出してみてください。応援しています。
監修者
Cerisier(セリージェ) 代表
キャリアコンサルタント
大橋 祐子(おおはし ゆうこ)氏