この記事の要約
- パートの方が社会保険の対象になるには「週20時間以上の勤務が必要」などの条件がある
- 「保険料は事業主が半分負担してくれる」「将来の年金額が増える」といったメリットがある
- 「配偶者の扶養控除が受けられなくなる場合がある」といったデメリットもある
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パートでも社会保険に入れるか気になっている方もいらっしゃるでしょう。本記事では、パートが社会保険に入れる条件や加入した場合のメリット、デメリットを具体的に解説します。また、社会保険の種類についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
1.パートの社会保険とは?
社会保険とは、国が定めた保険制度で、以下のようなリスクに備えて安心して生活を送れるようにするためのものです。
- 病気やケガをした時
- 出産する時
- 高齢になった時
- 障害を抱えた時
- 仕事を失った時
- 職場で事故が起きた時
パートで働いている方は1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上である場合には、原則として社会保険に加入する必要があります。働き方を考える上で、自分が雇用保険の対象かどうかを確認しておきましょう。
2.パートの社会保険の種類
パートで働く人に関わる社会保険には、以下の5つの種類があります。
それぞれの保険が持つ役割や目的、パート勤務の方にとってどのような時に役立つのか、重要性を具体的に知ることが大切です。それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
健康保険
健康保険とは、病気やケガをした時に病院で診察を受ける際、費用の負担を軽くする目的で国が定めている保険です。原則、パート勤務の方が健康保険に加入するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 週の労働時間が20時間以上である
- 月の給料が8万8,000円以上で2カ月を超えて働く見込みがある
健康保険に加入すれば、病院でかかる治療費が3割負担になります。ほかにも、長期の療養が必要になった場合に支給される傷病手当金や、出産時に支給される出産手当金も利用できます。
厚生年金
厚生年金は、年齢を重ねて働けなくなった後に、安定した生活が送れるよう国が用意した年金制度の一つです。原則、パート勤務の方でも週20時間以上、月額給料8万8,000円以上で2カ月を超えて働く見込みがあるなど、一定の要件を満たせば加入が必要となります。
厚生年金に入ると、基礎年金に加えて働いた期間や収入に応じた年金がプラスされるため、将来受け取れる年金額も増加し、老後の経済的な安心感が高まることでしょう。
以下の記事では、より詳しくパート勤務の方向けの厚生年金について解説しているので、あわせてご覧ください。
【社労士監修】65歳以上のパートが社会保険に加入する条件は?メリット・デメリットも紹介
介護保険
介護保険は、介護が必要となった時に介護サービスを受けられるよう支援するための制度です。
40歳以上のパート勤務の方は自動的に介護保険の対象者となり、健康保険料と一緒に介護保険料を支払います。65歳以上になり、介護が必要だと認定されると、訪問介護やデイサービス・介護施設への入居などのサービスを1割〜3割の自己負担で受けられます。
日常生活がひとりで難しくなった場合でも、必要な介護を安心して利用できるのが大きな特徴です。
雇用保険
雇用保険は、失業してしまった場合の生活を支援したり、再就職を助けるための制度です。パートで週20時間以上働き、31日以上雇用見込みのある方が加入対象となります。
雇用保険に入ると、失業した場合に一定期間支給される失業手当や、育児や介護で仕事を休んだ時に受け取れる給付金を受給できます。子どもが生まれた後の育児休業期間に収入がなくなっても、給料の一部を給付金として受け取れるので経済的な負担が少なくなるでしょう。
以下記事では、より詳しくパート勤務の方向けの雇用保険について解説していますので、あわせてご覧ください。
労災保険
労災保険とは、仕事中や通勤途中に事故やケガをした時に、補償が受けられる制度です。パート勤務の方も含め、労働者全員が必ず対象となります。仕事中にケガをした場合、治療にかかる費用は全額保険で支払われるほか、仕事を休んでいる間も給料の一部が補償されます。
また、通勤中に起きた事故でケガをしてしまった際も、同様の補償を受けられるので、万が一の時にも安心して働けるのが特徴です。労災保険は万が一の際に労働者を経済的・精神的に支え、安心して働ける環境を保障する重要な役割を担っています。
参考:労働保険制度|厚生労働省
3.短時間のパートが社会保険の対象になる5つの条件
短時間で働いているパート勤務の方の場合、社会保険に加入するためには、以下5つの条件を満たす必要があります。
5つの条件にはそれぞれ理由や注意点があり、満たさない場合は加入できません。一つずつ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
参考:政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。」
週20時間以上の勤務が必要
週に20時間以上働いているかどうかは、パートの方が社会保険の加入対象となるかを判断する基準の一つです。政府が決めたルールでは、短い時間しか働かない人は社会保険の対象外とされています。
理由はある程度まとまった時間で働く人が社会保険に加入することで、病気やケガの時に安心して治療を受けられたり、将来年金を多くもらえるようにするためです。毎週4時間ずつ5日間働くパートの人は週20時間となり、加入対象になります。
月収8.8万円以上の収入
社会保険に加入するには、月収が8万8,000円以上である必要があります。その理由は、ある程度の収入を得ている人が万が一のケガや病気、老後に備えて保険料を支払える範囲として設定されているからです。
対象となる収入は毎月決まった基本給や手当を含み、残業代や臨時のボーナスは含まれません。時給1,100円で週20時間働けば月収は約8万8,000円となり、社会保険加入の条件をクリアします。
参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構、被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について|厚生労働省
雇用期間が2カ月を超える見込み
パート勤務の方が社会保険に加入するためには、雇用契約期間が2カ月を超えている必要があります。「年末年始の1カ月間だけ」など、短期のアルバイトは対象外となります。
反対に、「期間の定めなし」や「6カ月契約」など、契約が2カ月以上続く可能性が高い場合は加入の対象となります。自分の雇用契約がどのようになっているかを確認しましょう。
事業所規模による加入対象(51人以上など)
2024年10月から、社会保険加入の対象となるパート勤務の方は、勤務先が51人以上の規模の事業所が対象になりました。
具体的には、厚生年金などの社会保険に加入している従業員が51人以上いる企業で働く場合は、社会保険加入が必要です。小さな会社やお店で働く場合は、保険加入の対象外になることもあります。自分の勤務先が該当するかを事前に確認すると良いでしょう。
学生は対象外の場合がある
社会保険の加入対象となる際、学生であるかどうかも重要なポイントです。昼間に学校へ通っている学生は、一般的に社会保険加入の対象外とされています。ただし、通信制や夜間学校・定時制に通う学生の場合は対象となり、加入できます。
また、休学して仕事をしている学生や卒業予定の学生が就職する場合も加入対象です。
学生の種類や通学の形態で加入の可否が異なるため、自分の状況に合わせて確認が必要です。
4.パートが社会保険に加入する3つのメリット
パート勤務の人が社会保険に入るメリットとして以下の3つがあります。
社会保険に加入すると将来の安心や負担軽減につながりますが、具体的にどのようなメリットがあるか、自分の働き方に合っているかをしっかり検討する必要があります。それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
保険料は事業主が半分負担してくれる
社会保険に加入すると、毎月保険料を支払う必要がありますが、半分は勤務先の会社が負担してくれます。これは、法律で決まっており、パート勤務の方にとっては自己負担額が減るため、大きなメリットと言えるでしょう。
例えば、毎月の保険料が2万円の場合、自分の給料から引かれるのは1万円だけで済みます。個人で国民健康保険や国民年金に加入すると、保険料全額を自己負担する必要があるため、社会保険に入る方が経済的な負担は軽くなります。
将来の年金額が増える
パート勤務で厚生年金に加入すると、将来もらえる年金の額が増えます。日本の年金制度は「2階建て」の仕組みで、1階部分は20歳以上が全員加入する基礎年金、2階部分が厚生年金です。
パートの方も社会保険に加入することで、基礎年金に加えて厚生年金も受け取れるようになります。厚生年金の加入期間が長ければ長いほど、将来受け取れる年金額も増加する仕組みです。
具体的には、月収10万円程度の場合であっても、20年加入することで、老後に受け取れる年金は、年間約10万円〜20万円増える可能性があります。もらえる年金の額を増やしたい場合は、保険に加入しておく期間を伸ばすと良いでしょう。
医療保険・傷病手当金・出産手当金が使える
社会保険の健康保険に加入すると、病院で治療を受ける際の自己負担額が3割になります。また、病気やケガで仕事を休んだ場合に生活を助けてくれる「傷病手当金」や、出産の時に給料の代わりにもらえる「出産手当金」なども利用できるようになります。
例えば、働いている途中で骨折をしてしまい長期間休んだ時、傷病手当金を利用すれば収入の約3分の2を受け取ることが可能です。健康保険に加入していると、もしもの時にも安心して過ごせます。健診費用の補助や家族の医療費助成などさまざまな福利厚生を受けられる点も大きなメリットです。
5.パートが社会保険に加入する2つのデメリット
パート勤務の方が社会保険に加入すると、以下の2つのデメリットが生じます。
デメリットも理解した上で、自分の家庭の状況や収入に合っているかどうかをよく検討し、働き方を選ぶようにしましょう。それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
手取り収入が減る
社会保険に加入すると、毎月の給料から健康保険や厚生年金の保険料が引かれるため、実際に自分が受け取れる手取り額が少なくなります。月給10万円の人が社会保険に加入すると、約1万5,000円程度の保険料が差し引かれるため、受け取るお金は8万5,000円ほどに減ってしまいます。
ただし、将来の年金額が増えたり、病気になった際に給付がもらえたりするため、長期的な視点で検討しましょう。
配偶者の扶養控除が受けられなくなる場合がある
社会保険に加入して一定以上の収入を得るようになると、配偶者の扶養から外れてしまう場合があります。年収130万円を超えると、配偶者の健康保険の扶養には入れなくなり、自分で保険料を支払わなければなりません。
年収が150万円以上になると税金の扶養控除の適用もなくなるため、夫や妻の所得税や住民税が増えてしまう可能性があります。家庭の手取り額や税負担への影響を考えながら、自分に合った働き方を決めるようにしましょう。
世帯全体の収入を考慮して、最適な収入ラインを設定することが重要です。パートの方が働く上で気になる、年収103万の壁と年収150万の壁については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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6.パートの社会保険は条件を理解して判断しよう
今回は、パートの社会保険について、加入の条件やメリット・デメリットを解説しました。社会保険に入ることで、将来の年金や病気・ケガの保障が充実しますが、手取り収入が減るなどの注意点もあります。
本記事を参考に、ご自身の働き方や家庭の状況に合った選択をしてみてください。あわせて、65歳以上のパートの方向けに社会保険に加入する条件やメリット・デメリットも以下で紹介しているので、ぜひご覧ください。
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