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カラオケをクビになり、レジャーホテルで憤慨し、たどり着いた害獣駆除――バイきんぐ・小峠英二のバイト学

バイト

2018/11/22

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お笑いコンビ「バイきんぐ」の小峠英二さんは、芸人として20年以上のキャリアを重ね、今や年間427回(2017年、エム・データ調べ)のテレビ出演を果たす人気者。しかし、芸の道一本で食べていけるようになったのは、ここ数年のことです。それまでの収入の軸は、多種多様なアルバイト。優勝を果たした「キングオブコント2012」では、本番当日の朝まで「害獣駆除」の仕事をしていたことでも話題になりました。

下積み16年間で、じつに16ものアルバイトを経験。引っ越しの作業員は半日で辞め、コンビニ店員は2時間でギブアップしたといいます。一方で、配送ドライバーの仕事は10年以上続くなど、「合う仕事」と「合わない仕事」が極端に分かれるようです。

そうした経験をふまえ、大切なのは業務内容や給与よりも、「人」だという実感を得た小峠さん。これまでのアルバイト遍歴を振り返りつつ、その理由を語っていただきました。

レジャーホテルから害獣駆除まで、多種多様なバイト遍歴

―― 小峠さんは、これまでたくさんのアルバイトをやられてきたそうですね。まずは、その遍歴を振り返っていただけますか?

芸人になってからは16個くらい、学生時代も含めればもっとやってますね。人生初めてのアルバイトは、カラオケボックス。厨房で勝手にクリームソーダを作ってたのがバレて、すぐにクビになりました。高校生の時、2~3カ月くらいだったかな。でも、それはまだマシな方で、最短は2時間で辞めたコンビニですね。

―― 2時間! 何があったんですか?

面接後、1時間くらい社内研修ビデオを見せられて、そのままレジに立ったんですけど、ルールがよく分からなくて。会計の行列ができたときに、助けを呼ぼうと思って「これっぽいな」っていうボタンを押したら、レジから大音量でヘンな音が鳴って大騒ぎになったんです。それでもう、「なんか向いてねえな、この仕事」と思って、そのまま辞めました。

 

―― 合わないと思ったら即辞める。ある意味、潔いです。では、逆に長く続いた仕事は?

ルート配送のドライバーは10年くらいやりました。都内にある3つの会社のビルを車で移動して、備品や書類を運ぶ仕事です。車の運転のバイトって、暇な時間がないから、時間が早く過ぎるのがいいんですよ。それに、運転中にネタのことも考えられる。

本当はもっと続けたかったけど、そこの会社が事業から撤退して仕事自体がなくなってしまったので、仕方なくまた別のバイトを探しました。次はホテルだったかな。そこがまた、強烈な職場だったんですよ。

―― どう強烈だったんでしょうか?

レジャーホテルなのに、ノリが軍隊なんですよね。仕事前に朝礼があって、「お待たせしました!」とか、「少々お待ちください!」とか、お客さま用語を全員で唱和するんだけど、レジャーホテルだからそんなの使わないんですよ。お客さんだって、そんな元気に接客されたくないでしょうし。

毎朝、従業員同士の声かけ7カ条をやって、次に接客用の21カ条、あとは会社のお偉いさんが視察しに来た時用の12カ条……何カ条あるんだよ!って。

―― それは、なかなか意識の高いレジャーホテルですね……。

そう。だからなのか、やたらと張り切ってるバイトもいましたね。僕は「バイトの鬼」って呼んでたんですけど。年下の鬼と年上の鬼がいて、どっちもヘンなやつだった。

「年下の鬼」のほうは、自分が浴室を掃除したあとに僕を呼んで「小峠さん、ここ僕が掃除したんですけど、この中に7つの間違いがあります。分かりますか?」ってクイズを出してきやがるんですよ。僕を試すために、わざと間違えて。うっとうしいでしょ? それも、シャワーヘッドが左右逆とか、しょうもないやつですよ。……駄目だ、思いだしたら腹立ってきたな(笑)。

 

―― うわあ……それはしんどいですね。しかも、もう一人「年上の鬼」もいるわけですよね。

「年上の鬼」の方は、さらに強烈でした。袋入りの歯ブラシや髭剃りなどの備品を補充するときに、そいつは「小峠くん、補充するだけじゃ駄目だよ。一個一個、袋の耳をピシっと立てないと。こっちの方がかっこいいだろ」って言うんですけど、なんだその価値観、何がかっこいいんだよ!と。ここ、高級ホテルじゃなくて、ただのレジャーホテルだぞ! 誰も歯ブラシの耳が立ってるかどうか見てねえよ!って。結局、そこは半年で辞めました。で、その次が「害獣駆除」ですね。これが最後のアルバイトになりました。

キングオブコント優勝直後に届いた、バイト仲間からの「件名なしメール」

 ―― バイきんぐさんが優勝した「キングオブコント2012」決勝大会の当日も、朝まで害獣駆除のお仕事をされていたんですよね。具体的にはどんなお仕事なんでしょうか?

ネズミとゴキブリの駆除です。でも、求人にそう載せちゃうと人が集まらないんでしょうね。僕が見つけたときは「地球の環境を守る仕事」って書かかれていて、面接で初めて仕事内容が分かったんです。

初日はネズミの現場でした。トラップを仕掛けて車の中で2~3時間待つと、とりもちにネズミが引っかかってるんです。で、その場で首の骨を折って仕留める。けっこうえぐいでしょ? だから僕はできなくて、いつも得意なバイトさんにお願いしていましたね。蚊をつぶすようにネズミを仕留める、元自衛官の通称「殺し屋」っていう人がいたんですよ。 

 

―― そんな「えぐい仕事」なのに、レジャーホテルよりも長く続いたんですよね?

はい。処分は苦手なんですけど、それ以外は恵まれていたんですよね。トラップを仕掛けている間にネタを考えられるし、何よりバイト仲間がみんな良い人で、おもしろかった。

キングオブコントで披露した『自動車学校』というネタには、「教習車六台玉突きエアバッグ事件」を起こした「まぶっちゃん」という人物が出てくるんですけど、これは害獣駆除の同僚の名前から取りました。みんな名字の「マブチ」って呼んでたんですけど、1人だけ「まぶっちゃん」って呼んでるやつがいて耳に残ってたんでしょうね(笑)。

当時の同僚とは、もうバイトを辞めて6年くらい経ちますが、今も飲みに行ったりしますよ。

―― 小峠さんたちがキングオブコントで優勝したときは、バイト仲間の皆さんも誇らしかったでしょうね。

僕らがネタをやっているとき、みんなはちょうどトラップを仕掛けた後の待機時間で、車中のテレビで応援してくれていたみたいです。優勝が決まったのを見届けて、「よっしゃー!」とそのままネズミを退治しに行ったと聞きました(笑)。

しかも、その後メールが届いたんですけど、そこには件名も本文もなく、業務用殺虫剤を持っている手のアップの写真だけが添付されていました。「おめでとう! おれたちもやってるよ」ってことなんでしょうけど、そういう、なんというか粋な人たちだったんですよね。

―― 前職では「鬼」に悩まされていただけに、余計に人の温かさが染みますね。

芸人になってから16個もアルバイトを経験しましたけど、けっきょくバイトが続くかどうかって「人」なんですよね。時給や仕事内容よりも、僕にとっては周りの仲間が重要でした。

1ミリでもお笑いの負担になるなら、バイトは辞める

―― 芸人さんに限らず、夢を追いかけながらアルバイトをしている人は多いと思います。目標に向けて努力する時間と生活のためのアルバイト、いかにバランスを取るかが重要だと思うのですが、小峠さんもそこは意識されていましたか?

そうですね。芸人の場合、次の日にいきなりオーディションが入ったりもして、予定が直前まで読めないところがあります。だから、そのあたりの融通が利くかどうかがバイト選びの重要なポイントでした。

害獣駆除はかなり柔軟に対応してもらえる職場だったので、役者やバンドマンのバイトも多かったですよ。ホテルも融通がきくと聞いて入ったんですけど、いざ休むと「年上の鬼」がものすごく嫌な顔をする。「昨日もお笑いだったの? 俺はいいんだけどさ、他の社員さんに謝ってきな」って。お前に関係ねえだろ!と思って……駄目だ、また腹立ってきたな。

まあそれはともかく、バイトのせいで芸人としての活動がおろそかにならないよう、そこだけは意識していましたね。1ミリでもお笑いに負担がかかるアルバイトは、すぐに辞める。相方の西村は「バイトがあるから、オーディションに出られない」とか平気で言ってましたけど(笑)。 

―― そういった事情もあり、16ものアルバイトを転々としてきたわけですね。そして、最終的には芸人との両立にぴったりの「害獣駆除」という仕事にたどり着き、その1年後にコント日本一という結果を出しました。

害獣駆除は、本当に芸人向きの仕事だと思いますね。実際に、後輩の芸人がバイトを探してたので、紹介したこともあります。ちなみに、そいつは初日からネズミをガンガン殺せるやつで、すごい逸材が入ってきたって話題になったらしいです。社員さんが驚愕(きょうがく)してましたよ、「小峠くんが連れてきたあの子、すごいね……」って。

かっこいい仕事よりも、精神的に楽でいられる仕事の方がいい

―― お話を伺っていると、そこで一緒に働く「人」と、本来やりたいこととの両立をふまえ、自分に向いているアルバイトを探すことが大事なのだと感じます。

そう。だから僕の場合は融通がきかないアルバイトは避けてきたし、嫌なやつがいたらすぐ辞めた。嫌なやつなんて、どこまでいっても嫌なやつでしかないんだから、さっさと逃げりゃいいんですよ。

まっすぐな人は辞めたら負けとか、俺は社会に向いていないのかな……とか思い悩んでしまいがちだけど、もっと単純明快に考えたほうがいい。仕事なんて腐るほどあるし、自分に合う職場環境だってどっかにあるでしょう。他人から見てかっこいい仕事とか、憧れの職場とかにとらわれず、シンプルに自分に合うかどうかで決めたほうがいいと思いますよ。

―― そういう意味では、「害獣駆除」は決してイメージのいい仕事ではありませんが、小峠さんにはぴったり合っていたわけですね。

そうですね。時給だって1000円くらいで、深夜のわりにはさほど高くなかった。それでも、ネタを考える時間が取れたり、今に続く出会いがあったり、お金以外の部分で良いことがたくさんありましたから。個人的には、少々高い時給のために嫌な思いをするよりは、精神的に楽でいられるところで働いたほうがいいと思いますけどね。

お話を伺った方:小峠英二さん
1976年6月6日生まれ。福岡県出身。1996年、自動車学校で出会った西村瑞樹とNSCの面接で再会し、お笑いコンビ・バイきんぐを結成。2012年、『キングオブコント2012』優勝。

(取材・文:榎並紀行/やじろべえ、撮影:関口佳代、編集:はてな編集部)

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