ブラックバイトとは、労働基準法に違反するような不当な扱いを労働者に強いるバイト先のことです。ブラックバイトで労働を続けると、心身共に悪影響を及ぼし、学生であれば本業である学業がおろそかになってしまうリスクがあります。
そこで本記事では、ブラックバイトとはどのようなバイトなのか特徴を解説し、回避するための見分け方を紹介します。バイト探しを始める前にブラックバイトの特徴を把握し、トラブルを未然に防げるようにしましょう。
ブラックバイトとは?
ブラックバイトとは、労働環境が劣悪であり、従業員に労働基準法などの労働法に反し不当な扱いをするアルバイト先のことを指します。劣悪な労働環境で働かされる「ブラック企業」という言葉から派生してできた言葉です。
ブラックバイトは、過度の長時間労働・未払いの残業代・不適切な労働条件・パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、多くの問題を抱えています。ブラックバイトで労働すると、精神的にも身体的にも悪影響を与えるため、バイト先の見極めは重要です。
ブラックバイトで実際に経験したことTOP5
マイナビキャリアリサーチLabが実施した「2025年卒の大学生のライフスタイル調査」によると、39%に及ぶ方がブラックバイトの経験をしたことがあると回答しております。
ブラックバイトで実際に経験したことで最も多かったのは「希望していないのにシフトを減らされた」という結果に。「サービス残業やサービス労働をさせられた」という声も多く見受けられました。
もし現在働いているバイト先がブラックバイトの可能性があったり、何かしらのトラブルに巻き込まれていたりする場合は、できるだけ早めに対処をしましょう。本記事の最後に対処法についても解説しているので、ぜひご確認ください。
ブラックバイトの特徴12選
以下12個の特徴が一つでも当てはまる場合は、ブラックバイトの可能性を疑ったほうがいいでしょう。これから応募するバイトや現在働いているバイトに当てはまらないかチェックしてみてください。
賃金の未払い
賃金は労働に対する対価として、労働者が受け取るべき権利です。もし賃金が未払いであれば、ブラックバイトだと言えるでしょう。
給料日をすぎても賃金が支払われない場合や、実際に働いた時間よりも振り込まれた金額が少ない場合は、労働基準法において違反行為となります。上記のようなトラブルが起こった場合は、すぐに職場の担当者や店長に確認をしましょう。
時給が最低賃金を下回る
最低賃金は、都道府県ごとに決まっています。最低賃金を下回る時給で労働させられている場合は、ブラックバイトの可能性が高いでしょう。最低賃金を下回る賃金での雇用は法律違反となるため、バイトであっても適切な賃金を要求する権利があります。
バイト先を選ぶ際は、自分の住む都道府県の最低賃金を確認しておくのがおすすめです。
以下の記事より、最新版の最低賃金を併せてご確認ください。
【2024年最新版】全国最低賃金ランキング!全国平均は1055円に
タイムカードが改ざんされている
タイムカードを改ざんすることで、働いた日数や時間が本来よりも少なく記録されることがあります。もちろんタイムカードの改ざんは違法行為であり、働いた時間に見合わない給料を受け取ることになってしまいます。
特にバイトを始めてから数カ月間の給料は、労働時間に見合っているか自分でも計算して照らし合わせておくと良いでしょう。
以下の記事では、不正打刻について詳しく解説しています。雇用主が不正した場合についても紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
不正打刻は法律に違反する?不正打刻をしていた場合、どうなる?
残業代がつかない
労働基準法において、1日8時間または週40時間を超過した労働には、残業手当の支払いが義務となっています。残業手当は通常時給の25%以上の割増賃金が必要です。例えば、時給が1,000円であれば、残業した時間の時給は1,250円に割増されるはずです。
しかし、ブラックバイトの場合は残業手当が支払われなかったり、支払われていても割増率が25%よりも少なかったりする場合があります。退勤後にサービス残業を強いられる場合も、ブラックバイトとなるので注意しましょう。
シフトの希望が通らない
シフトの希望がすべて通るわけではありませんが、出勤日を勝手に決められたり、出勤予定日以外に急な出勤を強いられたりする場合は、ブラックバイトの可能性が高いです。雇用主と労働者の双方で合意していない状態でのシフト変更は、法律上は認められません。
特に学生であれば学業が本業であるため、学業に支障をきたすようなシフトを強いられる場合は注意しましょう。
休憩を取らせてくれない
労働基準法により、労働時間が6〜8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を取ることが定められています。忙しかったとしても、人材を確保できていない会社側の責任であるため、労働者はきちんと休憩する義務があります。
休憩を取らせてもらえなかったり、労働基準法に反するような短い時間だったりする場合は、ブラックバイトだと言えるでしょう。
バイトの休憩時間については、以下の記事で詳しく解説しています。
バイトの休憩は何時間から?6時間勤務ぴったりの場合や休憩中に給料は入るのかも解説
シフトの前後に無給で働かされる
決められたシフト時間の前後で、タイムカードを切る前に働かせられたり、退勤後にサービス残業を強いられたりする場合はブラックバイトの可能性があります。
本来であれば、制服に着替えたり営業時間後に清掃をしたりする作業も、労働時間とみなされるはずです。賃金の支払いが必要な場面で正しくタイムカードが押されておらず、実際の労働時間よりも少ない賃金しか支払われない場合は、ブラックバイトを疑いましょう。
以下の記事では、シフト時間の前後の労働時間について解説しています。労働時間が正しくカウントされていない疑いがある場合は、ぜひ併せてチェックしてみてください。
制服に着替える時間は「労働時間」に含まれる?タイムカードはいつ押せばいい?
有給休暇を取らせてもらえない
入社日以降から6カ月継続して勤務しており、出勤日の8割以上出勤している雇用関係であれば、バイト・パートでも有給を取得できます。これは労働基準法によって定められており、有給を取らせてもらえない場合はブラックバイトだと言えるでしょう。
有給は本来どんな理由でも、いつ取得してもかまいません。しかし、急な有給申請は交替人員の確保などで、バイト先の迷惑になる可能性もあります。有給申請をする際は、シフトが組まれる前のできるだけ早いタイミングで伝えておくと良いでしょう。
セクハラやパワハラが行われている
セクハラやパワハラは、労働者の心理的な健康状態を害する行為です。セクハラやパワハラが黙認されていたり、何も対処されていなかったりする場合は、ブラックバイトだと言えます。
状況が改善されなければ、社内の相談窓口や公的機関に相談しましょう。精神的に不健康になるような職場は退職し、新しいバイト先を探すことも検討してください。
ノルマやペナルティ(自腹・天引き)がある
通常、バイトという雇用形態であればノルマやノルマ未達時のペナルティが課されることはありません。しかし、売上不振が続くような店舗の場合、なんとかして売上を増やそうとしてバイトにノルマを課すこともあります。
もしノルマを達成できなかった際に自腹でバイト先の商品を購入させられたり、給料から天引きされたりする場合はブラックバイトといえるでしょう。
労災保険の加入をしていない
労災保険の加入は、雇用主の義務です。労災保険に加入していないブラックバイトの職場の場合、労働者が業務上や通勤途上で事故に遭った場合に、適切な補償を受けられなくなってしまいます。
労災保険の未加入は違法であり、ブラックバイトになることを覚えておきましょう。
バイトを辞めさせてもらえない
労働者は合理的な理由があれば、退職する権利があります。退職を希望する者に過度な引き止めをしたり、退職を申し出た後に嫌がらせをしたりするようなバイト先は、ブラックバイトだと言えるでしょう。
本来であれば、契約期間中は退職できません。しかし、体調の悪化や家族の介護など、やむを得ない事情がある場合には、退職することも可能です。また、契約期間中であっても、契約開始から1年経過後であれば、いつでも自由に退職できます。なお、契約期間を定めていない場合であれば、2週間前に退職の意思を伝えることで、いつでも自由に退職可能です。辞める場合に違約金の支払いを求められることもありますが、違約金を請求することは法律で禁止されています。
以下の記事では、バイトを辞める際のタイミングや伝え方について解説しているので、ぜひ併せてチェックしてみてください。
【弁護士が解説】バイトを辞める際は何日前までに伝えるべき?
ブラックバイトの見分け方|面接では何をチェックする?
ブラックバイトは、実際に働き始める前に見分けることも可能です。以下3つのタイミングごとに、チェックポイントを紹介します。
求人詐欺について解説している以下の記事も、ぜひ併せてご確認ください。
募集要項と違う労働条件でアルバイトをさせられたら?
応募するときのチェックポイント
ブラックバイトを見分けるうえで一番重要なのが、応募する際の募集要項の情報です。チェックするべきポイントは、主に以下の3つです。
- 労働時間が異常に長い
- 給与が異常に高い
- 常に求人を募集している
求人票に載っている労働条件や給与を確認し、異常に労働時間が長かったり給与が高かったりする場合は、ブラックバイトの可能性があります。常に求人募集をしているバイトの場合も、労働環境が悪くて人の入れ替わりが激しい可能性があります。気になることがあれば、応募する前に問い合わせしてみると良いでしょう。
面接でのチェックポイント
面接時にもブラックバイトを見分けるチャンスがあります。面接時にチェックするポイントは、主に以下の4つです。
- 面接官の態度が明らかに悪い
- 労働条件が求人票と異なる
- 労働時間や給与に関する規定が不明瞭
- 労働条件に関する質問に対して曖昧な返答をする
面接官の態度が悪かったり、労働条件が求人票と内容が異なったりする場合は、ブラックバイトを疑ったほうが良いでしょう。
労働時間や給与に関する規定が不明瞭な場合や、質問をした際に濁される場合も、ブラックバイトの可能性があります。
交通費の支給や残業などは、面接の場で聞きにくいこともありますが、きちんと確認しておくのがおすすめです。少しでも違和感があれば、好条件のバイトだったとしても他の職場への再応募を検討したほうが良いでしょう。
採用後のチェックポイント
採用後のチェックポイントは、主に以下の2つです。
- 労働条件通知書がもらえない
- 労働条件通知書の内容が不明瞭
採用が決まると、契約期間や業務内容などが記載された「労働条件通知書」が交付されることになっています。自身が今後バイトをするうえでの労働条件が記載されている重要な書類のため、しっかり確認しておきましょう。
交付されなかったり、内容が不明瞭だったりする場合は、ブラックバイトである可能性があります。採用された後でも辞退を申し出れば働く必要はありません。違和感があれば友人や家族に相談することも大切です。
ブラックバイトで働いてしまった場合の対処法
もしブラックバイトで働いてしまった場合は、以下3つを抑えたうえで対処していきましょう。
証拠を残す
ブラックバイトだと気づいたら、まずは証拠を残しましょう。証拠を残しておくことで相談しやすくなったり、辞めやすくなったりするためです。例えば、実際に働いている労働時間をメモしたり、雇用主とのやりとりを録音・録画したりし、証拠材料を保存しておくのがおすすめです。
退職する
ブラックバイトで働くメリットはないため、できるだけ早く辞めましょう。正当な理由があるにもかかわらず、辞めさせてもらいたい場合は『労基に相談する』と伝えれば、辞めさせてもらえることがあります。
また、代わりを探せと言われて辞めさせてもらえないケースもありますが、人材の確保は雇用主が行うことなので、辞めることは可能です。退職について不当な扱いを受けた場合は、その内容が分かる証拠も残しておくと良いでしょう。
公的機関や弁護士に相談する
バイト先に相談したにもかかわらず、労働時間や労働条件が改善しないようであれば、労働問題の専門家に相談することも検討してみてください。厚生労働省の「総合労働相談コーナー」や「労働基準監督署」に相談することで、事態を解決に導ける可能性があります。
直接行って相談することもできますが、自宅から遠ければ電話で相談してみると良いでしょう。外部への相談が不安な場合は、まずは家族や友人へ相談してみるのもおすすめです。
専門家に相談する場合は、以下のホームページをぜひチェックしてみてください。
- 総合労働相談コーナー
- 労働基準監督署
ブラックバイトを回避して正規のバイト先で働こう
これからバイトを探す際は、応募時や面接時などに労働条件をきちんと確認し、ブラックバイトを回避できるようにしましょう。
マイナビバイトでは、正しい条件で働ける正規のバイト求人をご用意しています。お自身の都合や好みに合わせて検索し、ぜひ希望に沿ったアルバイトを見つけてみてください。
取材協力・監修
涌井社会保険労務士事務所
社会保険労務士
涌井 好文(わくい よしふみ)
https://sr325012538.wordpress.com/
〈監修者コメント〉
ブラックバイトで働くことは、百害あって一利なしです。ブラックバイトには、パワハラが横行していたり、残業代が払われていなかったりと、共通する特徴があります。事前にブラックバイトを見抜くための知識を得ておくことで、ブラックバイトを回避し、自分を正当に扱ってくれるバイト先を探しましょう。